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二日目
ビデオテープの中身①
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【side:■■■■】
失踪した父から手紙が届いたのは、俺が24になる年の冬のことだった。
警察官として邁進し、妻の香澄との間に一児をもうけ、順風満帆な生活を送っていた俺は、何十年も前に自分を捨てた父と会う暇などないと突っぱねるつもりでいた。
だが、香澄が「こうして手紙を送ってきたということは、何かがあったのかもしれないわ。この子のことは私がちゃんと見るから、お父様とお会いになって。」と、俺の背中を押した。
「ずっと伝えたかったことが、あるのでしょう?」
確かに、ある。
なぜ、今頃連絡を寄越してきたのか。
なぜ、優秀な警察官として働いていたのに、地位も名誉も全て捨てたのか。
なぜ、何も言わずに母と俺の前から姿を消したのか。
「今行かなきゃ、きっと後悔するわ。いってらっしゃい、あなた。」
妻の後押しもあり、俺は何十年ぶりに父と再会するために、有給を取って、我が家を出発した。
――まさか、もう二度とこの家に戻ってくることができなくなるなんて、想像もしていなかった。
***
指定された場所は随分と山奥にあった。
風の噂でその山奥にはとある富豪の屋敷があると聞いたことはあったが、まさか本当にそこへ行くことになるとは、人生何が起こるか分からない。
「あぁ、よく来たね。待っていたよ、■■君。私はこの屋敷の主人の初瀬山勇次郎だ。」
「初めまして。■■■■です。」
出てきたのは、見たことのない男だった。
中肉中背で、これといった特徴のない顔だが、妙なオーラを纏っていた。
「中には入りたまえ。君のお父上がお待ちかねだ。」
「失礼します。」
中に入ると、広々とした空間が広がっていた。
赤を基調にした、荘厳な玄関ホール。頭上では巨大なシャンデリアが煌めき、床は大理石が艶々と輝やいている。
見たことがない豪華な内装に、俺はほぅとため息をついてしまった。
アーチ型の広い階段を上ると、出迎えてくれた屋敷の主人である初瀬山勇次郎の自画像が飾られていた。
「どうだい?中々の自画像だろう?」
主人の言葉の通り、その絵画を見ていると妙に心が穏やかになっていった。
特に、こちらを見下す、あの爬虫類なような目。一見気味悪く感じられるのに、見ていると、なぜかどんどん引き込まれてしまう――。
「えぇ……素晴らしいですね……。なぜでしょう……。とても、引き込まれていく……。」
「そうだろう、そうだろう。どうぞ、思う存分、心ゆくまで魅入ってくれ――。」
「あぁ……はい……。」
主人に背中を押され、俺は自画像を夢中で見つめた。
自画像の中にいる主人がじっと俺を見つめてくる。主人の目を見ていると、だんだん、俺自身も絵の中に閉じ込められているかのような錯覚に陥っていく……。
「そうだ。そうだとも。君の心は絵の中へ、私の元へ吸い込まれていくよ。」
「……えの、なか……。」
なんだか、意識がふわふわとしてきた。
それなのに、主人の声だけがくっきりと耳元から脳へと響いてくる。
そして、いつの間にかぷつりと意識が途切れた。
***
気づくと、俺は床に倒れ込んでいた。
ぼんやりする頭で上半身を起こす。
「おはよう。あぁ、待ってくれ。今、ビデオの電源を入れるから。」
初瀬山勇次郎は、巨大なベッドに座って、俺を見下ろしていた。
彼は側に置いていた三脚の上にあるビデオカメラのボタンを押した。
「これでいいだろう。せっかくだから、記憶に残さないと、な。」
「あ、あんた……俺に何を……。」
「なぁに。少し小細工させてもらっただけだ。それより、ほら。念願のお父上との再会だ。」
「え……?」
男が一人、部屋の中へ入ってきた。
失踪した父から手紙が届いたのは、俺が24になる年の冬のことだった。
警察官として邁進し、妻の香澄との間に一児をもうけ、順風満帆な生活を送っていた俺は、何十年も前に自分を捨てた父と会う暇などないと突っぱねるつもりでいた。
だが、香澄が「こうして手紙を送ってきたということは、何かがあったのかもしれないわ。この子のことは私がちゃんと見るから、お父様とお会いになって。」と、俺の背中を押した。
「ずっと伝えたかったことが、あるのでしょう?」
確かに、ある。
なぜ、今頃連絡を寄越してきたのか。
なぜ、優秀な警察官として働いていたのに、地位も名誉も全て捨てたのか。
なぜ、何も言わずに母と俺の前から姿を消したのか。
「今行かなきゃ、きっと後悔するわ。いってらっしゃい、あなた。」
妻の後押しもあり、俺は何十年ぶりに父と再会するために、有給を取って、我が家を出発した。
――まさか、もう二度とこの家に戻ってくることができなくなるなんて、想像もしていなかった。
***
指定された場所は随分と山奥にあった。
風の噂でその山奥にはとある富豪の屋敷があると聞いたことはあったが、まさか本当にそこへ行くことになるとは、人生何が起こるか分からない。
「あぁ、よく来たね。待っていたよ、■■君。私はこの屋敷の主人の初瀬山勇次郎だ。」
「初めまして。■■■■です。」
出てきたのは、見たことのない男だった。
中肉中背で、これといった特徴のない顔だが、妙なオーラを纏っていた。
「中には入りたまえ。君のお父上がお待ちかねだ。」
「失礼します。」
中に入ると、広々とした空間が広がっていた。
赤を基調にした、荘厳な玄関ホール。頭上では巨大なシャンデリアが煌めき、床は大理石が艶々と輝やいている。
見たことがない豪華な内装に、俺はほぅとため息をついてしまった。
アーチ型の広い階段を上ると、出迎えてくれた屋敷の主人である初瀬山勇次郎の自画像が飾られていた。
「どうだい?中々の自画像だろう?」
主人の言葉の通り、その絵画を見ていると妙に心が穏やかになっていった。
特に、こちらを見下す、あの爬虫類なような目。一見気味悪く感じられるのに、見ていると、なぜかどんどん引き込まれてしまう――。
「えぇ……素晴らしいですね……。なぜでしょう……。とても、引き込まれていく……。」
「そうだろう、そうだろう。どうぞ、思う存分、心ゆくまで魅入ってくれ――。」
「あぁ……はい……。」
主人に背中を押され、俺は自画像を夢中で見つめた。
自画像の中にいる主人がじっと俺を見つめてくる。主人の目を見ていると、だんだん、俺自身も絵の中に閉じ込められているかのような錯覚に陥っていく……。
「そうだ。そうだとも。君の心は絵の中へ、私の元へ吸い込まれていくよ。」
「……えの、なか……。」
なんだか、意識がふわふわとしてきた。
それなのに、主人の声だけがくっきりと耳元から脳へと響いてくる。
そして、いつの間にかぷつりと意識が途切れた。
***
気づくと、俺は床に倒れ込んでいた。
ぼんやりする頭で上半身を起こす。
「おはよう。あぁ、待ってくれ。今、ビデオの電源を入れるから。」
初瀬山勇次郎は、巨大なベッドに座って、俺を見下ろしていた。
彼は側に置いていた三脚の上にあるビデオカメラのボタンを押した。
「これでいいだろう。せっかくだから、記憶に残さないと、な。」
「あ、あんた……俺に何を……。」
「なぁに。少し小細工させてもらっただけだ。それより、ほら。念願のお父上との再会だ。」
「え……?」
男が一人、部屋の中へ入ってきた。
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