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第二章:変えられた人々と街
『洗礼』①
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冒険者ティモス=マルエストは、ギルドから受諾した依頼を完了し、帰路についていた。
今回の依頼は希少価値の高い薬草の収集だった。たまたまその薬草が群生する季節と地域が重なっていたため、比較的楽な仕事ではあったのだが、それでも数を集めるのにそれなりの時間を要した。
依頼の締切日にはまだ余裕があるため、ティモスは近くの街で数日滞在することを決めた。
以前も訪れたことのある街だった。
ヴォルキアラ帝国とアルシェリティア王国の国境近くに位置し、帝国でも最強と謳われる第三師団が目を光らせているということもあって、こ比較的治安が良いと言われている。
そのため、通行門で取られる滞在料が高いことでも有名なのだが――。
「え?滞在料はいらない?」
「はい。どうぞそのままお入りください。」
にこやかに門番はティモスを中へ通した。
以前なら身元を証明するものを提示しなければいけなかったはずだが、それすら今回は求められない。
「本当にいいのですか?」
「えぇ。我らが神が、『人類は皆、平等に』とおっしゃっておりますゆえ。誰であっても、この門をくぐることは赦されております。」
「はぁ……。」
(ま、タダで入れるのなら、それに越したことは無いか。)
釈然としないながらも、ティモスはそのまま門と街を繋ぐトンネルへと足を踏み入れた。
薄暗く狭いトンネルは先を見通せないものの、奥から多くの人々の笑い声や話し声が響いてくる。どうやら以前と変わらず、街の活気はあるらしい。
「さて、今日は何を食べようかな……ん?」
トンネルを抜けた瞬間、ふわりとした風を感じた。まるで身体全体を優しく撫ぜられたような感覚だ。
そして眼前に広がる光景を見て、ティモスは言葉を失った。
――『目』だ。
地面から、建物の壁から、至る所に『目』があり、どこを見ても必ずその『目』と目が合うのだ。
それは巨大な眼球であったり、水晶のような瞳であったり様々であったが、どれもこれも見つめられるだけで背筋が凍るような悪寒を覚えた。
(な、なんなんだ、この大量の『目』は?以前来たときは、こんなものなかったはずだが……。)
「あれ?お兄さん、もしかして外から来た人?」
不意に声をかけられ振り向くと、そこには一人の少年がいた。
「あ、あぁ。そうだよ。今さっき、この街に来たんだ。」
そう言うなり、少年はパァッっと顔を輝かせた。
「そうなんだ!それじゃあ、まずは『洗礼』を受けたほうがいいよ!」
「洗礼?洗礼だって!?」
ティモスはゾッとした。
いつの間にヴォルキアラ帝国の状況が変わっていたのだろう。
ヴォルキアラ帝国では、ウォテヌス神が信仰されているのは知っていたが、旅人や冒険者にまでその宗教を押しつけてくることはこれまでなかった。
「うん!だって、まだ神様と出会っていないんでしょう?それは失礼だよ。『この街に入ったら、必ず神様にお目通りして、洗礼を受けなければいけない』のは当たり前のことでしょう?」
ティモスは少年の言葉を聞いて、ぐわんと脳みそが揺さぶられるような感覚に陥った。
――当たり前。
(そうだ。新しい街にきたら、その街で信仰される神様に挨拶するのは当然のことだったじゃないか。それを俺は忘れていたのか?)
「すまない。俺が間違っていたようだ。早速、案内してくれるかい?」
ティモスは頭を振って意識を取り戻すと、改めて少年に問いかけた。
すると少年は嬉しそうに笑顔を浮かべると、「もちろん!こちらへどうぞ!」と言って歩き出した。
その後ろ姿を見ながら、ティモスは安堵のため息をつく。
(よかった。危うく街で失態を犯すところだった。冒険者を続けるなら、下手なトラブルは避けないとな。)
少年がティモスを連れてきたのは、街の教会だった。帝国内にある教会の中でも一位、二位を争うくらいの大きさだが、以前に増して多くの人々が出入りしているのが見えた。
「ありがとう。ここまで来たら、もう大丈夫だ。」
少年をこれ以上付き合わせては悪いと思い、ティモスはここで別れることにした。
「僕も入るよ。僕のパパ、この教会の修道士だから。」
「そうなのかい?」
「うん。パパ、きっと一人じゃ帰れないから、僕がお迎えに来たの。」
(一人じゃ、帰れない?)
少年の言葉に違和感を覚えながらも、ティモスはそれ以上何も言わず教会の中へと足を踏み入れた。
「これはまた……。」
中に入ると、そこはまさに別世界だった。
教会の天井は高く吹き抜けになっており、そこからは青空が見えている。さらに正面には祭壇が設けられており、そこに鎮座していたのは巨大な像だった。
その像を目にした途端、ティモスの心臓は早鐘のように鼓動を打ち始めた。
「ふっ……あっ……♡」
ティモスの身体からは、まるで魂が抜け出たかのように、力が入らなくなっていった。
覚束ない足取りで、ティモスは胸を押さえながら、一歩ずつ、ゆっくりと礼拝堂の中へ進んでいく。
ティモスの視線の先には、巨大な像があった。
慈愛に満ちた表情で微笑む男神像は、筋骨隆々とした肉体を惜しげもなく見せつけている。その身には何も身に纏っておらず、片手を空に掲げ、もう片手は自分の逸物に添えられていた。
その立派な性器は勃起し、まるで天に聳えるかのように力強く伸びている。
「おや、あなたは外からいらっしゃった方ですね?ようこそいらっしゃいました。」
声をかけられて振り向くと、そこには白い法衣に身を包んだ壮年の男性がいた。白髪混じりの長い髪を後ろに撫でつけており、穏やかで理知的な顔立ちをしていた。
その男性を見て、「きれい」という言葉が脳裏に浮かんだティモスは一瞬思考が停止した。
「あ、パパ!」
「マオ。今日も来てくれたんだね。」
「うん!あのね、このお兄さん、さっきこの街に来たから、洗礼を受けさせるためにここに案内してあげたんだ!」
「それは素晴らしい。きっと『エンギ神』様もお喜びになられるでしょう。」
マオと呼ばれた少年が男性に駆け寄り抱きつくのを見て、ティモスは慌てて姿勢を正すと、深く頭を下げた。
「申し遅れました。ティモス=マルエストといいます。旅の途中でこの街に立ち寄ったのですが、まだ洗礼を受けていなかったので、ご子息に案内していただきまして……。」
「そうですか。それはそれは、ようこそいらしてくださいました。私はセドリックと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
そう言って、セドリックと名乗った男性も深々と頭を下げる。ティモスもつられて、再び頭を下げた。
「それでは、こちらへ。どうぞいらしてください。ちょうどこれから、礼拝が始まるところです。」
「えっ?あ……。」
セドリックはティモスの手を取り、歩き出した。ティモスは戸惑いながらも、セドリックに導かれるまま歩き出す。
礼拝堂の席はほとんど埋まっていたが、幸いなことに二人分の空席が見つかった。セドリックに促されて、ティモスはそこへ腰掛ける。すると、その隣にマオも座った。
周囲を見渡すと、席に座っているのは男性ばかりだった。男性特有の汗臭さと妙な生臭さがティモスの鼻孔をくすぐる。
「それでは、私はすぐ後ろに控えておりますので、何かございましたらいつでもお呼びくださいませ。」
「は、はぁ……。」
そう言うと、セドリックは後ろの壁際へと移動して、静かに佇んだ。
ティモスはその姿を横目で見送ると、改めて目の前の像に目を向ける。
「……。」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
それはティモスの喉から発せられた音なのか、それとも隣の少年からのものか。あるいは周囲の男たちから漏れたものかもしれない。
ティモスの視線は、いつの間にか像に釘付けになっていた。その瞳は潤み、頬は紅潮し、口元はだらしなく緩んでいく。
そして、無意識のうちにズボンに手をかけ、ジッパーを下ろそうと手をかけた瞬間――。
「おい、嘘だろ!?」
「今回の司祭は、レオル神父なのか……!?」
ざわざわと興奮する男たちの声に、ティモスはハッと意識を取り戻した。
(お、俺は、一体……?)
「ラッキーだね、お兄さん!普段はめったにお目にかかれない神父様だよ。エンギ神様のおちんぽをお慰めする、『おちんぽ花嫁』に選ばれた人なんだ!」
「お、おちんぽ花嫁、だって?」
「そう!」
隣に座る少年は興奮で頬を赤く染め、目を輝かせて説明し始めた。
「かつてこの街では別の神様が信仰されていて、その神様から特別な力を授けられた強い人たちが街を守っていたんだって!でも、その人たち、エンギ神様の前に無様に敗北してしまって、今ではエンギ神の性奴隷になっているんだよ!その中でも特にエンギ神様が気に入っている男たちは『おちんぽ花嫁』として、エンギ神様を喜ばせるために日々奉仕しているんだ!ほら、見て!」
マオの指差す先には、エンギ神の『おちんぽ花嫁』の一人であるというレオル神父の姿があった。
レオル神父の纏う法衣は彼の体にぴったりとくっついていて、体のラインがよくわかるものだった。筋肉質だが、細身のその体躯はまるで彫像のように美しく、それでいて男らしさを感じさせた。
ひらひらと蝶のように舞う法衣は薄く、ぷっくりと腫れた乳首も、既に我慢汁を垂れ流して勃起しているペニスも、全て透けて見えている。
「いやらしい神父様だぜ……。あんなエッチな格好で、毎日エンギ様のおちんぽ様のお世話をしているなんてよぉ……。」
「わざと俺たちに見せつけやがって……。まるで食べられない至高の果実を目の前にぶら下げられているようなもんだぜ……。」
「流石はエンギ神の『おちんぽ花嫁』の一人……。エンギ神の性処理のためだけに存在している、淫乱雌豚野郎のけつまんこに突っ込みたいぜ……!」
周囲から聞こえる卑猥な言葉の数々に、ティモスは思わず耳を塞ぎたくなった。
しかし、何故か体が動かない。
「どうしたの、お兄さん?」
「えっ!?あ、あの、か、彼らは何を言っているんだ!?」
ティモスは真っ赤な顔で尋ねた。
すると、マオは不思議そうな顔をして答えた。
「え?何言ってんの?みんな、あの神父様のこと、大好きなんじゃないの?おちんちん、いつもビンビンにさせてるし。」
「で、でも、犯したいだの、なんだの……。」
「そりゃあ、あの神父様、とっても綺麗だから、皆の憧れの的なんだよ。でも、あの神父様はエンギ様専用のお便器様だからね。いくら好きになっても、神父様のけつまんこを味わえるのはエンギ様だけだから、無駄さ。」
(そういうものなのか?)
ティモスは不安げに周囲の男たちに視線を走らせる。
男たちはレオル神父のいやらしい姿を見て、股間を膨らませていた。中には前屈みになって必死に堪えようとしている者や、ズボンを脱いで自らの逸物を扱いている者さえいた。
そんな彼らの姿を見ると、ティモスは自分がとんでもない間違いを犯してしまったのではないかと思えてきた。
ティモスは助けを求めるようにセドリックの姿を探したが、彼は壁際に佇んでこちらの様子を見守っているだけで何もしてくれそうになかった。
「さ、始まるよ。」
マオに袖を引っ張られ、ティモスは祭壇に立つレオル神父へ視線を向けた。
今回の依頼は希少価値の高い薬草の収集だった。たまたまその薬草が群生する季節と地域が重なっていたため、比較的楽な仕事ではあったのだが、それでも数を集めるのにそれなりの時間を要した。
依頼の締切日にはまだ余裕があるため、ティモスは近くの街で数日滞在することを決めた。
以前も訪れたことのある街だった。
ヴォルキアラ帝国とアルシェリティア王国の国境近くに位置し、帝国でも最強と謳われる第三師団が目を光らせているということもあって、こ比較的治安が良いと言われている。
そのため、通行門で取られる滞在料が高いことでも有名なのだが――。
「え?滞在料はいらない?」
「はい。どうぞそのままお入りください。」
にこやかに門番はティモスを中へ通した。
以前なら身元を証明するものを提示しなければいけなかったはずだが、それすら今回は求められない。
「本当にいいのですか?」
「えぇ。我らが神が、『人類は皆、平等に』とおっしゃっておりますゆえ。誰であっても、この門をくぐることは赦されております。」
「はぁ……。」
(ま、タダで入れるのなら、それに越したことは無いか。)
釈然としないながらも、ティモスはそのまま門と街を繋ぐトンネルへと足を踏み入れた。
薄暗く狭いトンネルは先を見通せないものの、奥から多くの人々の笑い声や話し声が響いてくる。どうやら以前と変わらず、街の活気はあるらしい。
「さて、今日は何を食べようかな……ん?」
トンネルを抜けた瞬間、ふわりとした風を感じた。まるで身体全体を優しく撫ぜられたような感覚だ。
そして眼前に広がる光景を見て、ティモスは言葉を失った。
――『目』だ。
地面から、建物の壁から、至る所に『目』があり、どこを見ても必ずその『目』と目が合うのだ。
それは巨大な眼球であったり、水晶のような瞳であったり様々であったが、どれもこれも見つめられるだけで背筋が凍るような悪寒を覚えた。
(な、なんなんだ、この大量の『目』は?以前来たときは、こんなものなかったはずだが……。)
「あれ?お兄さん、もしかして外から来た人?」
不意に声をかけられ振り向くと、そこには一人の少年がいた。
「あ、あぁ。そうだよ。今さっき、この街に来たんだ。」
そう言うなり、少年はパァッっと顔を輝かせた。
「そうなんだ!それじゃあ、まずは『洗礼』を受けたほうがいいよ!」
「洗礼?洗礼だって!?」
ティモスはゾッとした。
いつの間にヴォルキアラ帝国の状況が変わっていたのだろう。
ヴォルキアラ帝国では、ウォテヌス神が信仰されているのは知っていたが、旅人や冒険者にまでその宗教を押しつけてくることはこれまでなかった。
「うん!だって、まだ神様と出会っていないんでしょう?それは失礼だよ。『この街に入ったら、必ず神様にお目通りして、洗礼を受けなければいけない』のは当たり前のことでしょう?」
ティモスは少年の言葉を聞いて、ぐわんと脳みそが揺さぶられるような感覚に陥った。
――当たり前。
(そうだ。新しい街にきたら、その街で信仰される神様に挨拶するのは当然のことだったじゃないか。それを俺は忘れていたのか?)
「すまない。俺が間違っていたようだ。早速、案内してくれるかい?」
ティモスは頭を振って意識を取り戻すと、改めて少年に問いかけた。
すると少年は嬉しそうに笑顔を浮かべると、「もちろん!こちらへどうぞ!」と言って歩き出した。
その後ろ姿を見ながら、ティモスは安堵のため息をつく。
(よかった。危うく街で失態を犯すところだった。冒険者を続けるなら、下手なトラブルは避けないとな。)
少年がティモスを連れてきたのは、街の教会だった。帝国内にある教会の中でも一位、二位を争うくらいの大きさだが、以前に増して多くの人々が出入りしているのが見えた。
「ありがとう。ここまで来たら、もう大丈夫だ。」
少年をこれ以上付き合わせては悪いと思い、ティモスはここで別れることにした。
「僕も入るよ。僕のパパ、この教会の修道士だから。」
「そうなのかい?」
「うん。パパ、きっと一人じゃ帰れないから、僕がお迎えに来たの。」
(一人じゃ、帰れない?)
少年の言葉に違和感を覚えながらも、ティモスはそれ以上何も言わず教会の中へと足を踏み入れた。
「これはまた……。」
中に入ると、そこはまさに別世界だった。
教会の天井は高く吹き抜けになっており、そこからは青空が見えている。さらに正面には祭壇が設けられており、そこに鎮座していたのは巨大な像だった。
その像を目にした途端、ティモスの心臓は早鐘のように鼓動を打ち始めた。
「ふっ……あっ……♡」
ティモスの身体からは、まるで魂が抜け出たかのように、力が入らなくなっていった。
覚束ない足取りで、ティモスは胸を押さえながら、一歩ずつ、ゆっくりと礼拝堂の中へ進んでいく。
ティモスの視線の先には、巨大な像があった。
慈愛に満ちた表情で微笑む男神像は、筋骨隆々とした肉体を惜しげもなく見せつけている。その身には何も身に纏っておらず、片手を空に掲げ、もう片手は自分の逸物に添えられていた。
その立派な性器は勃起し、まるで天に聳えるかのように力強く伸びている。
「おや、あなたは外からいらっしゃった方ですね?ようこそいらっしゃいました。」
声をかけられて振り向くと、そこには白い法衣に身を包んだ壮年の男性がいた。白髪混じりの長い髪を後ろに撫でつけており、穏やかで理知的な顔立ちをしていた。
その男性を見て、「きれい」という言葉が脳裏に浮かんだティモスは一瞬思考が停止した。
「あ、パパ!」
「マオ。今日も来てくれたんだね。」
「うん!あのね、このお兄さん、さっきこの街に来たから、洗礼を受けさせるためにここに案内してあげたんだ!」
「それは素晴らしい。きっと『エンギ神』様もお喜びになられるでしょう。」
マオと呼ばれた少年が男性に駆け寄り抱きつくのを見て、ティモスは慌てて姿勢を正すと、深く頭を下げた。
「申し遅れました。ティモス=マルエストといいます。旅の途中でこの街に立ち寄ったのですが、まだ洗礼を受けていなかったので、ご子息に案内していただきまして……。」
「そうですか。それはそれは、ようこそいらしてくださいました。私はセドリックと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
そう言って、セドリックと名乗った男性も深々と頭を下げる。ティモスもつられて、再び頭を下げた。
「それでは、こちらへ。どうぞいらしてください。ちょうどこれから、礼拝が始まるところです。」
「えっ?あ……。」
セドリックはティモスの手を取り、歩き出した。ティモスは戸惑いながらも、セドリックに導かれるまま歩き出す。
礼拝堂の席はほとんど埋まっていたが、幸いなことに二人分の空席が見つかった。セドリックに促されて、ティモスはそこへ腰掛ける。すると、その隣にマオも座った。
周囲を見渡すと、席に座っているのは男性ばかりだった。男性特有の汗臭さと妙な生臭さがティモスの鼻孔をくすぐる。
「それでは、私はすぐ後ろに控えておりますので、何かございましたらいつでもお呼びくださいませ。」
「は、はぁ……。」
そう言うと、セドリックは後ろの壁際へと移動して、静かに佇んだ。
ティモスはその姿を横目で見送ると、改めて目の前の像に目を向ける。
「……。」
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
それはティモスの喉から発せられた音なのか、それとも隣の少年からのものか。あるいは周囲の男たちから漏れたものかもしれない。
ティモスの視線は、いつの間にか像に釘付けになっていた。その瞳は潤み、頬は紅潮し、口元はだらしなく緩んでいく。
そして、無意識のうちにズボンに手をかけ、ジッパーを下ろそうと手をかけた瞬間――。
「おい、嘘だろ!?」
「今回の司祭は、レオル神父なのか……!?」
ざわざわと興奮する男たちの声に、ティモスはハッと意識を取り戻した。
(お、俺は、一体……?)
「ラッキーだね、お兄さん!普段はめったにお目にかかれない神父様だよ。エンギ神様のおちんぽをお慰めする、『おちんぽ花嫁』に選ばれた人なんだ!」
「お、おちんぽ花嫁、だって?」
「そう!」
隣に座る少年は興奮で頬を赤く染め、目を輝かせて説明し始めた。
「かつてこの街では別の神様が信仰されていて、その神様から特別な力を授けられた強い人たちが街を守っていたんだって!でも、その人たち、エンギ神様の前に無様に敗北してしまって、今ではエンギ神の性奴隷になっているんだよ!その中でも特にエンギ神様が気に入っている男たちは『おちんぽ花嫁』として、エンギ神様を喜ばせるために日々奉仕しているんだ!ほら、見て!」
マオの指差す先には、エンギ神の『おちんぽ花嫁』の一人であるというレオル神父の姿があった。
レオル神父の纏う法衣は彼の体にぴったりとくっついていて、体のラインがよくわかるものだった。筋肉質だが、細身のその体躯はまるで彫像のように美しく、それでいて男らしさを感じさせた。
ひらひらと蝶のように舞う法衣は薄く、ぷっくりと腫れた乳首も、既に我慢汁を垂れ流して勃起しているペニスも、全て透けて見えている。
「いやらしい神父様だぜ……。あんなエッチな格好で、毎日エンギ様のおちんぽ様のお世話をしているなんてよぉ……。」
「わざと俺たちに見せつけやがって……。まるで食べられない至高の果実を目の前にぶら下げられているようなもんだぜ……。」
「流石はエンギ神の『おちんぽ花嫁』の一人……。エンギ神の性処理のためだけに存在している、淫乱雌豚野郎のけつまんこに突っ込みたいぜ……!」
周囲から聞こえる卑猥な言葉の数々に、ティモスは思わず耳を塞ぎたくなった。
しかし、何故か体が動かない。
「どうしたの、お兄さん?」
「えっ!?あ、あの、か、彼らは何を言っているんだ!?」
ティモスは真っ赤な顔で尋ねた。
すると、マオは不思議そうな顔をして答えた。
「え?何言ってんの?みんな、あの神父様のこと、大好きなんじゃないの?おちんちん、いつもビンビンにさせてるし。」
「で、でも、犯したいだの、なんだの……。」
「そりゃあ、あの神父様、とっても綺麗だから、皆の憧れの的なんだよ。でも、あの神父様はエンギ様専用のお便器様だからね。いくら好きになっても、神父様のけつまんこを味わえるのはエンギ様だけだから、無駄さ。」
(そういうものなのか?)
ティモスは不安げに周囲の男たちに視線を走らせる。
男たちはレオル神父のいやらしい姿を見て、股間を膨らませていた。中には前屈みになって必死に堪えようとしている者や、ズボンを脱いで自らの逸物を扱いている者さえいた。
そんな彼らの姿を見ると、ティモスは自分がとんでもない間違いを犯してしまったのではないかと思えてきた。
ティモスは助けを求めるようにセドリックの姿を探したが、彼は壁際に佇んでこちらの様子を見守っているだけで何もしてくれそうになかった。
「さ、始まるよ。」
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