【完結】縁起終夜の華麗なる異世界支配

荒巻一青/もふモフ子

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第二章:変えられた人々と街

『勝敗』

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 通されたのはカジノの最上階に位置する、VIP専用のカジノルームだった。
 天井からは煌びやかなシャンデリアがいくつも垂れ下がり、テーブルの上のキャンドルが淡い光を放つ。

 その部屋の中央に設置されたテーブルの椅子に、カシムは座り、その対面の席にティモスも座らされる。
 そして、二人の前には支配人であるハインリヒが立った。
 バニーや黒服たちは壁際に立ち、その様子を見守っている。

「さて、さっそく始めていきましょう。ゲームはポーカーでございます。」

 元来、ティモスは真面目な男であった。
 そのため、賭け事はもちろん、カードゲームなどやったことはない。ルーレットに関しては動体視力を駆使して、ある程度望む的へダーツ矢を投げることはできたが、ポーカーのルールなんて全然知らない。
 対するカシムは、カジノをリベルタン国に導入するきっかけを作っただけあり、カジノゲームに精通していた。
 そのため、誰がどう見ても、ティモスに勝機があるとは思えなかった。

「カードは1セット52枚。ティモス様は初心者ですので、ポーカーをより簡単に楽しめるゲーム内容にいたします。カシム様、よろしいでしょうか?」
「何でもいい。さっさと進めろ。どうせわしが勝つのだから。」
「ご理解してくださりありがとうございます。では、3回ドローした時点の手札で勝負いたします。強い役を揃えた方が勝利とし、先に選んだレート分増額されたチップを得られます。負けた側の賭けたチップは手元に戻ってきません。試合数は無制限。ただし、各回で必ずチップを賭けること。カシム様かティモス様のどちらかが敗北を宣言した時点でゲームを終了といたします。ここまでで何か質問はございますか?」
「いい。ささっと進めろ。」

 不機嫌そうなカシムの返答を聞き、ハインリヒは微笑んだ。

「本来であればチップの枚数はそれぞれ10枚なのですが、先程のお詫びを込めまして今回は特別サービスとしてカシム様に追加で5枚チップをお渡しいたします。また、チップがなくなったとしてもご安心ください。お客様がお持ちの財産を担保に、新たにチップを支給させていただきますので。――それでは始めましょうか。」

 ハインリヒの説明内容が全然ティモスの頭に入らないうちにゲームが開始となった。
 カードが一枚ずつ配られていく。
 司会バニーに渡されたポーカーの役一覧を見ながら、ティモスは頭を抱えた。

 ――勝ち筋が全く見えない。

 そもそも、ポーカーに詳しくないティモスにとって、役の名称が何を意味しているのかすら分かっていなかった。
 しかし、ここでティモスが負けを認めれば、カシムに全てを奪われてしまう。そう考えるだけで、心臓が締め付けられた。
 ティモスが負ければ、このカジノもカシムのものになってしまうというのに、ハインリヒは涼しい顔で二人の様子を眺めている。
 そうこうしているうちに3回のドローを終え、それぞれに手札が開示された。

「スリーカード。」
「わ、ワンペア……。」

 ティモスのカードを見て、カシムは笑いが止まらなかった。

「おいおいおい!支配人!こんな雑魚相手にカジノの将来を賭ける気なのか!?ポーカーの役すらまともに覚えられないガキが相手だとは!さっさとわしの勝ちにしておけ!」

 高笑いするカシムの言葉に、ティモスは顔を青くする。
 だが、対照的にハインリヒは笑顔を絶やさなかった。

「まぁまぁ、そう焦らずに。まだ一回目ですからね。さて、今回はカシム様の勝利ですので、ティモス様の賭けたチップは全て没収させていただきます。カシム様が手にするチップはこちらです。」

 カシムが賭けた何倍ものチップが、彼の目の前に積み重ねられていく。

「得られたチップをお使いになって、望む人間の所有権と交換なさっても構いませんよ。交換レートはこのようになっております。」

 ハインリヒの背後にあるスクリーンに、カジノで働く人たちの名前とチップの交換レートが映し出される。

「ほっ、ほぅ!」

 カシムの瞳に下卑た光が宿った。
 バニーや黒服、ナヴァルの名前も連なっている。一番下には支配人であるハインリヒの名前すらあった。
 そして、セドリックの名前も――。

「こんなに低いレートでいいのか?この男相手なら、この画面に載っている人間全員の所有権なんざ、わしは簡単に手に入るぞ。」

 カシムの挑発的な言葉にも、ハインリヒは笑顔で応じた。

「えぇ。構いません。どうぞ、お好きなように交換なさってくださいませ。」
「ふん。ではさっそく交換させてもらうとしよう。まずは、わしが躾けてやったあの雌犬から貰うとするかのぅ。ふはははは!」

 スクリーン上で、ナヴァルの名前が点滅し、『ナヴァルの所有権はカシム様へと移譲されました』という表示が現れた。
 これでもうナヴァルはカシムのものとなった。
 カシムの大半のチップがなくなったが、それでもティモスの持っているチップの枚数よりも多い。

「さぁて、お次はセドリックを貰うか。あのバニーをわしのペットにしたら、お前も悔しかろう?」

 そう言って、ティモスを見つめるカシムの目はまさに獣そのものだった。
 ティモスは背筋が凍りついた。
 カシムが勝てば、セドリックも奪われる。そうなれば、カシムはきっとセドリックを好き勝手に弄ぶだろう。
 ティモスは大切な人を失ってしまうかもしれない恐怖に襲われた。

「次の試合に移りましょう。」

 声を振り絞るティモスに、カシムは口角を上げた。

「ほう、まだ続けるつもりか。では次もわしの勝ちで終わらせてやる。」

 果たして、カシムのその言葉通りの結果となった。
 ティモスは2連敗したのだ。

「それでは、ティモス様の所有する全てのチップを頂戴いたします。」

 ティモスのチップが減る一方で、先程よりもカシムのチップは増えていく。

「笑いが止まらんのぅ!えぇ!?流石に弱い者いじめのようになってきたが、それもまた楽しいわい。どうじゃ?もっと負けるか?ははは!」

 カシムはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。

「あのふざけた司会をしておったバニーと、それから本命のセドリックの所有権と交換するぞ!ふひひ!バニー姿のセドリックも良かったが、普段の神父姿のセドリックも犯し甲斐があろう。どちらも良い声で鳴きそうだなぁ!はははは!」

 カシムの下品極まりない妄想を聞かされ、ティモスは吐きたくなった。

(このまま負け続けたら、セドリックさんが……!何とかして所有権を取り戻さないと!)

 しかし、手持ちのチップはもうほとんど残っていない。ティモスの状況は悪化の一途を辿っている。

「ティモス様。次に賭けるチップの枚数が足りません。チップを追加いたしますか?」

 ハインリヒがそう問いかけるが、ティモスは答えられなかった。ティモスの手持ちのお金では、到底足りない。

「お金、が……。」
「人を担保にすることもできますよ。」
「え?」

 突然の言葉に、ティモスは目を丸くさせた。
 ハインリヒが指を鳴らすと、スクリーンの画面が変わった。

「ティモス様と交友関係があり、かつ担保にできる立場の方をリストアップさせていただきました。この中から担保とする方をお選びくだされば、チップを追加させていだきます。」

 マオ、ヴァドス、サラ――。

 一体どこから調べてきたのか、写真付きでティモスの大切な人たちの名前がずらりと並んでいる。

(選べるわけがない……。)

 だが、ここでティモスが敗北すれば、セドリックたちは奪われてしまうのも事実だった。

「お……俺を担保にできますか。」
「なに?」

 カシムは眉を吊り上げた。ハインリヒもまた、意外だという顔をしている。
 だが、ティモスは真っ直ぐにハインリヒを見据えた。

「俺を担保にチップを追加してください!」
「しかし、そうすると、次の試合で負けたらティモス様の完全敗北となってしまいますよ。それでよろしいのですか?」
「はい。」

 ティモスの強い意志を持った目を見て、ハインリヒがフッと表情を和らげた。

「ティモス様自身を担保とし、チップを追加いたします。」
「ふははは!馬鹿め!血迷ったな!わしはさらにレートを上げて、チップをかけるぞ!チップの枚数もさっきの百倍だ!」
「かしこまりました。」

 3回目の試合が始まる。
 だが、いきなりティモスの実力が開花することはなく、結局3回目もティモスの手元に残ったのは、もはや価値がないといっていい役だった。

(4が2枚と7が2枚……。ツーペアだ……。)

 黙っているティモスに対し、勝利を確信したカシムは声高々に「フルハウス!」と叫んだ。

「ん?ほら、早く手札を見せよ。」

 カシムが催促するが、ティモスは何も言えなかった。カシムは苛立ったように「なんだ?怖気づいたのか?」とせせら笑う。

「おい、支配人!さっさとこいつの手札を見せてやれ!」

 ティモスのカードを持つ手は震えていた。

「ティモス様。どうぞ、お見せください。」

 ハインリヒに優しくそう言われ、ついにティモスはぎゅっと唇を引き結んだまま、自分のカードを表にする。

「つ……ツーペアで――」
「ツーペア?何をおっしゃいます。」

 ハインリヒはきょとんとした表情で言った。

「フォーカード、ですね?ティモス様。」
「え……?」

 見ると、7が4枚揃っていた。

(嘘だ!さっき見たときと、数字が違う!)

 ハインリヒの方を見るが、彼は「ティモス様はポーカーに慣れておりませんから、役を間違えてしまったのでしょう。今回はティモス様の勝利です。」と何でもないように言ってのけた。
 そして、ティモスが信じられないといった顔で固まっている間に、ティモスの目の前にチップが積み重なっていく。

「チッ……。まぁいい。どうせまぐれだ。」

 カシムはつまらなさそうな顔をした。まだ手元のチップの枚数はティモスを上回っているため、カシムに焦りなどなかった。

「おい!早く次を始めろ!」

 カシムは鼻息荒く、次の試合を急かす。

「かしこまりました。それでは、次の試合に移りましょう。」
「次はもっとチップを増やしてやるわ!覚悟しろ!ははははは!!」

 カシムは勝ち誇った笑みを浮かべながら、大量のチップを賭けに出す。
 しかし、カシムがそんな態度を取っていられるのもここまでだった。

「フォーカードですね。」
「ストレートフラッシュ。」
「ロイヤルフラッシュ。お見事です。」

 次々と出されるティモスのカードは強い役ばかり。
 自分が選んだカードをいざ相手に見せる場になると、いつの間にか強い役に入れ替わって、勝利を収めていた。

(これは……いわゆるイカサマってやつなんじゃないか?)

 流石に何度もその状況が続けば、ティモスもおかしいと気づいた。
 ちらりとハインリヒの方を見ても、彼は淡々とディーラーを続けている。

(なるそど。勝ち目が明らかにない俺に、カジノ側の様々な資産を背負わせたのは、これがあるからか。)

 カジノ側がズルをしているなら、絶対にティモス縄が負けることはない。
 ティモスは黙って、カジノ側の操り人形に興ずることにした。
 そして、ゲームの回を重ねるたびに、みるみるうちにカシムのチップは減っていった。

「ば、馬鹿な!こんなことがあってたまるか!何かイカサマをしておるんじゃろう!?」
「カシム様。お言葉ですが、この勝負は公正に行われています。もし、これ以上ゲームに参加できない場合は、敗北宣言をしてくださいませ。」

 ハインリヒがいけしゃあしゃあと答える。

「ふざけるな!わしが負けるなど……!有り得ぬ!断じて許さんぞ!もう1度じゃ!もう1戦させろ!」

 そう喚き散らすカシムだったが、次の一戦でもティモスは圧勝した。

「ぐぅう……!貴様ぁあああ!!」

 怒り狂い、今にも飛びかかって来そうな勢いのカシムに、ティモスは黙って次のゲームが始まるのを待った。
 

***


(お……おかしい!)

 勝てる相手であるはずだった。
 負けるはずがなかった。
 それなのに、ここぞというタイミングで妙に良い役を揃えてくる。
 カシムが大きな賭けに出ると、毎回と言っていいほど、圧倒的な役を出してくる。
 確かにこちらが勝っているときもあるのに、気づけばチップの枚数は減っていく――。

「困りましたね、カシム様。もう手持ちのチップがほとんどありませんよ。」

 わざとらしく言うハインリヒに、カシムはツバを飛ばしながら叫んだ。

「追加するに決まっておろう!さっさと持ってこんか!」
「カシム様のお金からでよろしいでしょうか?」
「構わん!!わしの金ならいくらでもくれてやる!」
「かしこまりました。」

 ハインリヒが再び指を鳴らすと、スクリーンにチップが追加される。
 だが、その枚数はカシムの想定よりずっと少なかった。

「これでよろしいですか?」
「な、なんじゃこれは!全然足りんではないか!わしの金を全部使え!」
「それが、事前に登録なさっていた金額をオーバーしておりまして……。」

 ハインリヒが申し訳無さそうに頭を垂れた。

「なにぃ?!ふざけるな!これっぽっちしか入っとらんのか!?」
「はい。まだ足りないのであれば、一度所有なされたバニーたちとチップを交換することも可能ですが、いかがいたします?」
「ぐっ……!」

(あの性奴隷共を手放すだと!?クソッ!そんなこと、あってたまるものか!だが、チップの枚数がなければ……。)

「し、仕方あるまい…っ!」

 カシムは苦虫を噛み潰したような顔をして、ハインリヒの提案を受け入れた。
 そうして、ゲームは再開された。カシムはやはり勝つものの、連勝するわけではなく、ティモスの勝利も挟み、ゲームは続いていく。

 その絶妙な勝敗の繰り返しに、気づいたら再びカシムのチップは底をつきかけていた。
 そして、最後のカードが開かれる。

「おめでとうございます。フルハウスで、ティモス様の勝利となります。」

 ハインリヒの言葉に、流石のカシムも声が出なかった。

「わ、わしの、負けじゃと……?」
「負け?カシム様は、まだ負けてはおりませんよ。」
「なに?」

 ハインリヒはニッコリと微笑んだ。

「チップを追加して勝てば、これまでの損失分を取り返せば、カシム様の負けはなくなります。」
「ふ、ふざけるな!わしのチップはゼロだ!これ以上どうやって取り返すというのだ!」
「まだ担保にできるものが残っておりましょう?ほら。」

 ハインリヒが指を鳴らすと、スクリーン上の画面が一変した。

「こんなにたくさん、ね。」

 スクリーン上には、アデル公国の国庫から始まり、カシムの親族にあたる貴族たちの詳細な財産の情報までずらりと並べられていた。

「財産だけではなく、ティモス様同様、人を担保にすることも可能です。奥様やご子息、親族の方々はもちろんのこと、アデル公国はもはやカシム様のもの同然ですから、国民も担保にできますよ。いかがいたします?」
「お、おぉ……!」
(これだけの金があれば勝てる。一度手放したナヴァルやセドリックも取り戻せる……!なぁに、次は勝つ見込みがあるんじゃ!担保にこれらを入れても、すぐに買い戻しはできる……!)

 ナヴァルのアナルを知ってしまったカシムに、諦めるという選択肢はなかった。ましてや一度、自分の手中におさめていたものが手にはいらないなんて、彼のプライドが許さなかった。
 もう彼の正常な思考判断は、すっかりハインリヒによって奪われていた。

「全部じゃ!これら全てをチップに変えるぞ!」

 カシムは鼻息荒く、ハインリヒに詰め寄った。

「かしこまりました。それでは、そのようにいたしましょう。」

 公国の者たちが知らぬところで、勝手にあらゆる財産や権利がカジノに吸い上げられていく。
 カシムは勝利を確信していた。
 実際次のゲームはカシムが勝利した。
 そこで味を占めたカシムは、ゲームを続行させるが、そこが運の尽きだった。

「チ……チップが……。わしの金が……!」

 チップが無くなったカシムは青ざめた顔で、ガクッと膝をつく。
 そんなカシムにハインリヒは心配そうな表情を浮かべ、寄り添った。

「カシム様。いかがなさいます?ここで負けを認めることも出来ますが……。」
「ま、負け……。」

 流石のカシムも、心が折れかけていた。

「しかし、残念です、カシム様。ようやく私をこのカジノから解放してくださる方が現れたと思っていたのに……。」
「……なに?」

 カシムはハインリヒを見上げた。
 ハインリヒはゆっくりとカシムの手に自分の手を重ね、指を一本一本丁寧に撫で上げる。

「私はかつて第三師団で最強の名を欲しいままにしておりましたが、今となってはカジノのオーナー。VIPのお客様へご奉仕する肉便器です。」

 そして、その手を自分の股間へとハインリヒは持っていき、そこにあるモノの形を確かめさせるように優しくカシムに触らせた。

「んっ♡まだ、私のメスマンコを味わっていないのに、もうゲームから降りてしまうのですか?チップさえあれば、私の身体を好きにして頂いても構わないのに?」

 ハインリヒはそう言って、妖艶に笑みを浮かべた。

「おほっ♡おおおおおっ♡♡♡」

 ハインリヒの挑発に、カシムは顔を真っ赤に染め上げながら、ハインリヒの股間を揉む。

「あっ、ん♡カシム様っ♡」
「ぐっ……!だが、わしがあと担保に入れられるものは……!」
「あるではありませんか。ふぅ♡カシム様が実質的に支配されている国が。――リベルタン王国ですよ。」
「あ、ああ……!」

 カシムは震えた。
 それは恐怖ではなく、歓喜によるものだった。

「そうか!その手があった!ふはは!リベルタン王国の国庫にある財産から王家の人間や貴族、そして国民まで全部担保にしてチップを追加するぞ!これでわしはまた勝ち続けることができる!」

 カシムはハインリヒを押し倒し、その唇に貪りついた。

「ぶじゅる♡おっほぉ~♡最高じゃ♡みんなみんな、わしの性奴隷にしてやるわい♡」
「カシム様っ……♡」
「二人の元団長をわしのペットにできるとは……!最高じゃ♡」
「えぇ、全くその通りですね。」


 ――ただし、ゲームに勝った場合の話ですが。



***


 シャワーを浴び、アナルの洗浄もして、服を着替えてきた男がVIP専用のカジノルームへ着いた頃には、もう大体の勝敗は見えていた。

「よぉ。ハインリヒの茶番は終わったか?」
「あ、ナヴァル様~。」

 ひらひらとモニター前に座る司会バニーがナヴァルに向かって手を降る。

「腰の具合は大丈夫ですか?」
「あんな短小早漏野郎、何でもねぇっつの。途中演技するのも飽きて、意識飛ばしてたな。」
「はいはい。そういうことにしておきますよ。」
「うるせぇな。そういうお前は平手打ちされたんだろ?怪我は?」
「大好きなハインリヒ様があのクソデブ親父から全財産を巻き上げてくださっているので、全然痛くありません。」
「ははは!そいつぁよかったな!」

 ナヴァルは司会バニーの隣に座り、その頭を荒々しく撫でた。
 そして、ゲームの中継画面を見る。
 画面の中で、カシムの顔からは血の気が引き、そのくせ目は血走っていた。正常な思考はしていないと、誰もが分かる顔つきだった。
 対するティモスは、飽きてきたのか欠伸までしている。

「ティモスも可哀想だな、こっちの茶番に付き合わされてよ。あいつも早く自分の恋人に会いたいだろうに。」
「まぁ、このあとは本来のVIPルームへお連れしますので、それで許してもらうことにしましょう。それに、カシム氏から全てを奪った今回の件は、彼にとっても悪い話ではなかったと思いますよ。」
「カジノで国をおかしくさせた男が、カジノでその身を滅ぼすたぁ、皮肉な話だな。」

 ついにショックで体を支えきれなくなったカシムが、椅子から転げ落ちた。助けを求めるようにハインリヒに手を伸ばすが、黒服たちがそれを押さえ込む。

 国を売り、親族を売り、そして家族を売り。
 最終的には自分自身も担保にしたが、結局のところ敗北した。

 カシムはそのまま黒服に連れられ、カジノルームをあとにする。
 吸い取れるもの全てを吸い取られ尽くした彼にはもう利用価値はない。そのため、あとは身一つになった彼は、城壁の外へ捨てられることだろう。

 ――全て、現人神の思惑通りに。

『人を狂わせる魔性を秘めた、きらびやかな空間!カジノっていいよね!そう思わない!?』

 突然やって来た現人神は、開口一番そう言った。

『というわけで、ハインリヒとナヴァルには、カジノ経営をしてもらいまーす!バニーボーイたちもたくさん準備して、性的にも楽しめる空間にしよう!そうすれば、噂を聞きつけた各国の要人たちも遊びに来るはず!そんなVIPから、とにかくありとあらゆる財産を全部巻き上げてね♡』

 現人神がそう望むのなら、ハインリヒとナヴァルはそれに従うのみである。 

 カジノの建設は急ピッチで進み、噂はあっという間に広まって、各国の要人たちが訪れるようになるまでに時間はかからなかった。
 しかも、運営しているのが元団長の二人であり、さらにそのアナルを味わえることもカジノを有名にした要因であった。
 かくいうカシムも、その噂に釣られてやって来た要人の一人である。

『気づいたら、別の国に支配されていたなんて恐ろしい話だよねぇ。でも、大丈夫!世界は結局、全てエンギ神によって支配されるんだから♡』

 ハインリヒとナヴァルはVIPたちの精液と金を搾り取れるだけ取って、カジノを盛り上げるために日々尽力している。
 利用価値のないVIPは、金を巻き上げたあと、国の外で処分した。かつての二人からは考えられない汚れ仕事であったが、『現人神の願いを叶えることが正義』であるため、戸惑いはなかった。

「カシムは用済みだ。あとは国の外にでも捨て置け。」

 ナヴァルは近くの黒服へそう命令し、自分はハインリヒの元へ足を運んだ。
 VIP専用カジノルームにはハインリヒ一人だけが残り、ティモスの姿はなかった。

「よぅ。楽しかったか?イカサマポーカーは。」

 ハインリヒは煩わしそうに、前髪をかき上げ、ナヴァルを睨んだ。

「人聞きの悪い。僕はカジノの支配人としてやるべきことをやっただけだ。格下相手にメスマンコをほじくり回されて、あんあん喘いでいただけの君とは一緒にしないでくれ。」
「あ?言うじゃねえか。」
「君と喧嘩をしている暇はない。それより、ティモス様へのお詫びの準備は整っているのか?」
「それなら言われなくとも、準備万端だ。」

 ハインリヒの問いに、ナヴァルは笑った。

「今頃、楽しんでいる頃だろうよ。」
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