11 / 153
ダンジョンムービー。(ここから優子視点)
しおりを挟む「…………それから、どうなったんでしょう?」
思い出した記憶を手繰った私は、だが自爆のような攻撃で銅竜をたぶん殺したところまでの記憶しか無かった。
そこで記憶が焼き切れて、私は自分の足であの地獄、目の前の医者がダンジョンと呼んだ場所から出た記憶が無い。
そもそも、私は自分ごとあの竜を殺すつもりだった。
だからこそ暴走する蒼炎の手網を手放して、限界を超えて火力を上げたのだ。
なのに、なぜ私は生きてるのか?
思い出したからこそ混乱してきて、答えを知っているだろう目の前のお医者さんに聞く。
「結論から言うね。君は確かにその時に気を失って、もう少しで死ぬところだった。そこをナイト君が助け、君はダンジョンの外に出たんだよ」
しかし返って来た答えは意味が分からない物で、あの地獄で増大した知性をフル回転させても、その言葉を理解出来なかった。
「…………?」
「分からないって顔だね」
「……はぁ、まぁ」
あまりにも意味不明な言葉を吐かれた私は一瞬、ダンジョンで磨かれた獣性が、研ぎ澄ました殺意が顔を出した。
自分の前でナイトの死を、その事実を弄ぶのか?
そう考えてしまった私は、著しく軽くなった殺しの引き金に指が掛かる。
その時銃口から飛び出すのは鉛玉では無く蒼炎だと理解して、私はお医者さんの殺害を視野に入れる。
ナイトの死は、誰よりも私が良く覚えてる。
ナイトは私を守って死んだ。その事実を私はちゃんと覚えてる。
それを、訳の分からない言葉で弄ぶと言うなら、その命を賭けてもらう。
「百聞は一見にしかず。まずはコレを見て欲しい。それで全部分かるはずだよ」
私が本気で殺そうと考えているなど分からないお医者さんは、手に持っていたタブレット端末を私に渡す。
「…………ダンジョン、ムービー?」
手渡されたタブレット端末の画面には、見たことも無い動画サイトが表示されていた。
「え、しかもこれ…………」
その動画サイトに表示されたページ。
タブレット端末の画面、そこに今出ている動画のサムネイルには、何故か薄汚れた自分の顔がデカデカと映されていた。
動画タイトルは「決死の三ヶ月」。
「…………なんで?」
「とにかく、その動画を見てほしい」
何がなんだか分からないまま、私は端末の画面をタップして動画を再生した。
そして始まる動画。
黒一色の画面はゆっくりと色付いていき、実際にあのダンジョンに居た私から見ると違和感しか感じないほどに明るい洞窟が映し出され、そしてそこに仰向けに倒れている私と、ナイト。
「……こ、こんなのっ、誰が」
「それも後で説明するから、今は見て欲しい」
こんな動画があるなら、つまり撮影した者が居たはずで、だったらその人が助けてくれたなら、ナイトは死ななかったかも知れない。
そう思うと、私の中で蒼炎が暴れ狂う。
ああ殺したい。殺したいっ…………。
なんで、なんでっ、なんでッッ…………。
だけどお医者さんは私にこのふざけた動画を見ろと言う。
なら、今は見る。大人しくする。だけど、見たあとに、私が納得出来るだけの説明をしてもらう。
もし、ほんの少しでも納得出来なかった…………。
チリリと、一瞬私の髪が、その毛先が蒼く燃えた。
「…………ッッッ!」
動画進み、すぐにナイトが目を覚ます場面を見せ付けられる。
この後、ナイトが死ぬ。気を失い続けたマヌケな私を守って、ナイトが殺させる。
見たくない。こんな動画見たくない。でも、見たい。ナイトの最後を、私が見れなかった家族の最後の瞬間を。
心がぐちゃぐちゃになりそうで、まだあの小人の化け物が登場してもないのに涙が出て来る。
画面の中のナイトは、目を覚ますとすぐに私を探して視界を回し、そしてすぐ側で気を失ってる私を見付けると、嬉しそうに傍に駆け寄る。
私を起こそうと前足で揺らすナイト。起きない私を心配して、私の顔を覗き込み、ぺろぺろと舐めて起こそうとする愛しい家族。
もう会えない。二度と会えない。もうナイトが私を揺すって起こす日は来ない。ナイトが私の顔を嬉しそうに舐める日も来ない。
二度とそんな日はやって来ない。
殺意が、憎悪が、ドロドロと湧き出てくる…………。
ほとんど無意識で私の毛先が蒼く燃える。チリチリと小さく燃えて、溢れる感情を薪にして燃やそうとする。
「辛いと思う。でも見て欲しい。いや、君は見るべきだ。ナイト君の為にも、君はこの動画を最後まで見るべきなんだ」
お医者さんがそう言う。
私も、ナイトの最後は見るべきだと思う。じゃないとナイトが、こんな場所で誰にも見られずに死んだナイトが可哀想だ。
でもなんで、最後まで?
ナイトはこの後死ぬ。この後すぐに死ぬんだ。
嫌がる私に関係なく、動画は進んでいく。
ほら、もう小人の化け物が出て来た。この後ナイトは戦う。私を守ってボロボロになる。そして私が目を覚ます前に死ぬ。殺される。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる