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マスコミ対策。
しおりを挟む「……お父さん、私の名前ってバレてるの?」
「いや、それはまだ大丈夫だ。……正直、時間の問題だがな」
今更だが、DMのアカウントは自動生成されるけどアカウントの名前は基本的に非表示である。
だから私がダンジョンムービーのライブ配信や、投稿動画の中で自分の名前を叫んだりしなければ、視聴者には伝わらない。
「まだ大丈夫よ。さすがに大事になると思って、優ちゃんの学校が関係者に、優ちゃんの名前を喧伝しないようにって広めたから。それにお母さん達も、優ちゃんのことを内緒にして欲しいって近所にお願いして回ったし、政府もある程度は情報操作してくれたみたいよ?」
つまりセーフらしい。危ない、首の皮一枚繋がった。
…………あれ? でも首の皮一枚だけ繋がってても、結局ソレって死んでるよね? 頚椎逝ってるじゃん?
…………まぁいいや。
ぶっちゃけ、私の名前がバレてないなんて確実に幻想なのは分かってる。
だって世界規模の話しなのだ。世界規模の経済が動く話しで、たかだか一人の子供を守る倫理観なんて、クソの役にも立たない。
恐らくもう、私の身柄かアイテムか、もしくはそのどちらもが欲しい国や組織は、私の個人情報なんて丸裸にしてるはず。
だけど逆に、私が欲しい国も組織も大きく騒げない。
大衆に私の存在がしっかりと認識されてしまえば、私の身柄を手に入れる時に民意が邪魔になる。だから私の情報は手に入れてても喧伝出来ない。そのはずだ。
それと、映画やドラマみたいに無理矢理手に入れるなんて可能性も薄い。何故なら、私は確かに世界で唯一の存在だけど、無二の存在では無い。
この先私以外の誰かが五層を突破して、最終的にダンジョンを攻略出来た瞬間、私は『唯一』の希少性を失う。私の価値はその希少性だけなのだから。
そんな不安定な付加価値のために、映画になりそうな程の陰謀が渦巻いて国同士がやり合うとは思えない。
そんな計画に資金を使うなら、国や組織ぐるみでお気に入りのダンジョンアタッカーを支援してダンジョン攻略を手伝った方が損もない。だって私の入手計画は失敗すると損だけが残るけど、ダンジョンアタッカーの育成計画は失敗してもその時点まで『育ったダンジョンアタッカー』だけは残るんだもん。
もちろん育てたダンジョンアタッカーが死ななければ、だけど。
でもDMの帰還システムを使えば帰れるダンジョンは予想よりも死傷する可能性が低い。それでも死んじゃったなら支援が中途半端だっただけだ。つまり自業自得。
「…………逆に、メディアに露出して知名度上げてマスコミ黙らせる?」
「……優ちゃん、どういうこと?」
「えっと、つまりね--」
私は自分の考えを披露する。
マスコミがマスゴミになるのは、知られてない情報がそこにあるからだ。誰も知らないから、それを大衆に知らせる活動でお金を稼ぐのがマスコミでありマスゴミなんだ。
その情報に値千金の価値があるからこそ、マスゴミは活動の善悪を問わずに群がってくる。
だったら、こっちからメディアに露出して情報を出してしまえばいい。
ダンジョンでの情報はほとんど動画に残ってる。だからマスゴミが欲しい情報は私のインベントリに眠るドロップ品と、そのドロップ品の詳細や使い方、販売先についてだろう。
あとは、どんな気持ちでダンジョンを進んだのか、子供の身の上で辛くは無かったのか、そんなお涙頂戴出来そうな大衆向けの娯楽が欲しいだけ。
だから私はそれを先に吐き出せば良い。
既に大衆が持っている情報なんて必死に集める必要が無くなる。そうすれば私はマスゴミのご馳走から抜け出して、一山いくらの有名人になれる。
もちろんインベントリの中の爆弾は慎重に扱うし、別に隠してしまっても良い。比較的安全そうなドロップをばら蒔いて終わりだ。他人には私のインベントリの中身を漁る術がないんだから。
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