Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
75 / 153

プラン。

しおりを挟む


 取り敢えず、DM生配信があるとペイートしてたのに一時間で終わってしまったお詫びをペイッターに呟いて、再準備が出来次第またアタックする予定をネットに投げて置く。

 それから魔力が枯渇した二人のそばで、私のインベントリから取り出したMPポーション的なお薬を焚いておく。

 本当は内服する水薬みずぐすりなんだけど、加熱しても効果には変化が起きないらしいので、火にかけてる揮発させてる。
 
 すぐ傍で鍋に入れて温めたMPポーションが気化して、その成分を二人がゆっくり呼吸して摂取出来ればいいと思う。買っといて良かったキャンプガジェット。

 流石に急いで無いし、口移しとかはちょっとね。別に大好きな家族にだったらしても良いけど、緊急性も無いのにちゅっちゅするのは変かなって思うので。

 ちなみにMPポーションはまだ世の中に出て無いので、多分五層より先でドロップするアイテムなんだと思う。

 私も相変わらず五層以降でドロップする物がよく分かってないんだよね。私のインベントリの中にある、現在四層まででドロップした記録の無いアイテムは五層以降のドロップなんだろうなって漠然と思ってるだけだ。

「うーん、どうしようかな」

 正直、予定が狂った。

 もちろん良い方向にだけど。でも狂い方が大き過ぎて、予定を大幅に変えざるを得ないのも事実だ。

「んー、予定通りなら蒼乃・・式レ・・ベリ・・ング・・理論・・をDM生配信で披露するつもりだったのに」

 世の中のダンジョンアタッカー達がもたらす情報やDMの動画、SNS、ニュースサイトやテレビ番組等々、様々な情報を精査した結果…………。

 私は、世間で広がってるレベリング理論が間違ってると理解した。

 だから一年も経って、未だに銅級五層もクリア出来ないんだ。

 いくらスキルに覚醒してるとは言え、年齢・・一桁・・の子・・供が・・死ぬ・・気を・・尽せ・・ば何・・とか・・なる・・程度・・のダ・・ンジ・・ョン・・で、一年も足踏みをしてるのはオカシイと思ってたんだ。

 世間のレベリング理論が、方法が間違ってる。

 そのせいでステータス的にダンジョンを攻略出来る指標に至ってない。

 この世界は、ダンジョンは、ダンジョン攻略の指標に使うべき推奨基準がレベルじゃなくてステータスなんだ。それを世界が理解してない。

 その辺の事をお母さんと真緒のレベリングついでに配信しちゃえば、もしかするとタイムリミットまでに銀級ダンジョンに挑戦出来るかも知れない人材が増えるかな……、なんて考えてた。

「でも、覚醒しちゃった…………」

 だけど、二人ともゴブリンを目にしただけでトラウマがフラッシュバックして覚醒してしまった。

 こうなると、レベリングの理論が同じでも配信による効果が変わってしまう。

 なぜなら蒼乃式レベリングで効果が出ても、それは『覚醒者が特別なのでは?』って言われると否定出来なくなるから。

 非覚醒者でもレベリングのやり方次第で五層もちゃんと突破出来るって説得力が欲しいのに、お母さんも真緒も、二人ともが覚醒してしまった。

「悪い事じゃ無いんだけどなぁ」

 むしろ、圧倒的に良い事だ。

 ダンジョンが持つある種の不文律として、『瞬間火力が有れば死なない』なんて法則がある。

 絶対じゃ無いけど、それでも『一時的にモンスターを一掃出来る』火力が有るなら、帰還が楽に行える。よって死なない。ないし死にづらい。

 そしてアタッカーが持てる最大出力とは、やっぱりスキルなのだ。だって私は今のところ、私以上の火力を持ってるアタッカーを知らない。

 これは私がレベル8だからって事じゃなくて、例え同レベルだったとしても、私の火力は群を抜いてるのだ。

 私だけじゃなく、覚醒者は基本的に火力が高い。ああ当然、攻撃系のスキルのおはなしだけど。

 もちろんどんな事情があれ、火力が高いのはほぼ無条件に良い事だ。それは私のスキルに限らず。

 つまり要は本当に危険な状況でも火力でゴリ押しすれば逃走の隙を作れるって事だから。そしてスキルとは、殆どがどんな体勢、どんな状況でも魔力さえ有れば意思一つで行使出来る暴力である。

 例えば、三桁あまりのゴブリンに集団でボコられたりすれば、普通のアタッカーなら何も出来ずに死んで行くだろう。

 けど、スキルなら思うだけで、考えるだけでゴブリンを薙ぎ払える。一瞬でも自分の周りに空白地帯を生み出せる。空白地帯を生み出せたなら、ゴリ押しで帰還出来る。

 それは、基本的に安全地帯が存在しないダンジョンに於いて、とてつもないアドバンテージだ。

 お母さんも真緒も、そんな力を手にして安全性が跳ね上がったと思えば喜ばしい事で間違い無い。

「ただ、やっぱりスキル持ってると育成方針が変わっちゃうんだよなぁ」

 非覚醒者が率先して伸ばすべきステータスは膂力と耐久、次いで敏捷か。魔力を使える環境に無いから、魔力を伸ばす意義は低い。

 けど覚醒者は逆に他のステータスよりも優先して魔力を上げるべきだろう。なにせ魔力がスキルの威力と使用率に直結するんだから。

「育成方針プランが反対になっちゃう…………」

 でも、でもでも、やっぱり覚醒したのは良い事だ。

 二人とも攻撃系スキルっぽかったし、それなら育成しだいで銀級も問題無く戦えるはず。これは僥倖ぎょうこうって言って差し支えない。

 二人の命が失われる危険が遠のいた。まず喜ぶべきだ。

「うん、よし。二人が起きるまで、育成プランの練り直しでもして待ってようか。それで、起きたら二人におめでとうって、ありがとうって言おう」

 私の三ヶ月を、覚醒しちゃうくらい悲しんでくれて、怨んでくれてありがとうって。大好きだよって。

 ありがとう、お母さん。真緒。私は浅田家に産まれて、幸せだよ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...