Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
92 / 153

ダンジョンでお昼。

しおりを挟む


 朝からダンジョンアタックして、現在お昼。

 アレから三頭ほどのサンダーレオを頭カチ割って殺し、ナイトと二人がかりで毛皮を剥いで家族を待つこと四時間くらい。

「あ、先に来たのはお母さんなんだね。ニクスもそろそろっぽいし、じゃぁお昼にしよっか?」

「わぅん!」

「…………お母さん、ちょっと休んで良いかしら?」

 レベル的に危険は少なかったといっても、まだレベル4に成り立ての新人さんである。一気に最短を駆け抜けて五層までって言うのは、なかなかハードだったらしい。

「うん、良いよ。ニクスが到着するまでお母さんは休んでて。お昼の準備も私がやるから」

「フラムちゃん、ありがとうね」

「ううん、二人はこの後も引き続き地獄を見るから、お昼の準備くらいは私がやるよ。だから気にしないで」

「………………………………うん、そうね。うん」

 お母さんの目から光が消えた気がするけど、気にしない。

 銀級で本当に命に関わる危険を経験するくらいなら、今のうちに命に関わらない危険を山ほど経験しておくべきだ。それで死なずに済むならば、肩までどっぷり地獄に浸かれよホトトギス。それが私流。

 お母さんと合流した私は、五層の入口階段付近まで戻ってお昼の準備だ。

 インベントリからキャンプガジェットを取り出す。ペットボトルからクッカーにお水を注ぎ、このままガストーチやコンロに掛けて良いのだけど、私の蒼炎の方が早いから蒼炎で熱する。

 両手に鍋型のクッカーを一つずつもって、その鍋の底を蒼炎で炙る。

「…………面白い料理風景よねぇ」

「ホントにね。蒼い炎でお料理なんて、ファンタジーだよね」

「お母さんの紫電でも似たようなこと出来るのかしら?」

「出来るんじゃない? クッカーに通電すれば電気抵抗で熱くらい出るでしょ」

 その場合、普通にコンロを使うのとどっちが効率的かは分からないけど。

 お湯が沸いたので、片方のクッカーにレトルトパックを投入し、もう一つのクッカーで沸いたお湯は別のパックに注ぐ。

 お湯を注いだパックにはアルファ米って言う乾燥したお米が入ってて、お湯を注ぐとホカホカのご飯になるアイテムだ。非常食にも登山食にも使える便利な機能お米である。

「…………随分、慣れてるわね?」

「んふふ~。…………実はね、練習したんだぁ。二人にカッコイイとこ見せたくてさ」

 さらっとキャンプ出来ちゃう人ってカッコイイよね。なので、実はこっそり家で練習してた。

「……そんな事しなくても、フラムちゃんはもう最高にカッコイイ愛娘よ?」

「足りないもんっ。私の家族は世界一だから、私も世界一の娘になるのっ」

「おねーちゃんはもう、せかいでいちばんすてきで、かっこいいよ?」

「あ、クーちゃん」

 そろそろ食事の準備が終わるって所で、上階から真緒が、ニクスが現れた。

 上から降りて来てる筈なのにが無い箱の中からひょこっと現れ、だしぬけに私を褒める。うふふ、ニクスも世界一素敵で可愛い妹だぞっ!!!

「おひる?」

「そうお昼。カレーライス…………、と見せかけてプレミアムビーフシチューですっ! ハンバーグつき!」

「わぁーい!」

「フラムちゃん、匂いに釣られてレオが来たら--……」

「来たら殺すから大丈夫。て言うか殺したばっかだし、あと30分はリポップしないから安全だよ」

「わぅん」

 レオの襲来を心配してるお母さんに安全を伝える。ダンジョンには安全な場所なんて一つも無い。無いけど、無かったら作りゃええねん。

 ボスをぶっ殺して無理やり一時間のセーフティエリアを確保すれば、お昼くらいはゆっくり食べれる。

「ほい、クーちゃんとお母さんの分。一人で四人前くらい用意したから、いっぱい食べてね」

 ナイトと私の分も用意しつつ、二人に山盛りのご飯とシチューとハンバーグを盛り付けて渡す。

「……そうね。お母さんもクーちゃんも、レベルアップして沢山食べれる様になったものね」

「たくさんたべるよっ!」

 今のところ世界で唯一、五層のレオが消えるダンジョン、代々木。

 たった一時間だけ観光に最適なエリアになるこのエリアは今、ボスがちょいちょい消される為に採取して稼ごうとするアタッカーには人気のスポットと化している。

 なんでも、わざわざ県外のアタッカーさんまで来てるそうだ。なんか近くで休憩してるアタッカーさん達が教えてくれた。

 このエリアで採取出来るのは、ダンジョン由来の不思議なキノコや、薬草や、意味不明な性質を持った木材やら、色々だ。

 大多数はごく普通の品なんだけど、頑張って探すと「見るからに普通じゃない」物が落ちてたりして、それを持ち帰るとまぁ売れる。

 特にキノコは人気らしい。「ひたすら美味い」って言う、ダンジョンでだけ取れる奇跡のキノコとして高額で売れるそうだ。

 この手の、「採取しないと手に入らない」タイプのアイテムは私のインベントリには入ってない。モンスターばっかり倒してたから、モンスター素材かモンスタードロップしか、インベントリに入ってないのだ。

「…………銀級が落ち着いたら、もっとちゃんとダンジョンで採取とか探検とかしても良いかもね」

「いっしょにいっていーい?」

「もちろん! いっしょに探検しようね?」

「うんっ♪︎」

 ビーフシチュー・オン・ザ・ライスのハンバーグ乗せをぱくぱく楽しむニクスをなでなでしながら和む。妹可愛い。

 ダンジョンは復讐対象だけど、それはそれとして遊べるなら遊ぶのだ。現代人はダブルスタンダードなのである。

「さて、食べ終わったらレベリングだからね」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...