93 / 153
蒼乃式ブートキャンプ。
しおりを挟む「さて、じゃぁお母さん達は何をすればいいのかしら?」
「お母さんちょっと開き直って来たよね」
「フラムちゃん、これは吹っ切れたって言うのよ」
みんなで仲良くご飯を食べて、ナイトをモフモフしたりで休憩した私達。
しかし、穏やかな時間はいつしか終わるもの。お母さんはそんな世界の真理にいち早く気付き、そして対抗するためのメンタルを手に入れてた。
「まぁこっからは、そんなに難しい事ないよ。ただずっと修羅場に居てもらうだけ」
「………………そうなのね」
お母さんはもう何も言うまいって感じだ。ニクスも良い感じに諦めて、ナイトをモフってる。
「具体的に言うとね、次リポップしたレオを二人に倒してもらって、そのまま六層に行くよ」
「あら、六層に入って良いの?」
「うん。二人でレオ倒せるなら大丈夫でしょ。て言うか、楽勝になってもらっちゃ困るんだ」
楽に勝てるって事は、経験値が薄く少ないって事だから。そのレベルまでここでレベリングしちゃうと、この先の階層でレベリング効率が著しく悪くなる。
「あとね、これはあくまで予想なんだけど……」
私を除く、世の中の最高レベルについて疑問を持った事がある。
なんでレベル4で横並びなんだろう。誰か一人くらい突出しても不思議は無いのに。
「もしかしたら、階層クリアでレベルキャップが発生してるんじゃ無いかな」
私がそう言えば、近くで聞いてたアタッカーが変な声を出す。
「普通のアタッカーさん達は五層をクリア出来てない。だからレベル5になる資格を得てない…………。って考えるとシックリくるなって」
「……なるほどね。先に行かないとどっちにしろ、これ以上のレベリングは出来ないと」
「そゆこと」
逆に言うと、今世間でレベリングをミスった人も、五層のレベルキャップを利用して濃い経験値を溜めまくってリカバリーも出来ると思う。そんな事を配信に向けて喋る。
「もちろん自己責任ですけど、重り背負ったり、武器縛りとか、色々な方法で自分を追い込んでモンスターと戦ってみると良いかもですね。五層超えないとレベル5になれないなら、それを利用して今まで楽して上げてたレベルの調整が出来るかもです」
その結果ミスって死んでも責任は取れないけどね。
「さて、そんな訳でレオ狩りに行くよ。その後は六層から先に進んで、二人にはずっと紙一重の戦闘を続けてもらう。銅竜までずっとそう。楽な戦いなんて一個もさせない」
こっから先は、お母さんとニクスが強くなる度に、更に強い敵を用意して戦わせる。二人がギリギリ勝てないくらいの奴を用意して、ボコボコにされて倒れるまで戦わせて、その後私が敵を倒す。
そうやって強くなって勝てそうになったら、またもっと強い奴を用意する。階層を進んで強いやつの所に行く。
それを、銅竜の元までひたすら続ける。
「この先はどこかでポーションもドロップするはずだから、とことん無茶出来るよ」
銀級で無茶をしなくて良いように、今のうちに安全な無茶をする。
「じゃぁ、れっつごー☆」
◇
あの時の記憶をなぞるように、獣だった頃の私が殺したモンスターが次々と現れる。
五層を超えて早、三日。
お母さんもニクスもとっくに限界を迎えてるけど、まだまだ無茶をして貰う。
今行ってるレベリングの内容は、取り敢えず私が私のペースでダンジョンを進み、ナイトがお母さんとニクスを無理やり私のペースでキャリーして、私がモンスターに突っ込んで程々に暴れて、お母さんとニクスをモンスターにボコらせる。
もちろんお母さんもニクスも必死に、全力で敵を倒そうとする。惰性でやられたら経験値にならない。
全てを絞り尽くして、あらゆる戦略を駆使し、その上でボロ雑巾の様にされる戦闘。
現在八層の中間くらい。二人ともレベル6後半くらいまで上がってる。もう少しでレベル7に到達出来るはず。私が銅竜に挑んだ時よりはマシな条件だ。
そして、九層到着。
「お、宝箱だ」
ぼろっっっっっぼろになってる二人を引き連れ、九層の階段付近にぽつんと有る大きな宝箱を見付けて近寄る。
取り敢えず蹴飛ばした。
「ミミックじゃないみたいだね。お母さんかニクス、どっちかこれ開ける?」
「……………………」
「………………ん」
精魂尽き果ててる二人の内、ニクスが辛うじて返事をした。意識も朦朧としてるかもしれない。
「はいどうぞ」
見付けた宝箱の前をニクスに譲った。ニクスは簡単な動きで宝箱を開けて、そして中には縮尺がバグってる大きな剣があった。
「大剣……?」
それは所謂、グレートソードと呼ばれる刀剣だった。
グレートソード。ヨーロッパ系の刀剣に於いて特に大型の物をそう呼び、しかし実際にはグレートソードなる分類は存在せず、要するにヨーロッパ系のデッケェ剣はなんとなくグレートソードと呼ぶ風潮があるってだけなのだ。
「…………ニクス、使う?」
「………………おそろ、い」
ああ、うん。お揃いの武器が良いから要らないって事かな。
「……お母さんは?」
聞くと、お母さんは声を出さずに首を横に振った。ふむ、九層ドロップの武器なんだけども、二人とも要らないらしい。
「…………じゃぁ、ナイト要る?」
「わぅん!? わんわんわんわんっ!」
「えっ、あ、要るの!?」
要らないだろうと思ってナイトに聞いて見ると、「いいの!? じゃぁ欲しい!」って感じに凄い乗り気だった。え、どうやって使うの…………。
試しにお口へ咥えさせてみると、嬉しそうに首を振ってブンブンとグレートソードを振り回し始めた。凄い楽しそうである。
「ああ、うん。使えるならなんでも言いや」
0
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる