Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
117 / 153

オブジェクトの使い方。

しおりを挟む


 結論から言うと、ニクス大正解だった。

けむッ!? 臭っ……!?」

「…………草だけに?」

「……………………えッ!? 今のクソつまらないダジャレ言ったの誰!? まさかお母さん!?」

「……しょぼん」

 ニクスの疑問を受けた私は、速攻で壁の外に行って群がるアイビールを吹っ飛ばし、その辺に生えてる草を適当に毟ってインベントリに突っ飲んだ。

 結果、
 

 モクログサ:いぶすと大量の煙を出す魔草。その特徴的な魔力を含んだ煙は、特定のモンスターを遠ざける効果が有る。


 泣きたかった。

 私が初手で、煙も出させずに蒸発させたあの行動が失敗の始まりだったんだ。

 その後も、魔力を奪う為だけに軽く炙る程度の蒼炎をばら蒔いてたのも、もう少し火力が高かったらそれで問題解決してたんだと思うとひたすら泣きたい。

 はい。戦犯は私でした。

 インベントリの説明を見た私は速攻で周囲の草を集めて戻り、とりあえずどんなモンかと防壁の内側でモクログサを燻してみた。

 八歳児の手で握れるだけの束を燻しただけでビックリするくらい煙出た。マジでビックリした。

 それでめちゃくちゃ臭かった。煙いし臭いし最悪だ。盛大に腐らせたカレーをわざわざ加熱したようなバッドスメルが周囲に立ち上って死にそうになった。

 そして、モクログサを燻した結果は--……

「ンギィェェエエエエエッッ!?」

「ゴブォッ!? ブギィ、ィィギィィイイイエエエイイイイイッ!?」

「ボギィィアアグンギィィェェエエエエエエッッッッ!?」

 めっちゃ辛そうな叫び声を上げながら、アイビール達はさぁ~っと消えてった。

 もう、波が引くようにって形容詞すら生ぬるい感じで消えてった。まさに脱兎だっとの如く。シュバッと消えた。

「………………わ、私達の二日間はなんだったと」

「おねーちゃん……」

 哀愁漂う私の背中を、ニクスがポンポンして慰めてくれた。

 階層ギミック。銀級からはそんな要素が発生するのだと理解出来たのは大きいけど、この徒労感はシャレにならない。

 レベリング出来たことを良しとするしか無いけど、正直レベリングなんて後でも出来たしなぁ…………。

「コレからは、どんな物でも一度はインベントリに入れるべきね」

「そだね。……て言うか、これも覚醒者じゃないと気付けなくない? 他にも攻略ルート有るのかな」

「探してみる?」

 どちらにせよ、二層へ行くための階段は探さないと進めない。その道中に謎解きの続きをするくらいなら寄り道とさえ言えないだろう。

「うん、そだね。今は私達しか来れないけど、後々の事を考えれば攻略ルートの開拓は必要だよね」

 後続が楽になれば、巡り巡って私達も楽になる。

 この先も私達が銀級攻略の専任者扱いなんてゴメンだ。後続が銀級のヒートゲージを減らせる環境作りは、私達自身を助けるのと同じ。

「とりあえず、後片付けしちゃおうか。このまま進む訳にもいかないでしょ」

「壁も?」

「壁は……、別に良いかなぁ」

 今の初期地点は私達が寝泊まりする為に、キャンプグッズ等が設置されてる。二日も此処で粘ったからね。

 テントやコットはもちろん、キャンプ用のトイレやシャワーなども片付けていく。冷凍防壁はそのままで、放置してたらダンジョンが勝手に吸収なり分解なりしてくれるだろう。

 素材が勿体無いけど、仕留めて血抜きもせずに凍らせた状態劣悪な素材なんて集めても仕方ない。欲しかったらその辺にウジャウジャ居た生きてるアイビールを仕留め直せば良いんだし。

 片付け終わると、燻してた草の後始末をする。まかり間違って草原大炎上とかなったら私達も困るし。何より臭いし。

 ただ、ハッキリと効果があったので、この先の攻略も考えるとバトルドレスを燻蒸くんじょうしとくべきだろうか。

「おねーちゃん。背に腹は、変えられないんだよ」

「ニクスが賢いこと言ってて辛い……」

 もう少し、ふわふわでぷにぷにだった妹を堪能したかったな……。急速に大人びていくニクスも可愛いけど…………。

 ニクスにたしなめられた私は、火の始末ついでに煙を浴びて臭いを服にたっぷりと付けた。お母さんとニクスも同じようにする。

 これで、無限に湧いて無限に襲って来るアイビールギミックは無効化できる。

 ……………………めっちゃ臭いけどね。なんか鼻が痛くなって来た。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...