116 / 153
いくらなんでも。
しおりを挟む「いくらなんでも、おかしくない?」
そう思い始めたのは、ダンジョンアタックを初めて二日目の昼。
周囲の草を燃やして刈って、どうにか追加で100メートルほど活動領域を増やす事に成功してる私達だけど、しかしそれは、未だに初期地点の防壁を拠点にせざるを得ないって事でもある。
交代で狩り、交代で休み、交代で守りながらも二日、少しずつ進んでは居る。
けど、流石におかしいと思う。
「こんな無理ゲー、私達の他に誰がクリア出来ると?」
まる二日も戦ってる。スキルを利用した堅牢な防壁を築き上げてまで戦ってる。インベントリから大量の物資を吐き出しながら過ごしてる。
こんなの、最低でも覚醒者じゃなきゃ無理だろう。あまりにも高い能力と豊富な物資を要求し過ぎてる。攻略不能と言っても過言じゃない。
「私達は、何か間違えてる? 此処は大規模戦闘が前提の階層だった? それとも攻略法が存在する?」
今までのダンジョンは、まるで「攻略してくれ」と言わんばかりの作りだった。順当に努力をすれば攻略が出来て当たり前。
今も人類が詰まってるのは、種族単位でレベリングを失敗した結果でしか無く、私が私なりの「正しいレベリング」を世間に発表した今ならば、時間さえあれば五層は超えて先に進めるはずだ。
なのな、銀級は一層からコレ? 無限に等しいモンスターが二日も絶えず襲って来る魔境なのか?
いくら銅から銀にランクが上がったからって、限度ってものがある。
私達は、きっと何か凄く重要な事を見逃してる。
「今こそ唸れ、私の知性…………!」
……………………。
…………………………。
………………………………なんも分からーん!
「ダメだ全然分かんない。ちょっと皆しゅーごー!」
流石にこれ以上は不毛だと、私は大声で招集をかける。
食料などは大量に持ち込んでるから大丈夫だし、ポーションもアイビールからドロップしてくれるので問題無い。気力が続く限り戦える。
けど、不毛だ。不毛だよ。アイツらあんなにもっふもふの癖に不毛極まりないね! まったく、なんてハゲ散らかった奴らなんだ。ウサギの風上にも置けないモンスターだ。
「おねーちゃん、どーしたの?」
「何かあったのかしら?」
攻略ローテーションで防壁周辺の警戒をしてたニクスも、狩りに出てたお母さんも、私の大声を聞いて戻って来た。
「いや、あのさ、多分私達なにかすっごい勘違いしてると思う。攻略法見落としてる」
思えばもっと早く気が付けよって話だけど、レベリング自体も必要だったのは間違い無いのでモンスター無限湧きそのものは歓迎してるんだよ。ソロで突っ込む状況なら程よく過酷で良質な経験値が手に入るし。
私もニクスも、防壁の維持がある関係で魔力の伸びも期待出来るし、お母さんは長巻の扱いがどんどんキレてるから技量が良く伸びてるはず。
まぁ私はもう魔力評価Sなんだけど、だからって魔力を疎かにしてレベルアップしたら評価下がるかもだし。
そんな訳で最初はレベリングに熱中しちゃったんだ。今は私がレベル10、二人がレベル9まで上がったので熱から覚めた感じ。「冷めた」じゃない。「覚めた」だ。
「二人とも、何か気が付いた事とか無い?」
「そうねぇ……。アイビールが無限湧きしてるけど、この階層にはアイビールしか居ないのかしら?」
「ふむ……」
なるほど。他のモンスターを探してアイビールと対立させるのか? いや、ダンジョン内でモンスター同士が争うのか? 分からないな。可能性は有るけど確証は無い。可能性としては考えておこうってくらい。
「確かに、ネットの噂では『ウサギ』が居たって情報もあったし、なら他のも正解だった情報が有るのかもね」
「例えば、亀が居たって情報が真実だったなら、亀を探して甲羅の上から探索なんてどうかしら?」
アイビールは高く跳べない。亀のモンスターも自分の甲羅の上を攻撃出来ない可能性は充分に有る。なら、そこを安全地帯として亀の歩みに任せて探索も、割りと現実的なのだろうか?
もしくは、亀の甲羅に下層への階段が有るとか。ダンジョンの意味不明な階段なら、甲羅にあってもおかしくない。だって上階から降りてきたのに、降りきった階段には「上」が無かったりするし。
「………………うん、他のモンスターを探すのは有りかも。私達、速攻で防壁作って引きこもったから、コレがまず間違ってたかも」
本当ならアイビールの大群から逃げて、そこで新しいモンスターに遭遇するってパターンだったのかも知れないな。私達はなまじ能力があったから防衛戦に成功しちゃってるだけで、普通はこうならないもんね。
「……ねぇ、おねーちゃん」
「ん? ニクスも何か思い付いたの?」
他のモンスター探索をメインに切り替えようか、そう舵切りをする寸前にニクスが控え目に手を上げる。
こう言うのは、意見が多ければ多いほど良い物だ。たとえ正解じゃ無かったとしても、それで見えてくるものが有るから。
「ニクスね、思ったんだけど……」
「うんうん、どしたの?」
ニクスは、本当にこんな事を気にして良いのか、そんな不安がチラつく表情だった。
私はどんな意見でも大丈夫だと、正解なんて今は誰も分からないんだからと、ニクスの可愛い背中をぽふぽふ叩いて言葉を促す。
すると、
「なんで、この階層はただの草があんなに魔力たくさんなの………?」
--そう言えば、何でだ?
え、いや、まさか、…………それは、どうなんだ?
言われて気付くが、確かに普通の草が、なんの効果も持たない草むらのオブジェクト的な植物が、なんであんなに魔力たっぷりなんだ?
半径100メートルを焼き払っただけで、レベル9で魔力S評価の私が総魔力量の三割損? いや冷静に考えてオカシイじゃん。
銅級でだって、普通のオブジェクトには大した魔力は宿らない。それが深部に近い階層であってもだ。
モンスター素材じゃなくて、そういった簡単に手に入るオブジェクトを利用してダンジョン周囲の防壁を強化する計画があったらしく、その辺はとっくに調査済みだったんだ。
「……え、じゃぁ何? この草ってもしかして、採取出来るアイテムなの?」
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる