Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
123 / 153

父の五層。

しおりを挟む


「るぅぁぁぁああああ゛あ゛あ゛ッ゛ッ゛!」

「ガラァァァアアアアアアアッ!」

 白い毛並みと赤い目を持つ巨大な獣がバチバチと帯電し、その巨大な前脚を振るう。紙一重で避けては電気にやられると判断した俺はすぐにバックステップで大きく下がった。

 ここは銅級ダンジョン五層。目の前に居るのはサンダーレオと呼ばれる中ボスだ。

 コイツを超えなければ、娘が味わった地獄の本質にすら触れられない。

「紅犬ぅぅぅううっ!」

 憑依に一体。召喚で一体。残りの魔力は召喚した紅犬の巨大化と、俺と紅犬の強化に使う。娘達から散々教わった事ではあるが、スキルとは『軸』と『色』が別判定なので扱いに注意する。

 レオ程とはいかないが、それでも半分程度には巨大化出来た紅犬へ、『紅』の強化を積んでレオと殴り合わせる。

 そこに憑依を強めて強化する度合いを上げた俺が遊撃する。このパターンでコイツを削り切る。

 強化と憑依を強めると、耳と尻尾に留まっていた犬的要素が他にも顔を出し始める。まず指から肘にかけて真っ赤な毛並みに覆われ、獣の様な爪が生える。そして足も同じような変化を迎え、頬にも毛が生え、更に犬歯が肥大して牙になる。

 ファンタジーに於ける『獣人』だろう。人と獣の割合が七対三程か。

 そうなった今の俺は、恐らくレベル一つか二つは上の力が出せる。端末を捨てて正確に確認出来ないが、明らかに身体能力が上がった回数をそらんじると、恐らくはレベル3。

 五層のサンダーレオを相手にして良いレベルじゃないが、それを紅で強化する事でレベル5相当になっているはずだ。これなら戦える。

 紅犬のスキルは、犬を召喚するには大量の魔力を消費するが強化能力は燃費が良いらしい。今はレベル2分のブーストが限界だが、ステータスを上げていけばもっと強くなれるかもしれない。

 強くなりたい。…………切実に、誰よりも強く。

 オレが娘より強ければ、娘が頼られることも無い。自分の人生を自分の好きに出来る。銀級のヒートゲージがどうとか、そんなのは大人の役目だ。なんで八歳の子供が頼られないといけないのか。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛ッ゛ッ゛!」

 一瞬だけ紅犬を操り、レオの背後へ。

 正面に俺、背後へ紅犬が回ったレオは一瞬だけ挙動が止まる。

 そこに付け入るように俺は殴りかかる。武器なんて持ってないから、帯電するレオに対して獣の爪で襲いかかるしかない。

 威勢の良い雄叫おたけびをあげてレオと打ち合う。

 巨体をしならせて帯電する獣と打ち合うには、俺の場合だと紅犬の憑依が必要だった。電気をどうにかするには、身に纏う魔力を強めて干渉力で勝たないとどうにもならない。

 俺の獣腕がレオの前脚と打ち合うたびにビリッと感電して思考が飛びかけるが、紅犬に込めた魔力の抵抗で弱める事が出来ている。

 正直、触ったらアウトって何だこのクソモンスターって思ってたが、今考えるとこうやって魔力に対抗するすべを身に付けないと先に進めない仕様なんだろうな。

 そうして、巨大な獣と殴り合う今、紅犬にレオを襲わせる。背後からくびに噛み付かれては、生物的にはどうしようもない。

「コレでトドメだオラァァァアアッ!」

 紅犬に噛まれて一瞬動きが止まるレオに、俺はチャンスを逃さず爪をレオの眼球へと突き立てる。サンダーレオもモンスターとは言え生物であるならば、目の奥には脳があり、脳が壊れれば生物は死ぬ。

 生き物によっては脳の大きさに違いがある。クマなどは体の割には脳が小さく銃で頭を狙っても殺せない事が多いそうだ。頭蓋が固くて貫通出来ない事も多いのに、頭蓋を超えても脳が小さくて銃撃で潰せるか分からないから。

 しかし、いま俺が突き入れたのは自分の腕であり、

「紅犬ぅうあああああッ!」

 なんなら、頭の中に追加の紅犬を呼び出しても良い。これで終わりだ。


 --ズンッ………………!

 頭の中を紅犬に食い破られ絶命した巨体が崩れ落ち、同時に長時間戦ってた俺も気が抜けてくずおれる。いくら急いでるからと言って、これは多少の休憩が必要だ。

「す、すげぇぇええええええええ!?」

「本当にレオ仕留めちゃったよあの人!」

「アレだろ!? あの人噂のパッパさんだろ!?」

「やべぇぇえ! あの一家全員やべぇぇええええええ!」

 しかし、休憩もしてられないらしい。

 五層はレオのせいで人が詰まる階層であり、つまり人が居るのだ。俺のソロ討伐も見物されていて、戦いが終わった今は俺に殺到しそうな気配も感じる。

 しかし、俺は捕まりたくないし、話す事も特に無い。

「レオは…………」

 考えて、色々と面倒になった俺はこのまま六層へ向かう事にした。

 俺のインベントリにはドロップ品しか入ってない。端末が無い今は何が入ってるのか分からないが、とにかく利用量が少ない。

 そこで、次の階層へ行くのに仕留めたレオを邪魔だから、丸ごとインベントリにしまう事にした。驚くほど純白の毛皮なので、娘と妻に何かプレゼントしてやれるかもしれない。

 インベントリはスキルを経由する。優子の場合は炎が、真緒の場合は霧のような雪が、彩の場合は雷がバチバチと音を立ててアイテムをその場に呼び出す。

 なら、俺は? 紅犬だとどんな挙動になる?

 インベントリ機能を使う気が無かった俺は今まで知らなかったが、たった今知る事になった。

「………………そう言う仕様なのか」

 俺がインベントリへの収納を願うと、レオを仕留める手伝いをしてくれた一匹目の紅犬が大口をあけてレオに食い付き、そのまま「ギャグ漫画か?」と言いたくなる様な挙動でソレを丸呑みにした。

 ちなみにレオの頭の中に召喚した紅犬はとっくに送還してある。あんな場所に置きっぱなしは可哀想だから。

「犬の口……、か。まぁソレ固定では無いんだろうが」

 とにかく、レオは退かした。今にも俺を囲みそうな野次馬を待つ事も無いので、俺はレオの亡骸に隠されていた階段を紅犬と共に降りた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...