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19話
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幸いなことに夜に魔獣が襲ってくることはなかった。それにティアドさんなら昨日の晩には聖都のギルドに報告と救援要請を済ませてくれているはず。なら、今日から2、3日で軍の編成をしてその2日後にはここに救援部隊が到着するはずだ。ならあと5日支えればきっと何とかなる。
朝食後そんなことを考えながら僕は昨日倒した魔獣の肉の分配分を薄切りにスライスしている。ある程度スライスしたら、脂を出来るだけこそぎ落とす。そこまで出来たら、今度は桶に塩水を貯めてそこに漬け込む。これで肉が腐りにくくなるのと、風味がつく。しばらく漬け込んだら風通しの良い日陰に半日から1日干して出来上がりだ。僕が肉を吊るし終わって満足していると、また北の方から騒ぎが聞こえてきた。どうやらまた魔獣のお出ましのようだ。僕は、すぐに家に駆けこむと
「ミーア、今日も来たらしい。行くよ」
ミーアに声を掛け僕が武器の入れてある魔法の鞄を抱える。ミーアもすぐに僕の横に来てくれた。目を合わせて頷き合い北の柵まで走る。
昨日と同じでまだ魔獣は森から出てきていない。それでも森の中でうごめく魔獣は昨日より多く感じる。
「ミーア、基本的には昨日と一緒の作戦で良いと思う。ただ、漆黒の長弓の射程と威力が思ったより大きいから少し早めに射かけるよ」
「ん、あたしの狩弓も思ったより強い。少し早めに射かけられそうよ」
僕たちの新しい弓の性能は素晴らしいけれど、まだ自分の感覚とすり合わせが出来ていない。どうしても前の弓の感覚に引きずられている。普段なら、狩りをしているあいだに調整できるのだけれど、今回はぶっつけ本番なのがつらいところだ。本格的なスタンピード前に調整が終わるといいのだけれど。そんなことを考えていると、ふと剣も新調したんだった、と気付いた。
「ミーア、今回は最後のあたりで少し剣の慣らしをしよう」
「剣の慣らし?」
「弓の感覚も大事だけれど、剣も新調したからね。感覚を少し慣らしておかないといざという時に困ったことになるかもしれない」
ミーアも、そっと頷いてくれた。
探知外なので正確にはわからないけれど、森の中の動きからすると昨日の5割増しくらいだろうか。そんな事を考えながら準備を始める。漆黒の長弓は思ったより射程が長い。感覚的にとてもじゃないけれど届かない距離でさえとてつもない貫通力があった。昨日の5割増しの距離で射てみよう。今の段階なら矢の5本や10本は必要経費だ。戦う準備を終え村の人が準備してくれた軽食をつまみながら魔獣が動き出すのを待つ。
太陽の位置が一番高くなった頃、魔獣が動き出した。僕とミーアは黙って立ち上がる。昨日もそうだったけれども、村の柵の後ろには防衛線として村のみんなが何かしらの武器を携えて待機している。できれば彼らが待機だけで済むように処置するのが理想だ。
魔獣が漆黒の長弓の想定射程に入った。僕は感覚より少し上を狙って射てみた。思ったより射線は落ちず、魔獣の群れの後方、中型の魔獣に直撃した。さすがに矢は貫通はしなかったし、急所に当たったわけでもないので1射で倒すことはできなかったけれど、かなりの深手を負わせたようだ。命中した中型魔獣の動きが急激に鈍くなった。今の1射でなんとなく感覚を修正し、もう1射。今度は別の中型魔獣に射る。今回は頭を狙ってみた。命中。やはり貫通はしないけれど、今回は頭部へ当たったため1射で倒れた。その後小型魔獣を中心に数を減らし、狩弓に持ち替えた。ここからは連射でいかに数を倒すか、ミーアも横で射始めた。十分に数を減らしたところで新しい剣に持ち替え前に出る。残り小型7体、中型1体。まずは小型魔獣に切りつける。僅かな抵抗で魔獣の身体を切り裂く。返す軌道で隣の小型魔獣に切りつける。どちらも1撃で倒せた。ミーアも隣で小型魔獣に切りつけている。思ったより切れ味が良い。良い剣だ。瞬く間に7体の小型魔獣を駆逐し、僕とミーアは中型魔獣に相対する。
「僕が前から初撃を入れる。ミーアは後ろから」
「はい」
相手は中層の中型魔獣グレートベア。1体だけなら試し切りには丁度いい。ミーアが少し距離をとったのを確認して、一気に踏み込む。まずは腕に切りつける”スパン”そんな音が聞こえそうな勢いでグレートベアの左腕の肘から先を切り飛ばす。やはり切れ味が違う。わずかな驚きを感じながら一度距離をとる。グレートベアは痛みに怒り狂い、僕に襲い掛かってくる。そんなスキをミーアが見逃すはずもなく背中から切りつける。痛みにのけ反るグレートベア。当然そんなスキを見せてくれたら僕は首を狙う。ドサリと落ちるグレートベアの頭部。以前使っていた剣とは切れ味が格段に違う。周囲を見回し、戦っている間は近い距離だけに使っていた探知も探知範囲を最大限に広げる。討ち漏らしはなさそうだ。とりあえず、僕たちは使える矢を回収し、そのあとでそれぞれの剣の状態を確認する。僕もミーアも小型魔獣は一刀両断していたし、僕はグレートベアの腕や首を骨ごと断ち切った。普通の鉄の剣なら刃こぼれくらいはしている。それどころか、場合によっては折れたり曲がったりしても不思議はない。まぁそもそもが普通の鉄の剣でグレートベアの腕や首を一刀両断なんて無理な話でもあるけれど。
剣の状態を確認し終えると、倒した魔獣の処理を他の人たちに任せて僕たちは家に戻った。
「弓も剣も大体分かった。特にミスリルコートの剣は予想以上に役に立ちそうだ。ミーアはどう」
「ん、あたしの弓も剣も大丈夫。特に剣はあたしの腕より上な感じ。それでもこれまでの鉄の短剣よりずっといい。あれだけ切っても歪みも刃こぼれの欠片もないんだよ」
僕たちは武器の状態に不安がなくなったので、お茶を飲んで休憩をしていた。僕は、ふと思い出して干しておいた肉を見に行った。わりといい具合になっていたので、回収、小分けして魔法の鞄にしまった。
「ミーア、肉が良い感じに干せてたから魔法の鞄に入れといたからね」
「はーい、でもそれ食べるほどの状態にならないといいなあ」
「じゃあ僕は一回り見回りしてくるね」
「はい、あたしは晩御飯の準備しとく」
「うん、お願い。明日以降のこともあるし、今はできるだけ早めに休もう」
そう言って僕は、見回りに出た。昨日と同じように探知で探りながら森との境目を見回る。うん、1、2体の小型魔獣はいるけれど、集まって襲ってくる感じはない。キリをつけて村に戻ると、ギルべさんと立ち話をしている男性の後ろ姿があった。
「お義父さん、お帰りなさい。聖都での反応はどうでしたか。ギルべさんもお疲れ様です」
そう聖都への連絡係を引き受けてくれた、ミーアの父親、ティアドさんだ。
「ああ、聖都でもスタンピードの兆候だとわかってくれて騎士団の派遣を約束してくれたよ。ただ編成に2日くらいは掛かるそうなので最短でもあと4日は、村の戦力で支える必要がある」
「それでも、騎士団の派遣を約束してもらえたんですね。よかった」
「で、どうだ。昨日、今日も魔獣の群れは襲ってきたんだろ」
「とりあえず、昨日今日は無事に撃退しました」
そう言うと、ギルべさんが横から口を挟んできた。
「とりあえず撃退どころじゃないぞティアド。フェイとミーアの二人でどれだけの魔獣を蹴散らしたと思う」
「まあ、この二人だからな、相当だというのは予想するが、そんなにか」
「おう、凄えのなんのって、まずバカでかい弓でえらい遠間でガンガン魔獣を射ると1射でなんか5、6頭の小型魔獣が倒れるんだぞ。500メルドは離れているのにだ。で、中型魔獣でさえ頭に一撃だ。近寄ってきても、なんか見たことのない狩弓でガンガン狩るし。それに今日は最後に弓をしまったと思ったら、青い剣を二人して振り回して最後の魔獣をあっという間に切り倒しちまったんだぞ」
「ほう、それほどか」
ティアドさんが目を細める。これは怒ってる。多分余裕があるのに弓でなく剣で戦ったのが気に入らないはずだ。
「い、いや、剣は新しいのを買ったので、余裕のあるうちに試しておかないとと思っただけで……」
僕の声は先細りになって消えてしまった。
「あ、そいえば明日の準備しないといかんのだった」
そういってギルべさんが逃亡したあと。
「帰るぞ」
「は、はい」
ティアドさんの一言で帰ることになった。
朝食後そんなことを考えながら僕は昨日倒した魔獣の肉の分配分を薄切りにスライスしている。ある程度スライスしたら、脂を出来るだけこそぎ落とす。そこまで出来たら、今度は桶に塩水を貯めてそこに漬け込む。これで肉が腐りにくくなるのと、風味がつく。しばらく漬け込んだら風通しの良い日陰に半日から1日干して出来上がりだ。僕が肉を吊るし終わって満足していると、また北の方から騒ぎが聞こえてきた。どうやらまた魔獣のお出ましのようだ。僕は、すぐに家に駆けこむと
「ミーア、今日も来たらしい。行くよ」
ミーアに声を掛け僕が武器の入れてある魔法の鞄を抱える。ミーアもすぐに僕の横に来てくれた。目を合わせて頷き合い北の柵まで走る。
昨日と同じでまだ魔獣は森から出てきていない。それでも森の中でうごめく魔獣は昨日より多く感じる。
「ミーア、基本的には昨日と一緒の作戦で良いと思う。ただ、漆黒の長弓の射程と威力が思ったより大きいから少し早めに射かけるよ」
「ん、あたしの狩弓も思ったより強い。少し早めに射かけられそうよ」
僕たちの新しい弓の性能は素晴らしいけれど、まだ自分の感覚とすり合わせが出来ていない。どうしても前の弓の感覚に引きずられている。普段なら、狩りをしているあいだに調整できるのだけれど、今回はぶっつけ本番なのがつらいところだ。本格的なスタンピード前に調整が終わるといいのだけれど。そんなことを考えていると、ふと剣も新調したんだった、と気付いた。
「ミーア、今回は最後のあたりで少し剣の慣らしをしよう」
「剣の慣らし?」
「弓の感覚も大事だけれど、剣も新調したからね。感覚を少し慣らしておかないといざという時に困ったことになるかもしれない」
ミーアも、そっと頷いてくれた。
探知外なので正確にはわからないけれど、森の中の動きからすると昨日の5割増しくらいだろうか。そんな事を考えながら準備を始める。漆黒の長弓は思ったより射程が長い。感覚的にとてもじゃないけれど届かない距離でさえとてつもない貫通力があった。昨日の5割増しの距離で射てみよう。今の段階なら矢の5本や10本は必要経費だ。戦う準備を終え村の人が準備してくれた軽食をつまみながら魔獣が動き出すのを待つ。
太陽の位置が一番高くなった頃、魔獣が動き出した。僕とミーアは黙って立ち上がる。昨日もそうだったけれども、村の柵の後ろには防衛線として村のみんなが何かしらの武器を携えて待機している。できれば彼らが待機だけで済むように処置するのが理想だ。
魔獣が漆黒の長弓の想定射程に入った。僕は感覚より少し上を狙って射てみた。思ったより射線は落ちず、魔獣の群れの後方、中型の魔獣に直撃した。さすがに矢は貫通はしなかったし、急所に当たったわけでもないので1射で倒すことはできなかったけれど、かなりの深手を負わせたようだ。命中した中型魔獣の動きが急激に鈍くなった。今の1射でなんとなく感覚を修正し、もう1射。今度は別の中型魔獣に射る。今回は頭を狙ってみた。命中。やはり貫通はしないけれど、今回は頭部へ当たったため1射で倒れた。その後小型魔獣を中心に数を減らし、狩弓に持ち替えた。ここからは連射でいかに数を倒すか、ミーアも横で射始めた。十分に数を減らしたところで新しい剣に持ち替え前に出る。残り小型7体、中型1体。まずは小型魔獣に切りつける。僅かな抵抗で魔獣の身体を切り裂く。返す軌道で隣の小型魔獣に切りつける。どちらも1撃で倒せた。ミーアも隣で小型魔獣に切りつけている。思ったより切れ味が良い。良い剣だ。瞬く間に7体の小型魔獣を駆逐し、僕とミーアは中型魔獣に相対する。
「僕が前から初撃を入れる。ミーアは後ろから」
「はい」
相手は中層の中型魔獣グレートベア。1体だけなら試し切りには丁度いい。ミーアが少し距離をとったのを確認して、一気に踏み込む。まずは腕に切りつける”スパン”そんな音が聞こえそうな勢いでグレートベアの左腕の肘から先を切り飛ばす。やはり切れ味が違う。わずかな驚きを感じながら一度距離をとる。グレートベアは痛みに怒り狂い、僕に襲い掛かってくる。そんなスキをミーアが見逃すはずもなく背中から切りつける。痛みにのけ反るグレートベア。当然そんなスキを見せてくれたら僕は首を狙う。ドサリと落ちるグレートベアの頭部。以前使っていた剣とは切れ味が格段に違う。周囲を見回し、戦っている間は近い距離だけに使っていた探知も探知範囲を最大限に広げる。討ち漏らしはなさそうだ。とりあえず、僕たちは使える矢を回収し、そのあとでそれぞれの剣の状態を確認する。僕もミーアも小型魔獣は一刀両断していたし、僕はグレートベアの腕や首を骨ごと断ち切った。普通の鉄の剣なら刃こぼれくらいはしている。それどころか、場合によっては折れたり曲がったりしても不思議はない。まぁそもそもが普通の鉄の剣でグレートベアの腕や首を一刀両断なんて無理な話でもあるけれど。
剣の状態を確認し終えると、倒した魔獣の処理を他の人たちに任せて僕たちは家に戻った。
「弓も剣も大体分かった。特にミスリルコートの剣は予想以上に役に立ちそうだ。ミーアはどう」
「ん、あたしの弓も剣も大丈夫。特に剣はあたしの腕より上な感じ。それでもこれまでの鉄の短剣よりずっといい。あれだけ切っても歪みも刃こぼれの欠片もないんだよ」
僕たちは武器の状態に不安がなくなったので、お茶を飲んで休憩をしていた。僕は、ふと思い出して干しておいた肉を見に行った。わりといい具合になっていたので、回収、小分けして魔法の鞄にしまった。
「ミーア、肉が良い感じに干せてたから魔法の鞄に入れといたからね」
「はーい、でもそれ食べるほどの状態にならないといいなあ」
「じゃあ僕は一回り見回りしてくるね」
「はい、あたしは晩御飯の準備しとく」
「うん、お願い。明日以降のこともあるし、今はできるだけ早めに休もう」
そう言って僕は、見回りに出た。昨日と同じように探知で探りながら森との境目を見回る。うん、1、2体の小型魔獣はいるけれど、集まって襲ってくる感じはない。キリをつけて村に戻ると、ギルべさんと立ち話をしている男性の後ろ姿があった。
「お義父さん、お帰りなさい。聖都での反応はどうでしたか。ギルべさんもお疲れ様です」
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「ああ、聖都でもスタンピードの兆候だとわかってくれて騎士団の派遣を約束してくれたよ。ただ編成に2日くらいは掛かるそうなので最短でもあと4日は、村の戦力で支える必要がある」
「それでも、騎士団の派遣を約束してもらえたんですね。よかった」
「で、どうだ。昨日、今日も魔獣の群れは襲ってきたんだろ」
「とりあえず、昨日今日は無事に撃退しました」
そう言うと、ギルべさんが横から口を挟んできた。
「とりあえず撃退どころじゃないぞティアド。フェイとミーアの二人でどれだけの魔獣を蹴散らしたと思う」
「まあ、この二人だからな、相当だというのは予想するが、そんなにか」
「おう、凄えのなんのって、まずバカでかい弓でえらい遠間でガンガン魔獣を射ると1射でなんか5、6頭の小型魔獣が倒れるんだぞ。500メルドは離れているのにだ。で、中型魔獣でさえ頭に一撃だ。近寄ってきても、なんか見たことのない狩弓でガンガン狩るし。それに今日は最後に弓をしまったと思ったら、青い剣を二人して振り回して最後の魔獣をあっという間に切り倒しちまったんだぞ」
「ほう、それほどか」
ティアドさんが目を細める。これは怒ってる。多分余裕があるのに弓でなく剣で戦ったのが気に入らないはずだ。
「い、いや、剣は新しいのを買ったので、余裕のあるうちに試しておかないとと思っただけで……」
僕の声は先細りになって消えてしまった。
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