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29話
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「あ、そういえば」
「どうしたのフェイ」
「10日後に来いって言われたけどさ。いつ頃行けばいいんだろ」
「さあ」
「まあ、こんなのはわからんよな」
しばらく考えて僕が思い付いたのは
「よし、ゲーリックさんに聞こう」
「でも、外出許可でるかなぁ」
そんな話をしているとマリアさんが戻ってきた。
「あら、フェイさん寝てないとダメですよ」
そう言われても、僕としては十分に回復しているので
「もう大丈夫ですよ。僕は回復早いんです」
「そんなわけないでしょう。聖女様の治癒でやっと持ち直したほどに酷かったのですよ」
ふむ、と僕は考えた。僕の特性を知らなければマリアさんのように考えるのは当たり前だろう。では、どうすれば僕の回復を納得してもらえるのか。
そこで僕はマリアさんの目の前から消えて見せた。いや、単純に戦闘中の足さばきで後ろに回っただけなのだけれど。きっとミーアには動きは見えていたと思う。
「え」
呆然とするマリアさんに、後ろから声を掛ける。
「ここにいますよ」
何が起こったのかも分からないようで
「何をしたのですか。ひょっとして魔法」
「まさか、単に速く動いただけです」
「そんなことが出来るのですか」
「似たようなことはミーアにも出来ますよ」
言われてミーアを見るマリアさんに
「まあ、フェイほどじゃないけど」
と頷くミーア。
「やはり英雄となる方達は……」
などとつぶやき始めたマリアさんの前に今度はミーアが立って、一気に高速移動をする。
「また消えた」
そう言いながら後ろを見るマリアさんに少し斜めの方向からツンツンとつつくミーア。
「え、そっちに」
「うん、同じ動きばかりだと魔獣も覚えて先回りするの。だからあたし達は少しずつ変えるんですよ」
マリアさんが何も言えなくなったところで僕が頼む。
「ね、このくらいには回復してるんですよ。外出くらい平気だと思いませんか」
それでも迷っているマリアさんに
「もう上位魔獣の10体や20体倒すのに不足はないです」
そう言って外出許可をもらおうとしていると、部屋の入口から罵声が飛んできた
「あんたらみたいな無謀な奴がいるから死人が絶えないんだ。ちっとは考えて物を言いな」
見ると年齢は50近いのだろう。痩身に黒の修道服を着こなし凛とした雰囲気の女性が立っていた。慌てたのはマリアさんで
「院長、それは」
「マリアあんたは黙ってな。どうせ粋がってケガをしたのを誤魔化して自分を大きく見せようとしているバカだろうが」
「僕たちは別に粋がってるわけじゃ」
「なら聞こうじゃないか。今まで、あんたの言う上位魔獣を何体倒してきたか言ってみな」
「ああ、それ言わせますか」
「言えないだろうが、そんないい加減な……」
「300くらい」
「は、今なんて言った」
「300と言いました」
「お前みたいな子供がひとりで300もの上位魔獣を倒しただとでも言うつもりかい。上位魔獣なんて1体討伐するだけでもどれだけの人間を集めるとおもっているんだ、それを言うに事欠いて300だあ」
「いえ、さすがに一人じゃないですが」
「はん、いい加減なことを言うもんじゃないよ。どうせ討伐隊の後ろにいたってだけだろうが」
「いえ、二人で」
「なにを言っているんだ、おまえ二人でにしたって300もの上位……魔獣を……倒す、なんて……」
何かに気付いたような表情に変わり、僕とミーアの顔を交互に見ると
「あんたらだったのかい。まったくヴォルウェルといいなんで親子2代で他人のために命懸けるのかね」
「父さんを知っているんですか」
「聖都に住んでるあたしらの年代の人間であんたの父親の事を知らない者はいないよ。なによりあたしはあんたの両親とは腐れ縁だったしね。それにしてもあの時のちび助がねえ。で、ラシェルは元気かい」
「母さんは村からの脱出で行方が……」
「そうか。悪いことを聞いてしまったね」
「で、そっちの可愛らしい嬢ちゃんがあんたのパートナーかい」
「ええ、僕の妻のミーアといいます。ところでお名前をお聞きしてもいいですか」
ここでちょっと意外そうな表情を見せた。すぐに表情は消えもとの調子にもどり
「おっと、うっかりしていたね。あたしはパルミラ・フリーゴ。この治療院の院長をしている。さっきも言ったようにフェイの両親とは腐れ縁の知り合いさ」
「どうしたのフェイ」
「10日後に来いって言われたけどさ。いつ頃行けばいいんだろ」
「さあ」
「まあ、こんなのはわからんよな」
しばらく考えて僕が思い付いたのは
「よし、ゲーリックさんに聞こう」
「でも、外出許可でるかなぁ」
そんな話をしているとマリアさんが戻ってきた。
「あら、フェイさん寝てないとダメですよ」
そう言われても、僕としては十分に回復しているので
「もう大丈夫ですよ。僕は回復早いんです」
「そんなわけないでしょう。聖女様の治癒でやっと持ち直したほどに酷かったのですよ」
ふむ、と僕は考えた。僕の特性を知らなければマリアさんのように考えるのは当たり前だろう。では、どうすれば僕の回復を納得してもらえるのか。
そこで僕はマリアさんの目の前から消えて見せた。いや、単純に戦闘中の足さばきで後ろに回っただけなのだけれど。きっとミーアには動きは見えていたと思う。
「え」
呆然とするマリアさんに、後ろから声を掛ける。
「ここにいますよ」
何が起こったのかも分からないようで
「何をしたのですか。ひょっとして魔法」
「まさか、単に速く動いただけです」
「そんなことが出来るのですか」
「似たようなことはミーアにも出来ますよ」
言われてミーアを見るマリアさんに
「まあ、フェイほどじゃないけど」
と頷くミーア。
「やはり英雄となる方達は……」
などとつぶやき始めたマリアさんの前に今度はミーアが立って、一気に高速移動をする。
「また消えた」
そう言いながら後ろを見るマリアさんに少し斜めの方向からツンツンとつつくミーア。
「え、そっちに」
「うん、同じ動きばかりだと魔獣も覚えて先回りするの。だからあたし達は少しずつ変えるんですよ」
マリアさんが何も言えなくなったところで僕が頼む。
「ね、このくらいには回復してるんですよ。外出くらい平気だと思いませんか」
それでも迷っているマリアさんに
「もう上位魔獣の10体や20体倒すのに不足はないです」
そう言って外出許可をもらおうとしていると、部屋の入口から罵声が飛んできた
「あんたらみたいな無謀な奴がいるから死人が絶えないんだ。ちっとは考えて物を言いな」
見ると年齢は50近いのだろう。痩身に黒の修道服を着こなし凛とした雰囲気の女性が立っていた。慌てたのはマリアさんで
「院長、それは」
「マリアあんたは黙ってな。どうせ粋がってケガをしたのを誤魔化して自分を大きく見せようとしているバカだろうが」
「僕たちは別に粋がってるわけじゃ」
「なら聞こうじゃないか。今まで、あんたの言う上位魔獣を何体倒してきたか言ってみな」
「ああ、それ言わせますか」
「言えないだろうが、そんないい加減な……」
「300くらい」
「は、今なんて言った」
「300と言いました」
「お前みたいな子供がひとりで300もの上位魔獣を倒しただとでも言うつもりかい。上位魔獣なんて1体討伐するだけでもどれだけの人間を集めるとおもっているんだ、それを言うに事欠いて300だあ」
「いえ、さすがに一人じゃないですが」
「はん、いい加減なことを言うもんじゃないよ。どうせ討伐隊の後ろにいたってだけだろうが」
「いえ、二人で」
「なにを言っているんだ、おまえ二人でにしたって300もの上位……魔獣を……倒す、なんて……」
何かに気付いたような表情に変わり、僕とミーアの顔を交互に見ると
「あんたらだったのかい。まったくヴォルウェルといいなんで親子2代で他人のために命懸けるのかね」
「父さんを知っているんですか」
「聖都に住んでるあたしらの年代の人間であんたの父親の事を知らない者はいないよ。なによりあたしはあんたの両親とは腐れ縁だったしね。それにしてもあの時のちび助がねえ。で、ラシェルは元気かい」
「母さんは村からの脱出で行方が……」
「そうか。悪いことを聞いてしまったね」
「で、そっちの可愛らしい嬢ちゃんがあんたのパートナーかい」
「ええ、僕の妻のミーアといいます。ところでお名前をお聞きしてもいいですか」
ここでちょっと意外そうな表情を見せた。すぐに表情は消えもとの調子にもどり
「おっと、うっかりしていたね。あたしはパルミラ・フリーゴ。この治療院の院長をしている。さっきも言ったようにフェイの両親とは腐れ縁の知り合いさ」
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