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37話
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朝食を済ませて「夜の羊亭」を出る。今日は僕もミーアも探索向けにフル装備だ。
僕は右腰にミスリルのハンド・アンド・ハーフソード、左腰にオリハルコンコートのブロードソードを下げ黒赤の狩弓を持っている。ミーアも右腰にミスリルの短剣を左腰にオリハルコンコートの短剣を吊るし、白緑の狩弓を手に歩く。武器屋に預けた剣はギルドと聖国が褒賞の一部としてこんな剣に変わってしまった。騒がれるのは不本意なので聖都を少し離れるまでは先日購入したフード付きのコートを羽織る。食料や水は魔法の鞄にたっぷり入れて来て野営も視野に入れた準備だ。そして勇者様のパーティーはすでに発見済。前方500メルド程度の位置で森に向かっている。これだけ離れていれば現状スカウトを聖都に置いてきている彼らが僕たちの追跡に気付くことはないだろう。
勇者様のパーティーが森に入った。僕たちは少し速度を上げて距離を縮める。さすがに森の中で500メルドの距離だと、相手の行動までは把握できない。だから、100メルド程度まで距離を詰めて様子をうかがう。どうやら目的地があるようだ。迷いのない足取りでどんどん奥に進んでいく。勇者様のパーティーは何度か魔獣との戦闘を行いながら奥に進む。今では中位の魔獣の領域、一般に中層と呼ばれる場所まで来ている。今もグレートベアを重戦士が気を引いている間に魔術師が魔法を打ち込み、勇者様が切りつけとどめを刺していた。聖剣ではない。どうやら以前のアドバイスを聞き入れ武器屋で合わせた身の丈に合った武器を使っているようだ。まだ危なげはないが、少々疲労が見られる。と感じたところでアーセルの聖女の癒しによる回復が行われた。バランスも連携もいい。これを見た僕は意図せずそっと呟いた。
「良いパーティーだ。これなら通常時なら深層の入口あたりまでなら行けそうだな。でも……」
僕の想像が正しければ彼らは更に奥に入っていくはずだ。
僕の予想通り勇者様のパーティーは森の奥へ奥へと踏み込んでいった。盾役の重戦士がダメージを負い、魔術師の魔法の効きが悪くなり、勇者様の切りつける剣が2度3度切りつけても魔獣が倒れなくなる。ダメージの回復頻度が増えアーセルの負担も増える。アーセルによる聖女の癒しによる回復が無ければ、とうに破綻しているだろう。でも、聖女の癒しも無限ではない。長くはもたないはず。その時アーセルの横顔が見えた。汗を流し、口元を引き締め聖女の癒しを発動させる。聖女の癒しの光が弱い。そろそろ本当に限界だ、戻れ。僕は祈るような気持ちで見ていた。
どうやら彼らも無理をさとり引き返すようだ。僕はホッと胸をなでおろした。そして改めて探知を彼らの周辺だけでなく広範囲に改めて展開する。その探知に巨大な反応があった。踵を返した勇者様の後ろ、木の陰からゴールデンファングが飛び出してきた。ゴールデンファングの1撃目には間に合わない。勇者様1撃だけ耐えて。そう祈りながら僕はとっさに弓を構える。そこには勇者様を庇い代わりにゴールデンファングの前足の一撃を受け吹き飛ばされた重戦士の姿があった。ギリギリで盾ごと勇者様とゴールデンファングの間に身体をねじ込んだようだ。重戦士の耐久力なら吹き飛ばされてることはあっても、あれくらいなら大きな不都合はないだろう。僕は引き絞った弓で慎重に射る。間違っても勇者様のパーティーメンバーに当たらないように。横ではミーアも弓を引き絞っている。僕とミーアはほぼ同時に射た。2本の矢は狙い違わずゴールデンファングの頭部を射抜いた。すぐに2射目の準備に入る。弓を引き絞ろうとして、僕とミーアは弓を下ろした。
ここに至ってはもはや姿を隠す意味は無い。僕とミーアは、ゆっくりと彼らに近づいていく。
僕は右腰にミスリルのハンド・アンド・ハーフソード、左腰にオリハルコンコートのブロードソードを下げ黒赤の狩弓を持っている。ミーアも右腰にミスリルの短剣を左腰にオリハルコンコートの短剣を吊るし、白緑の狩弓を手に歩く。武器屋に預けた剣はギルドと聖国が褒賞の一部としてこんな剣に変わってしまった。騒がれるのは不本意なので聖都を少し離れるまでは先日購入したフード付きのコートを羽織る。食料や水は魔法の鞄にたっぷり入れて来て野営も視野に入れた準備だ。そして勇者様のパーティーはすでに発見済。前方500メルド程度の位置で森に向かっている。これだけ離れていれば現状スカウトを聖都に置いてきている彼らが僕たちの追跡に気付くことはないだろう。
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「良いパーティーだ。これなら通常時なら深層の入口あたりまでなら行けそうだな。でも……」
僕の想像が正しければ彼らは更に奥に入っていくはずだ。
僕の予想通り勇者様のパーティーは森の奥へ奥へと踏み込んでいった。盾役の重戦士がダメージを負い、魔術師の魔法の効きが悪くなり、勇者様の切りつける剣が2度3度切りつけても魔獣が倒れなくなる。ダメージの回復頻度が増えアーセルの負担も増える。アーセルによる聖女の癒しによる回復が無ければ、とうに破綻しているだろう。でも、聖女の癒しも無限ではない。長くはもたないはず。その時アーセルの横顔が見えた。汗を流し、口元を引き締め聖女の癒しを発動させる。聖女の癒しの光が弱い。そろそろ本当に限界だ、戻れ。僕は祈るような気持ちで見ていた。
どうやら彼らも無理をさとり引き返すようだ。僕はホッと胸をなでおろした。そして改めて探知を彼らの周辺だけでなく広範囲に改めて展開する。その探知に巨大な反応があった。踵を返した勇者様の後ろ、木の陰からゴールデンファングが飛び出してきた。ゴールデンファングの1撃目には間に合わない。勇者様1撃だけ耐えて。そう祈りながら僕はとっさに弓を構える。そこには勇者様を庇い代わりにゴールデンファングの前足の一撃を受け吹き飛ばされた重戦士の姿があった。ギリギリで盾ごと勇者様とゴールデンファングの間に身体をねじ込んだようだ。重戦士の耐久力なら吹き飛ばされてることはあっても、あれくらいなら大きな不都合はないだろう。僕は引き絞った弓で慎重に射る。間違っても勇者様のパーティーメンバーに当たらないように。横ではミーアも弓を引き絞っている。僕とミーアはほぼ同時に射た。2本の矢は狙い違わずゴールデンファングの頭部を射抜いた。すぐに2射目の準備に入る。弓を引き絞ろうとして、僕とミーアは弓を下ろした。
ここに至ってはもはや姿を隠す意味は無い。僕とミーアは、ゆっくりと彼らに近づいていく。
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