僕が守りたかったけれど

景空

文字の大きさ
39 / 166

39話

しおりを挟む
 僕たちは勇者様のパーティーの案内で森の深層に踏み込んでいく。途中あまりにガチャガチャとうるさい戦士のフルプレートに皮をかまして当たり音を抑え。大きな声でしゃべろうとする勇者様と魔術師に何度も声を抑えるように注意をする。足元のしたばえの魔獣の痕跡を説明し追跡するもしくは避けるための方法の基礎を説明する等しながら結界を壊したと言っている場所を目指した。常に僕もミーアも探知を最大で展開し避けられる魔獣は避け、そうでないものも最低限の接触で済むように移動をする。
「フェイ殿、貴殿らはいつもこのような動きをしておられるのか」
「僕たちは狩人です。基本的に魔獣を狩ることで生計を立てていますが、狩っても持ち運べる量には限度があります。そしてそれを超える量を狩ってもリスクばかりでメリットがありませんから。それに今日は特に、勇者様が壊してしまったという結界の状態を見るのが目的なので、余計なことをして手間を増やしたくありません」
 そうこうしているうちに、夕暮れ時になってきたため僕は野営の準備を提案した。
「そろそろ、みなさんは足元が怪しくなってきたと思いますし、夜は魔獣の活動も活発になりますのでこのあたりで野営としたいと思います」
野営と聞いてアーセルを除く勇者様のパーティーメンバーはその場に座り込んでしまった。どうやら朝からの魔獣との戦闘と僕たちと合流した後の繊細な移動に体力的にも精神的にも疲労してしまったようだ。
 これまでの勇者様のパーティーの動きを見て、勇者シリーズを装備した勇者様の火力による力押しでこれまできたんだろうなぁと予測できているため、一応念のためという前振りの上で、森の深層における野営での心構えや注意事項を説明する。アーセルは知っていたはずなんだけれど、説明してなかったのかな。
「ミーア、勇者様のパーティーは疲労が大きい。明日以降の事もあるから夜の見張りは僕とミーアでしよう」
「うん、あの状態の人たちには任せるのはちょっと怖いね」
僕は勇者様に近づき
「勇者様、夜の見張りは僕とミーアで引き受けます。そちらのパーティーメンバーを十分に休ませてください」
「な、いや、フェイウェル殿はともかくミーア殿は女性ではないか。そのような方に見張りを任せて我らが休むなど」
僕は溜息を我慢できず、疲労感をおぼえてしまった。そこで僕はアーセルを呼ぶことにして声を掛ける。
「アーセル」
「なにフェイ」
微妙に嬉しそうな表情で応えたアーセルに
「夜の見張りは、僕とミーアでやる。勇者様を説得して休ませておいて」
「え」
きょとんとするアーセルを置いて僕はミーアのもとに戻った。

 簡易のテントを張り、例によって
「じゃぁミーアは最初の3時間頼むね」
「アイアイ。おやすみフェイ」
僕たち狩人の祝福持ちは短い時間でも休息を取れば十分に回復ができる。僕も3時間も休めば十分。ミーアと交代後はテントの外で木に寄りかかり探知に魔獣が入ってこないか、入ってきたらこちらに近づいてこないかを監視する。幸いなことに1度だけ探知範囲に入った魔獣がいただけで近づいてくるものはいなかった。そろそろ明るくなってきたのでミーアに声を掛ける。勇者様のパーティーを見るとアーセルが勇者様のパーティーメンバーを起こして回っていた。向こうには口を出さなくてもいいだろう。
 夜の間魔獣が寄り付かないようにするため消してあった火を起こす。低位の魔獣なら火を恐れて近づかないけれど、これほどの深層に住む魔獣は逆に火に寄ってくるための処置だ。干し肉と乾燥野菜を鍋に入れ水で煮込み簡単なスープを作る。十分に煮えたところでミーアに声を掛けた。
「ミーア。朝食出来たよ」
僕とミーアは、スープに黒パンを浸しながら一緒に朝食を済ませた。
キャンプを撤収し僕達は勇者様のもとへ声を掛けに行く。
「勇者様、よく休まれましたか」
「ああ、フェイウェル殿とミーア殿か。うむ、メンバーともどもしっかりと休ませてもらった」
「朝食は」
「今済ませたところだ、メンバーが今片付けをしてくれておる」
「では、片付けが終わりしだい出発します。昨日聞いた感じですと、今日の昼前には結界のあった場所に到着できると思います。そこで結界の状態を確認したらすぐに離脱します。できれば今日中に深層と中層の境目くらいまで戻りたいところです」

 そこから先僕もミーアも弓を魔法の鞄にしまう。それを見た勇者様が聞いてきた。
「なぜ弓をしまわれるのか」
「見てわかりませんか。ここからは森が密集しています。つまり弓の射線が十分に通りません。なので僕たちも剣で魔獣を捌くことになります。そのためです」
「フェイウェル殿が強いことは知っておるが、ミーア殿も剣を使われるのか」
「ミーアも強いですよ。スタンピードでは背中をまかせて乗り切った戦友でもあります。それはご存知でしょう」
「話は聞いているが、女性が剣を……」
「無駄話は、ここまでにしましょう。時間がもったいないです」
近接戦闘中心となれば探知範囲の違いはあまり問題にならない。単純に剣技と力の問題に収束する。もちろん探知自体の有無は大きい。あれば後ろからの接近も明確に近くできる。人間に存在する死角がなくなるのだからそれは大きい。故に探知持ちに奇襲を行うには対抗する隠蔽を探知より高レベルで保持するしかない。そして高位の魔獣とは言えこのあたりにはそこまでのものはいない。結果として
「ミーアは右を。僕は左をやる」
「はい」
ミーアは新しくしたオリハルコンコートの短剣を振るい、上位魔獣の四肢を断ち目に突き入れる。僕はオリハルコンコートのブロードソードで上位魔獣の首を一閃する。
最低限の魔獣との戦闘を数回こなしながら予想通り昼前には結界のあった場所にたどり着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...