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55話
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「久しぶりだな。ハモンド卿、ハモンド夫人」
そこにいたのはリチャード・アレックス・グラハム辺境伯その人だった。それでも、僕たちは知らない顔をする。僕たちはファイとミューであってハモンドなんて名前ではないのだから。
「無視するとは連れないじゃないか。なあスタンピードの英雄」
僕が手元のサンドウィッチを食べ終えたうえで
「どなたか存じませんが、人違いではないですか」
辺境伯を訪れるつもりはあったが、こんなところで堂々と声を掛けられても困る。
「いやいや、とぼける必要はないだろう。フェイウェル・ハモンド卿、ミーア・ハモンド夫人」
「その2人の名前なら聞いたことがあります。スタンピードを抑え込んだ英雄でありながら魔獣の森深くの結界を破壊したという重犯罪者ですね。そんな2人と同一人物とするということは僕たちを捕縛でもするつもりですか」
ここまで言ってグラハム伯は気づいてくれたらしい。
「む、すまんな。似てはいるが別人だな。人違いだったようだ。許せ」
「わかっていただけたのでしたら良いです。あのような犯罪者と認識されては命がいくつあっても足りませんからね」
「しかし、彼らの罪は冤罪との噂もあるがな」
「さあ。たとえ冤罪でも国家に罪人として認定されてしまえば、断罪されるのでしょう。となれば冤罪であるかどうかは関係ないですね。国というものにはそれだけの力があります。それを覆すにはそれを超える力が必要ですが、普通は無理ですからね。ま、その2人聖国外に逃げたらしいって話は聞きましたので聖国はスタンピードを抑え込める戦力を国外に放出したということにもなるんでしょうけどね」
僕の言葉にグラハム伯の反応があった。
「なるほど、国からの冤罪には英雄でさえ抵抗できないが、それは同時に国の重要な戦力を外部に提供することになるというわけだな。我々も気をつけることにしよう」
そこまで言ったところで、ふと気づいたようにグラハム伯が僕たちに聞いてきた
「そういえばお前たちの名前を聞いてなかったな。俺は辺境伯、リチャード・アレックス・グラハムだ」
「僕はファイといいます辺境伯」
「あたしはミューです」
「ファイとミューか。これも縁だ。よかったら俺の宿で少し話をしないか」
僕とミューは小さく溜息をつき
「わかりました。お供いたします」
グラハム伯に連れていかれたのはやはり”辺境の英雄亭”。そこの最上級の部屋でグラハム伯と向かい合って座っている。
「で、あれは冤罪なんだな」
いきなり核心をついてくる伯に、僕は諦め
「まあ、冤罪というか無理やりすげ替えというか……」
簡単に事情を説明した。それに対する伯の反応は
「まったく度し難いバカ者ばかりだな。それでお前達は、これからどうするつもりなんだ」
「とりあえず、この街でファイとミューの名前で冒険者登録しました。しばらくはここを拠点に地道に活動しようと思ってます」
「ふむ、何級に登録されたんだ」
「7級ですね」
「はあ。お前達なら1級にでもできるだろうが」
「いえ、そんな上級に登録したら悪目立ちするじゃないですか。現状僕たちは後ろ盾の居ない単なる冒険者ですからね。少しづつ実績を積んで力をつけるのが目的ですから」
「で、レッドジャイアントの討伐依頼を受けたと」
やっぱりか。というのが僕の感想だった。ここにグラハム伯がいる時点でそうではないかと思ったのだ。
「あの依頼はあなただったんですね。グラハム伯」
そこにいたのはリチャード・アレックス・グラハム辺境伯その人だった。それでも、僕たちは知らない顔をする。僕たちはファイとミューであってハモンドなんて名前ではないのだから。
「無視するとは連れないじゃないか。なあスタンピードの英雄」
僕が手元のサンドウィッチを食べ終えたうえで
「どなたか存じませんが、人違いではないですか」
辺境伯を訪れるつもりはあったが、こんなところで堂々と声を掛けられても困る。
「いやいや、とぼける必要はないだろう。フェイウェル・ハモンド卿、ミーア・ハモンド夫人」
「その2人の名前なら聞いたことがあります。スタンピードを抑え込んだ英雄でありながら魔獣の森深くの結界を破壊したという重犯罪者ですね。そんな2人と同一人物とするということは僕たちを捕縛でもするつもりですか」
ここまで言ってグラハム伯は気づいてくれたらしい。
「む、すまんな。似てはいるが別人だな。人違いだったようだ。許せ」
「わかっていただけたのでしたら良いです。あのような犯罪者と認識されては命がいくつあっても足りませんからね」
「しかし、彼らの罪は冤罪との噂もあるがな」
「さあ。たとえ冤罪でも国家に罪人として認定されてしまえば、断罪されるのでしょう。となれば冤罪であるかどうかは関係ないですね。国というものにはそれだけの力があります。それを覆すにはそれを超える力が必要ですが、普通は無理ですからね。ま、その2人聖国外に逃げたらしいって話は聞きましたので聖国はスタンピードを抑え込める戦力を国外に放出したということにもなるんでしょうけどね」
僕の言葉にグラハム伯の反応があった。
「なるほど、国からの冤罪には英雄でさえ抵抗できないが、それは同時に国の重要な戦力を外部に提供することになるというわけだな。我々も気をつけることにしよう」
そこまで言ったところで、ふと気づいたようにグラハム伯が僕たちに聞いてきた
「そういえばお前たちの名前を聞いてなかったな。俺は辺境伯、リチャード・アレックス・グラハムだ」
「僕はファイといいます辺境伯」
「あたしはミューです」
「ファイとミューか。これも縁だ。よかったら俺の宿で少し話をしないか」
僕とミューは小さく溜息をつき
「わかりました。お供いたします」
グラハム伯に連れていかれたのはやはり”辺境の英雄亭”。そこの最上級の部屋でグラハム伯と向かい合って座っている。
「で、あれは冤罪なんだな」
いきなり核心をついてくる伯に、僕は諦め
「まあ、冤罪というか無理やりすげ替えというか……」
簡単に事情を説明した。それに対する伯の反応は
「まったく度し難いバカ者ばかりだな。それでお前達は、これからどうするつもりなんだ」
「とりあえず、この街でファイとミューの名前で冒険者登録しました。しばらくはここを拠点に地道に活動しようと思ってます」
「ふむ、何級に登録されたんだ」
「7級ですね」
「はあ。お前達なら1級にでもできるだろうが」
「いえ、そんな上級に登録したら悪目立ちするじゃないですか。現状僕たちは後ろ盾の居ない単なる冒険者ですからね。少しづつ実績を積んで力をつけるのが目的ですから」
「で、レッドジャイアントの討伐依頼を受けたと」
やっぱりか。というのが僕の感想だった。ここにグラハム伯がいる時点でそうではないかと思ったのだ。
「あの依頼はあなただったんですね。グラハム伯」
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