60 / 166
60話
しおりを挟む
結局模擬戦を行うことになった。そのため、今はギルドの管轄する郊外の闘技場に来ている。半径おおよそ100メルドの闘技場で、僕が勇者様と決闘をしたのと同じ結界が張られている。通常の模擬戦では木剣をつかうので、ここまでの準備は不要なのだけれど、今回の場合は相手に魔術師がいるため、ここを使うことになった。そして、このため武器も当然のようにすべて真剣を使う。僕たちももう十分に稼いでいるので本来の僕たちの愛剣を腰に吊るしている。僕はオリハルコンコートのブロードソードとミスリルのハンド・アンド・ハーフソード、ミューはミスリルの短剣とオリハルコンコートの短剣だ。相手もさすがに1級冒険者パーティだけあって装備が充実している。戦士職の2人はどちらもミスリルコートのフルプレートに盾は、あれはミスリルかな。スカウトの2人はミスリルのナイフにハードレザーアーマーに要所にミスリルのプレートで補強を入れてある。魔術師と僧侶は布装備だけれど、あれは祝福で強化している感じだ。魔法の発動体もエルダートレントのスタッフや見たことの無いような特殊な杖を持っている。そこまで観察してから僕はミューに話しかける。
「向こうは重装備の戦士が2人いるから、多分その2人が足止めをしてきて、その間に魔法を飛ばしてくるんだろうね」
「そうね。で、そっちに目が行っている間にスカウトが後ろに回ってくる感じかな」
「足で前衛を抜いていきなり後衛を叩いてもいいんだけど。力試しだから正面から叩き潰そうか」
「ファイ、悪い顔してる」
「そりゃそうだよ、本来なら必要もない事をするんだから。少しは意趣返しをしたい」
そんな話をしているとホセさんから声が掛かった。
「集まってくれ」
三々五々集まる2パーティー9人と僕たち2人。
「ルールを確認する」
ぐるりと見回しながら言葉を繋ぐホセさん。
「天の剣とグランの翼の合同パーティーとファイ、ミューの2人の模擬戦。武器も魔法も使い放題。どちらかが全員戦闘不能になった時点で終了だ。この闘技場では結界により、もし死んでも勝負終了後には蘇生するから全力でやって大丈夫だ。またファイとミューの事情により観客は入れていない。以上、質問はあるか」
誰も口を開かない。簡単明確なルールだ。
「無いな。では位置につけ」
僕とミューは闘技場の中央当たりに僕がやや前に並んで立つ。僕たちの正面30メルド程の距離をおいてウィレムさんとイジドールさんが盾を掲げて立っている。他の7人はその後ろ15メルド程の位置でそれぞれ構えている。さすがに1級冒険者パーティー、布陣にはスキがない。けれど、僕たちはその布陣ごと食い破るつもりでいる。お互いの布陣が終わったのを見届けホセさんが号令をかける。
「では、双方全力を尽くすように。始め」
合図とともにウィレムさんとイジドールさんが駆け寄ってくる。前衛の戦士職が僕たちの動きを制し後衛の火力で削る教科書通りの素晴らしい動きだ。後衛を見やるとスカウトの2人が隠蔽を発動して両サイドに走るのが見えた。どうやら僕には効果がないようだ。けれどミューはどうだろう。
「後方でスカウト2人が動き始めたよわかるかな」
「だめ。あたしには発見できない」
「わかった。とりあえず探知を10メルドくらいで展開しておこうか」
話ながら僕たちはゆっくりと歩を進める。後方の魔術師から火の玉が飛んできた。ファイアボールの魔法だ。僕はオリハルコンコートのブロードソードを一閃し、魔法の中心を切り霧散させた。天の剣とグランの翼に動揺が走るのを感じながら、僕たちはウィレムさんとイジドールさんに向かって走る。2人は盾を構え身体をその陰に隠す。とは言え重装歩兵のタワーシールドとは違い完全に隠れるわけではない。そのうえ彼らの重装備では僕たちの速さにはついてこれない。僕とミューは、初撃を敢えてその盾に強く叩きこみ、その反動も利用してそこから一気に斜め前に入り込む。戦士の彼らには僕たちは消えたように見えたことだろう。死角からそれぞれが首を掻き切る。これで前衛の盾は排除した。次は後衛の魔術師と僧侶と視線を向けたところで僕の探知に反応がある。スカウトが後ろから迫ってきているのを感知したのだ。僕は走る速度を調整してミューを先に行かせ、振り返りざまに両手の剣を振るう。上位魔獣さえ両断する剣撃により2人のスカウトはそこに倒れた。そこまで終わらせ僕が振り向いたところに、ようやく魔術師から2回目の魔法が飛んできた。狙いはミューのようだ。ミューもオリハルコンコートの短剣を一振りし魔法を散らしている。そして、後衛の護衛として残されていた軽戦士を1刀のもときりすて、残る魔術師と僧侶に短刀を突き付けていた。
僕もそこに歩み寄り
「勝負ありだと思うのですけど」
と降伏を求めると
「強いのは分かった。切らないでくれ」
と1人の僧侶が手を挙げた。僕はそっとミューの前に出て、剣を下げ様子をみる。そこに魔術師がファイアボールの魔法を放ってきた。
「甘いんだよ、決着がつくまでに剣を下ろすなんてな」
爆風がおさまり視界が開けたところで
「まあ、そんなことだと思いましたよ」
僕の言葉に呆然とする魔術師に僕とミューが剣を同時に突き刺した。残った僧侶2人は
「バカな、直撃だったはず……」
その言葉を最後に僕とミューの剣が2人の首を薙いだ。
「向こうは重装備の戦士が2人いるから、多分その2人が足止めをしてきて、その間に魔法を飛ばしてくるんだろうね」
「そうね。で、そっちに目が行っている間にスカウトが後ろに回ってくる感じかな」
「足で前衛を抜いていきなり後衛を叩いてもいいんだけど。力試しだから正面から叩き潰そうか」
「ファイ、悪い顔してる」
「そりゃそうだよ、本来なら必要もない事をするんだから。少しは意趣返しをしたい」
そんな話をしているとホセさんから声が掛かった。
「集まってくれ」
三々五々集まる2パーティー9人と僕たち2人。
「ルールを確認する」
ぐるりと見回しながら言葉を繋ぐホセさん。
「天の剣とグランの翼の合同パーティーとファイ、ミューの2人の模擬戦。武器も魔法も使い放題。どちらかが全員戦闘不能になった時点で終了だ。この闘技場では結界により、もし死んでも勝負終了後には蘇生するから全力でやって大丈夫だ。またファイとミューの事情により観客は入れていない。以上、質問はあるか」
誰も口を開かない。簡単明確なルールだ。
「無いな。では位置につけ」
僕とミューは闘技場の中央当たりに僕がやや前に並んで立つ。僕たちの正面30メルド程の距離をおいてウィレムさんとイジドールさんが盾を掲げて立っている。他の7人はその後ろ15メルド程の位置でそれぞれ構えている。さすがに1級冒険者パーティー、布陣にはスキがない。けれど、僕たちはその布陣ごと食い破るつもりでいる。お互いの布陣が終わったのを見届けホセさんが号令をかける。
「では、双方全力を尽くすように。始め」
合図とともにウィレムさんとイジドールさんが駆け寄ってくる。前衛の戦士職が僕たちの動きを制し後衛の火力で削る教科書通りの素晴らしい動きだ。後衛を見やるとスカウトの2人が隠蔽を発動して両サイドに走るのが見えた。どうやら僕には効果がないようだ。けれどミューはどうだろう。
「後方でスカウト2人が動き始めたよわかるかな」
「だめ。あたしには発見できない」
「わかった。とりあえず探知を10メルドくらいで展開しておこうか」
話ながら僕たちはゆっくりと歩を進める。後方の魔術師から火の玉が飛んできた。ファイアボールの魔法だ。僕はオリハルコンコートのブロードソードを一閃し、魔法の中心を切り霧散させた。天の剣とグランの翼に動揺が走るのを感じながら、僕たちはウィレムさんとイジドールさんに向かって走る。2人は盾を構え身体をその陰に隠す。とは言え重装歩兵のタワーシールドとは違い完全に隠れるわけではない。そのうえ彼らの重装備では僕たちの速さにはついてこれない。僕とミューは、初撃を敢えてその盾に強く叩きこみ、その反動も利用してそこから一気に斜め前に入り込む。戦士の彼らには僕たちは消えたように見えたことだろう。死角からそれぞれが首を掻き切る。これで前衛の盾は排除した。次は後衛の魔術師と僧侶と視線を向けたところで僕の探知に反応がある。スカウトが後ろから迫ってきているのを感知したのだ。僕は走る速度を調整してミューを先に行かせ、振り返りざまに両手の剣を振るう。上位魔獣さえ両断する剣撃により2人のスカウトはそこに倒れた。そこまで終わらせ僕が振り向いたところに、ようやく魔術師から2回目の魔法が飛んできた。狙いはミューのようだ。ミューもオリハルコンコートの短剣を一振りし魔法を散らしている。そして、後衛の護衛として残されていた軽戦士を1刀のもときりすて、残る魔術師と僧侶に短刀を突き付けていた。
僕もそこに歩み寄り
「勝負ありだと思うのですけど」
と降伏を求めると
「強いのは分かった。切らないでくれ」
と1人の僧侶が手を挙げた。僕はそっとミューの前に出て、剣を下げ様子をみる。そこに魔術師がファイアボールの魔法を放ってきた。
「甘いんだよ、決着がつくまでに剣を下ろすなんてな」
爆風がおさまり視界が開けたところで
「まあ、そんなことだと思いましたよ」
僕の言葉に呆然とする魔術師に僕とミューが剣を同時に突き刺した。残った僧侶2人は
「バカな、直撃だったはず……」
その言葉を最後に僕とミューの剣が2人の首を薙いだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる