僕が守りたかったけれど

景空

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62話

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 西門に集合した僕たちは、ギルドからの情報にあるキュクロプスアンデッドの出没地点に向けて移動している。西に向かう街道を徒歩で3日、そこから森に入り森の深層へ約3日。目的地までの移動時間をおよそ6日と見積もっている。

 街道での移動は魔獣との遭遇もなく特に問題なかった。
「ここから森に入ります。1級冒険者パーティーの皆さんには言うまでもないとは思いますが、出来るだけ魔獣との遭遇を避けるように移動したいと思います。ですから大きな音や、におい、夜の火には厳重に注意してください」
僕の言葉に当然のことと頷き返してくる天の剣、グランの翼のメンバー、スカウト2人が交互に先行してルートの安全を確保すると言うので一応は従うことに。それでも探知は最大範囲で展開し、魔獣の痕跡を確認しつつ移動する。探知に魔獣の反応があった時には魔獣の痕跡を見つけたという言い訳をしつつ、ルートを変更させたりしながら目的の場所へと向かった。夜の見張りについては、僕たちも担当すると言ったのだけれど、僕たちの消耗を抑えるのが目的だし、人数も十分にいるからと外された。夜に僕かミーアが見張りについていないのは初めてのため、少々不安を感じる。けれど役割分担ということで表立っての見張りからは外れつつ、時々探知だけ展開して過ごすことにした。
「ここ、新しい魔獣の移動した痕跡がある。ルートを少し南寄りにしたほうがいい」
僕とミューが時々指摘すると
「なんでこんな痕跡がわかるんだ」
狩人の祝福によるものだとは言えず、森での狩りを行っているうちに覚えたことにするしかなかった。それでも、順調に移動し目的の場所に到着し、周囲の探索を行う。
「上位魔獣が食い散らかされているのを見るのは初めてだ」
キュクロプスアンデッドの痕跡を探し始めて半日。上位魔獣が複数食い散らかされている現場に遭遇した。ウィレムさんの言葉はメンバーの共通の感想。
「上位魔獣よりさらに上ってのは本当なんだな。なあ、本当に発見したら俺たちは離脱していいのか」
どうやら少し気が咎めるらしい。
「ええ、僕たちは色々隠したいこともあります。ですからむしろ離れていただいたほうが全力を出せますので」
「てことは模擬戦はやっぱり全力じゃなかったんだな。まあそうじゃないかとは思っていたけど」
イジドールさんが残念そうな、それでも納得したような表情でつぶやいた。それについて僕たちは聞こえないフリをするしかない。
 そんな話をしながらも移動していると探知に反応があった。おそらくこれがターゲットのキュクロプスアンデッドだろう。風下から徐々に近づくようにメンバーを誘導をする。そして”見えた”およそ100メルド先にキュクロプスアンデッドがちょうど食事中だ。ミューも気づいているようだけれど、他のメンバーはまだ気づいていない。そこでウィレムさんとイジドールさんの背中をチョイチョイとつつき指さす。一瞬声を上げそうになった2人だけれどさすがに1級冒険者だけあって声は抑えてくれた。そこからはハンドサインと口真似だけで意思疎通を行う。
 僕が風下を示すと、うなづいて天の剣とグランの翼はそちらに去っていった。
キュクロプスアンデッドは残念ながら特定のルートを移動する魔獣ではないので罠を使うのは難しい。そこで久しぶりに僕たちは狩弓を持ち出した。初撃だけ弓で入れてその後、剣で戦う。これは街を出る前の夜のうちにミューを打ち合わせをして決めていた。
 探知で天の剣とグランの翼が十分に離れたことを確認したところで僕とミューは顔を見合わせ頷く。ゆっくりと弓を引き、放つ。
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