70 / 166
70話
しおりを挟む
僕たちは今残された森の近くで魔獣の様子を見ている。サポート部隊として騎士団1部隊がついてくれている。
「ああ、結構森から溢れて来てますね」
なぜか自らサポートについてくれているルーカス騎士団長に声を掛けた。
「そうですね、まだスタンピードには猶予はありそうですが」
「まだ、森から溢れただけで街にむかってないですもんね」
ミューもそのあたりは理解してる。
「あの、ひょっとしてお2人は、スタンピードもご経験があるのですか」
僕もミューもその質問には答えることができない。なので
「冒険者の過去を詮索するのはタブーですよ」
と指摘して誤魔化す。そして
「溢れてきているのは、概ね中位魔獣。上位魔獣は……ああ2体ほどいますね。ミューあれからやろうか」
「うん。競争」
「よし」
僕たちは新調した剣を抜いた。僕は右手にブロードソードを左手にハンド・アンド・ハーフソードを、ミューは以前は短剣を使っていたけれど、今では両手に90セルチ程の片手剣を装備している。すべてが金色に輝くオリハルコンの剣だ。
「ゴー」
僕たちは2体の上級魔獣目指し駆け出した。途中の邪魔な中級魔獣をすれ違いざま首を飛ばし、胴を断ち殲滅しながら駆ける。目指すは2体の上位魔獣キュクロプス。先にたどり着いたのはやはり上位の祝福持ちの僕。1年前ならば、討伐にそれなりの手数を必要とした上位魔獣だったけれど、今の僕たちの力ならどうだろう。一気に接近し、右手のオリハルコンブロードソードを振るう。ほとんど抵抗を感じることなく上半身と下半身を泣き別れにすることが出来た。僅かに遅れミューが防御しようとした腕ごと首を飛ばすのが見えた。
「ふふ、僕の勝ちだね」
「ちぇえ、ファイが露払いしながら走ってくれたから勝てると思ったんだけどなあ」
そんな雑談をしながらゆっくりと騎士団の元に戻る。
「あ、あの今何をされたのですか」
ルーカス騎士団長が夢でも見たかのように呆然と聞いてきた。
「何って見ていたでしょう。魔獣を剣で切り飛ばしてきただけですよ」
ミューの答えにルーカス騎士団長は更に困惑を深めたようだ。
「上位魔獣の首とか胴っていうのは、あんな簡単に切り飛ばせるものなのですか」
「まあ、さすがに今のレベルになったのは師匠の指導があったからですね」
「さすがは剣聖ブランカということですか」
「それ以前だとさすがに上位魔獣を倒すのに5手くらいは必要でしたから」
「もはや何も言いません。剣聖ブランカがあなた方を万の軍勢に勝ると言い、グラハム伯が強力な援軍と呼んだわけが分かりました。今後のサポートはお任せください。あなた方が存分に動けるよう全力を尽くさせていただきます」
「ルーカス騎士団長、僕たちはしがない冒険者です。そんな畏まらないでください」
ルーカス騎士団長は困ったような顔をしつつ
「わかりました。しかし、せめて私をルーカスと呼んでください」
また面倒な予感がしたけれど、ここは妥協するところだろう。
「わかりました、ルーカスさん」
ちょんちょんとミューが僕の肩をつついてきた
「話はおわりよね。で、今日はどうする。森からあふれた魔獣を狩るだけならスタンピードのきっかけにはならないと思うんだけど」
ミューの言う通り森の中に入り込まなければスタンピードを刺激することはない。そこで
「よし、今日は時間の許す範囲で森からあふれた魔獣を狩ろう。いいですよねルーカスさん」
「は、はい。サポートさせて頂きます。おい、第1騎士団を全員呼び出せ。この人数では処理が間に合わん。いや、第2騎士団は、今日は警備か。第3騎士団も呼べ」
空が茜色に染まり良い時間になったので
「ルーカスさん、今日はこのくらいにしますか」
見える範囲は大体綺麗になったので良いだろう。
「え、ええ。お疲れ様です」
「じゃあ、ここからは僕たちも後始末しますよ」
「い、いえ、その。これだけ綺麗に討伐していただいたので、今日のこれらは素材として処理しようと思います。スタンピード本番ではさすがにそんなことを言っている余裕はないでしょうけれど、ラーカルも近いですし、今回の分は利用できますので。ですから気になさらず、今日はもうお休みください」
「そうですか。ではお言葉に甘えて、先に休ませていただきます。明日からは森の中の魔獣を少しずつ狩るつもりですので、よろしくお願いします」
「ああ、結構森から溢れて来てますね」
なぜか自らサポートについてくれているルーカス騎士団長に声を掛けた。
「そうですね、まだスタンピードには猶予はありそうですが」
「まだ、森から溢れただけで街にむかってないですもんね」
ミューもそのあたりは理解してる。
「あの、ひょっとしてお2人は、スタンピードもご経験があるのですか」
僕もミューもその質問には答えることができない。なので
「冒険者の過去を詮索するのはタブーですよ」
と指摘して誤魔化す。そして
「溢れてきているのは、概ね中位魔獣。上位魔獣は……ああ2体ほどいますね。ミューあれからやろうか」
「うん。競争」
「よし」
僕たちは新調した剣を抜いた。僕は右手にブロードソードを左手にハンド・アンド・ハーフソードを、ミューは以前は短剣を使っていたけれど、今では両手に90セルチ程の片手剣を装備している。すべてが金色に輝くオリハルコンの剣だ。
「ゴー」
僕たちは2体の上級魔獣目指し駆け出した。途中の邪魔な中級魔獣をすれ違いざま首を飛ばし、胴を断ち殲滅しながら駆ける。目指すは2体の上位魔獣キュクロプス。先にたどり着いたのはやはり上位の祝福持ちの僕。1年前ならば、討伐にそれなりの手数を必要とした上位魔獣だったけれど、今の僕たちの力ならどうだろう。一気に接近し、右手のオリハルコンブロードソードを振るう。ほとんど抵抗を感じることなく上半身と下半身を泣き別れにすることが出来た。僅かに遅れミューが防御しようとした腕ごと首を飛ばすのが見えた。
「ふふ、僕の勝ちだね」
「ちぇえ、ファイが露払いしながら走ってくれたから勝てると思ったんだけどなあ」
そんな雑談をしながらゆっくりと騎士団の元に戻る。
「あ、あの今何をされたのですか」
ルーカス騎士団長が夢でも見たかのように呆然と聞いてきた。
「何って見ていたでしょう。魔獣を剣で切り飛ばしてきただけですよ」
ミューの答えにルーカス騎士団長は更に困惑を深めたようだ。
「上位魔獣の首とか胴っていうのは、あんな簡単に切り飛ばせるものなのですか」
「まあ、さすがに今のレベルになったのは師匠の指導があったからですね」
「さすがは剣聖ブランカということですか」
「それ以前だとさすがに上位魔獣を倒すのに5手くらいは必要でしたから」
「もはや何も言いません。剣聖ブランカがあなた方を万の軍勢に勝ると言い、グラハム伯が強力な援軍と呼んだわけが分かりました。今後のサポートはお任せください。あなた方が存分に動けるよう全力を尽くさせていただきます」
「ルーカス騎士団長、僕たちはしがない冒険者です。そんな畏まらないでください」
ルーカス騎士団長は困ったような顔をしつつ
「わかりました。しかし、せめて私をルーカスと呼んでください」
また面倒な予感がしたけれど、ここは妥協するところだろう。
「わかりました、ルーカスさん」
ちょんちょんとミューが僕の肩をつついてきた
「話はおわりよね。で、今日はどうする。森からあふれた魔獣を狩るだけならスタンピードのきっかけにはならないと思うんだけど」
ミューの言う通り森の中に入り込まなければスタンピードを刺激することはない。そこで
「よし、今日は時間の許す範囲で森からあふれた魔獣を狩ろう。いいですよねルーカスさん」
「は、はい。サポートさせて頂きます。おい、第1騎士団を全員呼び出せ。この人数では処理が間に合わん。いや、第2騎士団は、今日は警備か。第3騎士団も呼べ」
空が茜色に染まり良い時間になったので
「ルーカスさん、今日はこのくらいにしますか」
見える範囲は大体綺麗になったので良いだろう。
「え、ええ。お疲れ様です」
「じゃあ、ここからは僕たちも後始末しますよ」
「い、いえ、その。これだけ綺麗に討伐していただいたので、今日のこれらは素材として処理しようと思います。スタンピード本番ではさすがにそんなことを言っている余裕はないでしょうけれど、ラーカルも近いですし、今回の分は利用できますので。ですから気になさらず、今日はもうお休みください」
「そうですか。ではお言葉に甘えて、先に休ませていただきます。明日からは森の中の魔獣を少しずつ狩るつもりですので、よろしくお願いします」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる