僕が守りたかったけれど

景空

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79話

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 僕とミーアはロベル伯爵領領都ランカルを見下ろす丘の上にいる。
「随分と数を集めたようだね」
僕の言葉にミーアが答える。
「5000くらいかな」
「籠城戦でなく、城の外での迎撃戦を選ぶみたいだね」
「籠城してくれたほうが楽だけどね」
気軽な、まるで雑談のように交わす会話ではあるけれど、内容は僕たちの口調ほど軽くはない
「ま、数の利を生かすには外で迎え撃つほうが良いと判断したんだろうね」
間違いではない。狭い場所では数の利を生かすことは難しいのだから。そしてだからこそ、今回の戦いは僕たちにとって必要な事だった。どれだけ戦力を集めても、どれだけ戦略を練っても、どれだけ権謀術数を弄しても僕たち相手には無駄だと知らせ、絶望と自分たちの行いに後悔を感じさせながら殲滅してやる。
そんなことをしてもラーハルトが生き返るわけではない事は分かっている。それでも今は、この気持ちを抑えきれない。例えこの道の先にあるのが破滅であっても地獄であっても……。そして行き着く先に何があってもミーアと一緒なら僕はきっと。

「ミーア、そろそろ行こうか」
「うん。あたしたちのラーハルトを奪った罪、その全てで贖ってもらう」
僕たちはゆっくりと歩いてランカルに向かう。防具の上に羽織ったフード付きコートが風に翻る。僕たちは策を弄さない。正面からゆっくりと向かう。騎士団が隊列を組んでいる。その一人一人の表情までわかる距離まで近づいたところで向こうから誰何の声が掛かった。
「貴様たちは何者だ。現状この城は厳戒態勢にある。死にたくなければ近づくな」
僕たちは何も言わず歩みを進める。
「再度警告する。それ以上近づくのならば攻撃する」
僕とミーアは、歩みを止めることなく両の手にそれぞれの愛剣を構える。
「最終警告だ、そこから1歩でも近づいたら攻撃を行う」
僕たちは当然止まらない。並んで歩を進める。僅かに僕が前。
「く、やむを得ない。撃て」
騎士団の後方から魔法や矢が撃ち込まれる。人間の使う魔法としてはかなり上級なのだろうけれど上位魔獣の操る魔法に比べれば稚技に等しい。矢も一般的なものでしかない。僕たちに影響のありそうな魔法と矢だけ剣で撃ち落とし切り払う。オリハルコンの剣の纏う金色の光が舞い踊る。狙いのそれた魔法が僕たちの後ろで爆炎を上げる。魔法も矢も飛んでこなくなった。近接距離になり騎士団同士のフレンドリーファイアを嫌ったのだろう。次は盾持ちの騎士が突っ込んできた。両手の剣を交互に振るう。以前の僕たちなら盾に打ち込みその反動で動いていた。でも師匠に鍛えられオリハルコンの剣を得た今なら、盾ごと騎士を切り裂く。ひたすら剣を振るい歩みを進める。そこに近接用に展開していた探知に後方から接近する存在が引っかかる。隠蔽持ちのスカウトか。
「ミーア、後ろからスカウト。少しの間前面を任せる」
「はい、まかせて」
僕は反転し後ろから来るスカウトを迎撃する。10人。スカウトの使い方が素人だ。隠蔽持ちを多数一度に向かわせてどうする。発見率が上がるだけ。僕が振るう双剣の前にあっという間に屍をさらすスカウト。5000に迫る騎士団を半日掛けず殲滅しロベル伯を前にしている。横には先日両腕を切り落とした騎士団長もいた。
「貴様たちは何をしているのかわかっているのか。私は元老院の重鎮ぞ。ぜ、全貴族を敵に回すつもりか」
「今更何を言っている。そちらが先に僕たちに仕掛けてきたのだろうが。貴様たちが全滅するか、僕たちが死ぬかだ」
「く、狂っている」
「狂わせたのは、貴様たちだ」
両腕・両足を切り飛ばす。
「伝えるがいい。フェイウェル、この地での名はファイと」
「ミーア、この地での名はミュー」
「僕たち2人は貴族派を殲滅すると。この名に脅えながら最後の日を待つがいい」
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