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83話
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「グリフィン侯爵ご夫妻にお客様です」
部屋で呆けている僕達に屋敷付きの執事ジェラルドさんが声を掛けてきた。
「今日誰か来ることになっていたっけ」
僕がミーアに尋ねると
「今日はていうか、この10日くらいは予定入ってないはずよ。そうよねジェラルドさん」
「はい、おふたりのご友人と言われておりますが、いかがいたしますか」
「友人」
辺境伯の屋敷に訪ねて来られるような友人に心当たりがない僕はミーアと顔を見合わせ、少し迷ったものの。
「分かりました。応接室に通しておいてください。着替えていきます」
一応帝国侯爵という立場上、グラハム伯の食客扱いという立場上最低限の身だしなみを整える。暗殺者という言葉も一瞬頭に浮かんだけれど、次の瞬間には、それならそれでも良いかと投げやりな気持ちになり応接室に向かう
ジェラルドさんが応接室のドアを開けてくれながら
「グリフィン侯爵ご夫妻がおいでです」
応接室には僕達と同年代の男女と幼い子供2人がいた。
「久しぶりね。フェイ、ミーア」
「ああ、久しぶり。5年、いや6年ぶりかな。元気だったかいアーセル。勇者様もかわりありませんか」
「フェイウェル殿、ミーア殿。いやグリフィン侯爵閣下とお呼びすべきですかな」
「フェイでいいですよ。いつ帝国に戻られたんですか」
「ほんの30日ほど前です。正式にアーセルを両親に紹介しなければと思いましてね。」
「ようやくですか」
「ええ、まずは勇者として恥ずかしくない力をつけてからとアーセルとも話しまして。そういう意味では貴殿には感謝してもしきれないところです」
「僕がしたことなど大したことではないでしょう」
「いえ、当時驕っていた私を諫め本当の実力とはどういうものか、どうしたら力をつけられるのか、そういった道筋を示していただきましたから」
「僅かでも助けになったのなら何よりです。で、最近はどうなのですか」
「ええ、どうにか上位魔獣の小さな群れくらいまでは我らの1パーティーで討伐できるようになりました。まだまだ貴殿らのようにスタンピードに対抗するほどの力はありませんが、そろそろ勇者と名乗っても恥ずかしくないだけの力をつけられたと思っております」
そう言う勇者様の視線は幼子2人に向けられていた。
「あのお子達は」
「私とアーセルの子です。むこうで飛び跳ねているのがカール、手前ですまし顔をしているのがペトゥラです。あの子たちにとっても誇れる親になりたいというのもここまで頑張れた源泉のひとつですね」
胸の奥にズキリとした痛みが走る。
「やはりそうですか、幸せそうでなによりです。時にふたりは結婚の儀は」
「事が後先になってしまいましたが、この度正式に結婚することになりました」
「そうですか。おめでとうございます」
むこうでアーセルとミーアも何やら話をしているので僕は勇者様の相手をする。けれど、ミーアの様子がおかしい。
「勇者様、少々失礼します」
僕はミーアのそばに歩み寄る。
「ミーア、大丈夫か」
ミーアの身体を横から抱えるように抱き寄せる。
「え、ええ。ちょっと眩暈がしただけ」
「少し休んだ方がいい」
僕は勇者様とアーセルに向かい一言伝える。
「ミーアは少々体調がすぐれませんので、申し訳ありませんが休ませてきます。せっかく来ていただいたのにすみません」
僕の言葉に勇者様は
「いや、突然訪れた我らこそ、申し訳ない。養生してください」
アーセルも心配そうに覗き込んでくる。
「ミーア、大丈夫。治癒魔法かけようか」
ミーアが首を横に振る。
「いい、いらない」
力なく答えるミーアにアーセルがそれでもと手を伸ばすけれど
「触らないで」
ミーアが叫び、はっとしてそして続けた。
「ごめん、今は……」
僕がミーアを抱えるように抱き寄せ。寝室に連れていく。部屋を出ながらアーセルと勇者様に声を掛ける。
「すまない。今はそっとしておいてやってほしい。ミーアを休ませてくる。申し訳ないけれど少し外すよ」
僕の声も弱弱しく聞こえたことだろう。
寝室に入ると、ミーアをベッドに座らせ、僕はせめてもと抱きしめた。
「あれは辛いな。アーセルも勇者様も悪くない。でも僕達には」
毒のようにじわじわと心を蝕んでくる。決して晴れる事のない心の闇。
「かと言って、彼らを放置するわけにもいかないか。僕が行って今日のところは帰ってもらうように言ってくるよ」
僕はミーアを一瞬強く抱きしめキスをして、そっと離れた。
応接室に近づくと聞きなれた声が聞こえてきた。扉の前で待機していたジェラルドさんに目くばせをすると。ジェラルドさんは4回ノックをして
「グリフィン侯爵がお戻りになりした」
そう言い、中からの返事を待ち扉を開けてくれた。
目の前にいるのはやはりグラハム伯。僕が席を外している間にこちらに来たようだ。
「グラハム伯、勇者様一行の相手をしていただきありがとうございます」
「うん、ミーアの具合はどうだ」
「少々つらそうでしたので寝室で休ませています」
そこにアーセルが口を挟んできた。
「フェイ、いったいミーアに何があったの。あれは普通の状態じゃないわよ」
「ごめん、その話は勘弁してくれ。いくら幼馴染でも言えないことはあるんだ」
「で、でも何かあたしに助けられることがあるなら」
「無理だから。気持ちだけもらっておくよ。ありがとうアーセル」
「でも」
「ごめん、でも今日は帰ってくれないか。それともうひとつ、申し訳ないけれど多分結婚の儀に僕達は参加できないと思う。ごめん」
「ど、どうして」
「決して2人の結婚を祝福しないわけじゃない。でもこれ以上は、ごめん」
4人を屋敷から送り出し、部屋に戻るとグラハム伯がそっと声を掛けてくれた。
「辛かったな。お前達の事は、ある種タブーとなっているからなヘンゲン子爵家でも勇者たる息子にも話せないでいたのだろうが、それでもな。今日はもうフェイも休め。そしてそうだな、明日あたりから魔獣狩りにでも出かけたらどうだ。多少は気晴らしになるんじゃないか」
「ありがとうございます。そうですね。魔獣狩り。ミーアと話してみます」
そう言って僕は部屋を辞した。
部屋で呆けている僕達に屋敷付きの執事ジェラルドさんが声を掛けてきた。
「今日誰か来ることになっていたっけ」
僕がミーアに尋ねると
「今日はていうか、この10日くらいは予定入ってないはずよ。そうよねジェラルドさん」
「はい、おふたりのご友人と言われておりますが、いかがいたしますか」
「友人」
辺境伯の屋敷に訪ねて来られるような友人に心当たりがない僕はミーアと顔を見合わせ、少し迷ったものの。
「分かりました。応接室に通しておいてください。着替えていきます」
一応帝国侯爵という立場上、グラハム伯の食客扱いという立場上最低限の身だしなみを整える。暗殺者という言葉も一瞬頭に浮かんだけれど、次の瞬間には、それならそれでも良いかと投げやりな気持ちになり応接室に向かう
ジェラルドさんが応接室のドアを開けてくれながら
「グリフィン侯爵ご夫妻がおいでです」
応接室には僕達と同年代の男女と幼い子供2人がいた。
「久しぶりね。フェイ、ミーア」
「ああ、久しぶり。5年、いや6年ぶりかな。元気だったかいアーセル。勇者様もかわりありませんか」
「フェイウェル殿、ミーア殿。いやグリフィン侯爵閣下とお呼びすべきですかな」
「フェイでいいですよ。いつ帝国に戻られたんですか」
「ほんの30日ほど前です。正式にアーセルを両親に紹介しなければと思いましてね。」
「ようやくですか」
「ええ、まずは勇者として恥ずかしくない力をつけてからとアーセルとも話しまして。そういう意味では貴殿には感謝してもしきれないところです」
「僕がしたことなど大したことではないでしょう」
「いえ、当時驕っていた私を諫め本当の実力とはどういうものか、どうしたら力をつけられるのか、そういった道筋を示していただきましたから」
「僅かでも助けになったのなら何よりです。で、最近はどうなのですか」
「ええ、どうにか上位魔獣の小さな群れくらいまでは我らの1パーティーで討伐できるようになりました。まだまだ貴殿らのようにスタンピードに対抗するほどの力はありませんが、そろそろ勇者と名乗っても恥ずかしくないだけの力をつけられたと思っております」
そう言う勇者様の視線は幼子2人に向けられていた。
「あのお子達は」
「私とアーセルの子です。むこうで飛び跳ねているのがカール、手前ですまし顔をしているのがペトゥラです。あの子たちにとっても誇れる親になりたいというのもここまで頑張れた源泉のひとつですね」
胸の奥にズキリとした痛みが走る。
「やはりそうですか、幸せそうでなによりです。時にふたりは結婚の儀は」
「事が後先になってしまいましたが、この度正式に結婚することになりました」
「そうですか。おめでとうございます」
むこうでアーセルとミーアも何やら話をしているので僕は勇者様の相手をする。けれど、ミーアの様子がおかしい。
「勇者様、少々失礼します」
僕はミーアのそばに歩み寄る。
「ミーア、大丈夫か」
ミーアの身体を横から抱えるように抱き寄せる。
「え、ええ。ちょっと眩暈がしただけ」
「少し休んだ方がいい」
僕は勇者様とアーセルに向かい一言伝える。
「ミーアは少々体調がすぐれませんので、申し訳ありませんが休ませてきます。せっかく来ていただいたのにすみません」
僕の言葉に勇者様は
「いや、突然訪れた我らこそ、申し訳ない。養生してください」
アーセルも心配そうに覗き込んでくる。
「ミーア、大丈夫。治癒魔法かけようか」
ミーアが首を横に振る。
「いい、いらない」
力なく答えるミーアにアーセルがそれでもと手を伸ばすけれど
「触らないで」
ミーアが叫び、はっとしてそして続けた。
「ごめん、今は……」
僕がミーアを抱えるように抱き寄せ。寝室に連れていく。部屋を出ながらアーセルと勇者様に声を掛ける。
「すまない。今はそっとしておいてやってほしい。ミーアを休ませてくる。申し訳ないけれど少し外すよ」
僕の声も弱弱しく聞こえたことだろう。
寝室に入ると、ミーアをベッドに座らせ、僕はせめてもと抱きしめた。
「あれは辛いな。アーセルも勇者様も悪くない。でも僕達には」
毒のようにじわじわと心を蝕んでくる。決して晴れる事のない心の闇。
「かと言って、彼らを放置するわけにもいかないか。僕が行って今日のところは帰ってもらうように言ってくるよ」
僕はミーアを一瞬強く抱きしめキスをして、そっと離れた。
応接室に近づくと聞きなれた声が聞こえてきた。扉の前で待機していたジェラルドさんに目くばせをすると。ジェラルドさんは4回ノックをして
「グリフィン侯爵がお戻りになりした」
そう言い、中からの返事を待ち扉を開けてくれた。
目の前にいるのはやはりグラハム伯。僕が席を外している間にこちらに来たようだ。
「グラハム伯、勇者様一行の相手をしていただきありがとうございます」
「うん、ミーアの具合はどうだ」
「少々つらそうでしたので寝室で休ませています」
そこにアーセルが口を挟んできた。
「フェイ、いったいミーアに何があったの。あれは普通の状態じゃないわよ」
「ごめん、その話は勘弁してくれ。いくら幼馴染でも言えないことはあるんだ」
「で、でも何かあたしに助けられることがあるなら」
「無理だから。気持ちだけもらっておくよ。ありがとうアーセル」
「でも」
「ごめん、でも今日は帰ってくれないか。それともうひとつ、申し訳ないけれど多分結婚の儀に僕達は参加できないと思う。ごめん」
「ど、どうして」
「決して2人の結婚を祝福しないわけじゃない。でもこれ以上は、ごめん」
4人を屋敷から送り出し、部屋に戻るとグラハム伯がそっと声を掛けてくれた。
「辛かったな。お前達の事は、ある種タブーとなっているからなヘンゲン子爵家でも勇者たる息子にも話せないでいたのだろうが、それでもな。今日はもうフェイも休め。そしてそうだな、明日あたりから魔獣狩りにでも出かけたらどうだ。多少は気晴らしになるんじゃないか」
「ありがとうございます。そうですね。魔獣狩り。ミーアと話してみます」
そう言って僕は部屋を辞した。
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