94 / 166
94話
しおりを挟む
アースドラゴンの討伐に成功した僕たちは、とりあえず今回の事前調査はここまでとしてエイリアに帰還した。
「ただいま戻りました」
帰還の報告をするために、今僕たちはエイリア城に来ている。普段あまりこちらには来ないのだけれど、グラハム伯が忙しく屋敷に戻れそうもないとの伝言があったためだ。
「おう、おかえり。ケガも無いようでなによりだ」
「ええ、どうにかですね。今回は、久しぶりに狩人らしい狩りもしましたよ。な、ミーア」
「本当に久しぶりよね。目標を観察して、作戦を立てて。追い込んで。ふふ、しばらく忘れていた感覚ね」
「お、おう。お前たちの実力でそれやるのか」
グラハム伯の顔色が悪い。
「僕たちの実力でって言われますけど。僕たちは狩人です。対象を観察して習性、弱点を洗い、それをもとに罠にはめて安全地帯から嵌め殺すのが本来の戦い方ですよ。もちろんそれだけでは済まないので直接戦闘もしますけどね。いきなり直接戦闘というのは、あくまでも罠にかけるまでもない相手ならするというだけの事ですから。なので狩人本来の戦い方をすれば格上に対しても勝てるとそういうことです」
「格上、格上ね。お前たちにとっての格上なあ。今回は、どんなのがいたんだ」
ミーアがちょっといたずらっ子の顔で答えた。
「おっきな亀がいましたよ」
グラハム伯の表情が何を言っているんだという感じになり
「亀などそのあたりにいくらでもいるだろう」
「ええ、でも全長15メルドもあって、突進して上位魔獣を捕食するような亀は初めて見ましたよ」
「ぐ、ぐほっ」
グラハム伯がむせる。
「しかもオリハルコン製の剣で切りつけても簡単には切れなかったんですよ」
どうやら今日のミーアは小悪魔のようだ。
「他にもおっきなトカゲもいましたよ」
「あ、あはは、まさかドラゴンでもいたか」
さすがのグラハム伯も顔が引き攣っている。
「ん、どうかな。おっきな亀を甲羅ごと叩き潰して食べちゃってたみたいですけどね」
「な、お前達がオリハルコンの剣で切りつけて簡単には切れない亀を叩き潰すトカゲだと」
「ええ、アースドラゴンだと思うのですけど」
ミーアがさらりと告げると、グラハム伯の表情がさらに強張った。
「で、亀には剣で切りつけたって言っていてここにお前たちがいる以上狩ってきたんだろうが、そのアースドラゴンは……」
「はい、魔法の鞄の中です」
「ふたりで、……狩ったんだよな」
「ええ、森の深層の更に奥に他の冒険者がいるってことは流石にないですからね。でも思ったよりはうまく狩れました」
グラハム伯は、深呼吸をすると僕の方に目を向けてきた。
「で、狩人らしい狩りってのがそのキーワードなんだろうな」
「ええまあ、そうですね。久しぶりに弓を使いました」
そこから僕はアースドラゴンをどうやって討伐したのかを話した。
「しかし、本当にお前たちは規格外だな。いくら得意武器とはいえ100メルド以上離れたアースドラゴンのそれも目を1発で射抜くとはな」
「いえ、狩人の祝福を頂いて、多少の経験を積めばできる事ですよ」
「多少、多少ね。お前たちの言う多少ってのはちっとばかり怖いが、まあいいだろう。で見せてもらえるのか」
「いいですよ。ただ、ここではちょっと」
グラハム伯の執務室は、辺境伯の立場を反映し普通に広いがさすがに巨大亀や、アースドラゴンの死骸を出すのは無理だ。
「では中庭ならどうだ」
「では、出しますね」
まずはアースドラゴンを出した。
「おおお、でかいな」
グラハム伯が感嘆の声をもらし、それを確かめるかのようにコンコンと叩く。頭部を見てその牙の凶悪さに驚き、尻尾の大きさに首を振る。
「これを2人で……」
「では亀はこちらに出しますよ」
僕はグラハム伯に声を掛けアースドラゴンの隣に巨大亀の死骸を出し並べた。
「これは、グラントータスか」
どうやらグラハム伯は、この亀に心当たりがあるようだ。
「ご存知なのですか」
「詳しく知っているわけではない。俺がみたところグラントータス。伝説とまでは言わんが、ほとんど実物を見ることは無い魔獣だな。その甲羅は強固でほとんど無敵の強度を持つとまで言われているんだが。お前たちは、剣で切り刻んできたんだよな」
「切り刻むは大げさですが。まあ、剣で倒してきましたね」
そこで大きく溜息を吐き、微苦笑を漏らすグラハム伯。
「ま、いい。またギルマスが頭を抱える案件が増えただけだ。で、どうだ」
「どうだとは、なんですか」
「事前調査だろう」
「あ、そうでした。そうですね。魔獣の相手自体は僕達でどうにかなるとは思いますが、できれば僕たちの他に調査団の直掩として咄嗟の時に足止めくらいはできる人材が欲しいですね」
「お前たちだけではダメか」
「ダメとは言いませんが、このグラントータスですか、とかアースドラゴンクラスを相手すると、僕たちも討伐にそれなりに時間かかりますし、手を離せなくなります。その間調査団が無防備になるのは好ましくないかと」
「わかった、誰かみつくろおう」
「ただいま戻りました」
帰還の報告をするために、今僕たちはエイリア城に来ている。普段あまりこちらには来ないのだけれど、グラハム伯が忙しく屋敷に戻れそうもないとの伝言があったためだ。
「おう、おかえり。ケガも無いようでなによりだ」
「ええ、どうにかですね。今回は、久しぶりに狩人らしい狩りもしましたよ。な、ミーア」
「本当に久しぶりよね。目標を観察して、作戦を立てて。追い込んで。ふふ、しばらく忘れていた感覚ね」
「お、おう。お前たちの実力でそれやるのか」
グラハム伯の顔色が悪い。
「僕たちの実力でって言われますけど。僕たちは狩人です。対象を観察して習性、弱点を洗い、それをもとに罠にはめて安全地帯から嵌め殺すのが本来の戦い方ですよ。もちろんそれだけでは済まないので直接戦闘もしますけどね。いきなり直接戦闘というのは、あくまでも罠にかけるまでもない相手ならするというだけの事ですから。なので狩人本来の戦い方をすれば格上に対しても勝てるとそういうことです」
「格上、格上ね。お前たちにとっての格上なあ。今回は、どんなのがいたんだ」
ミーアがちょっといたずらっ子の顔で答えた。
「おっきな亀がいましたよ」
グラハム伯の表情が何を言っているんだという感じになり
「亀などそのあたりにいくらでもいるだろう」
「ええ、でも全長15メルドもあって、突進して上位魔獣を捕食するような亀は初めて見ましたよ」
「ぐ、ぐほっ」
グラハム伯がむせる。
「しかもオリハルコン製の剣で切りつけても簡単には切れなかったんですよ」
どうやら今日のミーアは小悪魔のようだ。
「他にもおっきなトカゲもいましたよ」
「あ、あはは、まさかドラゴンでもいたか」
さすがのグラハム伯も顔が引き攣っている。
「ん、どうかな。おっきな亀を甲羅ごと叩き潰して食べちゃってたみたいですけどね」
「な、お前達がオリハルコンの剣で切りつけて簡単には切れない亀を叩き潰すトカゲだと」
「ええ、アースドラゴンだと思うのですけど」
ミーアがさらりと告げると、グラハム伯の表情がさらに強張った。
「で、亀には剣で切りつけたって言っていてここにお前たちがいる以上狩ってきたんだろうが、そのアースドラゴンは……」
「はい、魔法の鞄の中です」
「ふたりで、……狩ったんだよな」
「ええ、森の深層の更に奥に他の冒険者がいるってことは流石にないですからね。でも思ったよりはうまく狩れました」
グラハム伯は、深呼吸をすると僕の方に目を向けてきた。
「で、狩人らしい狩りってのがそのキーワードなんだろうな」
「ええまあ、そうですね。久しぶりに弓を使いました」
そこから僕はアースドラゴンをどうやって討伐したのかを話した。
「しかし、本当にお前たちは規格外だな。いくら得意武器とはいえ100メルド以上離れたアースドラゴンのそれも目を1発で射抜くとはな」
「いえ、狩人の祝福を頂いて、多少の経験を積めばできる事ですよ」
「多少、多少ね。お前たちの言う多少ってのはちっとばかり怖いが、まあいいだろう。で見せてもらえるのか」
「いいですよ。ただ、ここではちょっと」
グラハム伯の執務室は、辺境伯の立場を反映し普通に広いがさすがに巨大亀や、アースドラゴンの死骸を出すのは無理だ。
「では中庭ならどうだ」
「では、出しますね」
まずはアースドラゴンを出した。
「おおお、でかいな」
グラハム伯が感嘆の声をもらし、それを確かめるかのようにコンコンと叩く。頭部を見てその牙の凶悪さに驚き、尻尾の大きさに首を振る。
「これを2人で……」
「では亀はこちらに出しますよ」
僕はグラハム伯に声を掛けアースドラゴンの隣に巨大亀の死骸を出し並べた。
「これは、グラントータスか」
どうやらグラハム伯は、この亀に心当たりがあるようだ。
「ご存知なのですか」
「詳しく知っているわけではない。俺がみたところグラントータス。伝説とまでは言わんが、ほとんど実物を見ることは無い魔獣だな。その甲羅は強固でほとんど無敵の強度を持つとまで言われているんだが。お前たちは、剣で切り刻んできたんだよな」
「切り刻むは大げさですが。まあ、剣で倒してきましたね」
そこで大きく溜息を吐き、微苦笑を漏らすグラハム伯。
「ま、いい。またギルマスが頭を抱える案件が増えただけだ。で、どうだ」
「どうだとは、なんですか」
「事前調査だろう」
「あ、そうでした。そうですね。魔獣の相手自体は僕達でどうにかなるとは思いますが、できれば僕たちの他に調査団の直掩として咄嗟の時に足止めくらいはできる人材が欲しいですね」
「お前たちだけではダメか」
「ダメとは言いませんが、このグラントータスですか、とかアースドラゴンクラスを相手すると、僕たちも討伐にそれなりに時間かかりますし、手を離せなくなります。その間調査団が無防備になるのは好ましくないかと」
「わかった、誰かみつくろおう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる