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96話
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「ここから森に入ります。今回は深層の更に奥の調査が目的ですので魔獣との戦闘を最低限になるように移動します。そのため、先にも説明しましたように物音、におい、光、そう言ったものは最低限となるようお願いします。場合により言葉での指示をできないことがあるので簡単なハンドサインをいくつかお教えします。これだけは覚えてください。そして、これで指示を始めた時には絶対に声を出さないようにしてくださいね」
簡単なハンドサインをいくつか教えたうえで森に踏み入った。先導する僕たちは全力を尽くして最適ルートを選び魔の森の奥地にむかう。時々隊列を止め静かに腰を下ろさせることもある。今はまだ魔の森の表層、低位の魔獣がちょこちょこいるため、大人数での移動は少々面倒だ。特に戦闘能力のない調査団を引き連れている以上低位の魔獣でさえ致命傷になりかねない。今もルートの先およそ300メルドを2体の低位魔獣が横切っているのを探知で確認している。これ以上近付くと調査団の気配でこちらに寄ってくるだろう。それでもこのルートが一番魔獣の密度が小さいため多少の待機時間は必要経費として我慢するしかない。その我慢がちょっとした休憩となり身体だけでも休ませる時間になる。せめて中層にまで至れば魔獣と魔獣の間隔が広がる。もちろん魔獣の脅威度はあがるが、そうなれば僕たちが先導することで魔獣と魔獣の間を縫う事自体は難しくなくなる。
そうこうし魔獣との遭遇を最低限にしつつ進み今は深層と呼ばれる領域までたどり着いている。
「フェイ、ミーア。このあたりでお前たちの今の実力を見せてもらえないか」
唐突な師匠の言葉に
「いや、師匠。無駄に戦わなくても、そのうち嫌でも戦う時が来ますから、その時で良いじゃないですか。今は調査と護衛を優先したいです」
「フェイの言いたいことも分かるけれど、これは戦力の把握のためだからな。連携をとるにしても、調査団の直掩で足止めするにしても、お前たちの戦力をある程度は把握しておきたい」
「ああ、なるほど。了解です。普段僕たちは2人だけで行動することが多いのでうっかりしていました……」
僕たちは探知で適当な魔獣を見繕う。単独で他の魔獣との距離があり、戦闘音で他の魔獣を引き寄せない位置にいる魔獣を探す。
「あれでいいですかね」
僕は師匠に確認する。
「うん、まずは誰がいくかな」
誰、という表現にちょっと引っ掛かりを感じたけれど
「まずは僕がいきます」
僕はオリハルコンの両手持ちの大剣を構え5メルドは超える上位魔獣に切りかかった。魔獣が僕を認識し、両腕を振りかぶり打ちかかってくる。僕の振り払った剣はその両腕ごと魔獣を両断し、魔獣は上半身と下半身別々に地に伏せた。
「このあたりの魔獣相手だと僕の場合はこんな感じですね」
「あ、まあ、なんというか想像以上になっているなフェイ」
中々見ることの出来ない師匠の引き攣った表情が見られただけでも成果だ。
「つ、次はミーア。今の実力を見せてくれ」
「あーい」
師匠の言葉にミーアが答える。
「あいつでいいかしら」
ミーアが首をコテンと傾げながら師匠に聞いている。指さした先にいるのは先ほど僕が倒したのと同種の上位魔獣。まだ名前の付いていない新種。やはり5メルドはある巨体だ。
「ああ、ミーアの戦いも見せてくれ」
師匠の言葉に、嬉しそうに微笑むとミーアが駆け出す。ミーアが風を巻くように魔獣に迫る。それに気付いた魔獣がその凶悪な腕を振り下ろすけれど、ミーアはそれをスルリと躱し右手に持ったオリハルコンの片手剣で首を切り落とした。どさりと崩れ落ちるように倒れる巨躯を背後にミーアが微笑む。師匠に成長を見せることが出来て嬉しいのだろう。師匠の前まで駆け戻りニコニコとまるでご褒美を待っている飼い犬のような笑顔で師匠の言葉を待っている。
「み、ミーアも、ここまでよく精進したな」
師匠の言葉にミーアが嬉しそうだ。
「ところで、お前たちの剣を見せてはもらえんか。例のオリハルコンの剣なのだろう」
僕とミーアは僅かに躊躇したけれど
「師匠の要望とあれば是非もありません」
と剣帯ごと外して渡す。ラーカルでの騎士団の事が頭をよぎったが、師匠はどうにかオリハルコンの剣を持つことが出来たようだ。
「む、重いな。お前たちはこれを振り回せているのか」
僕とミーアは、ホッとした顔を見合わせラーカルでの出来事を師匠に話した。
「なるほど。何か分からぬが、資格のようなものが無いと持ち上げることさえ出来ない剣か。おもしろい。この調査から帰ったら私用に1振り欲しいものだ」
「いいですね。師匠に1振りプレゼントさせてください」
「ま、それでも今は愛剣たるこのオリハルコンコートの片手剣を振るわせてもらおう。2人が倒したのと同じ魔獣を見繕ってくれ」
「え、師匠が戦うのですか」
「おう、お前たちが倒した魔獣の強さを知らねば、お前たちの本当の強さは分からんだろう」
結果、師匠も新種の上位魔獣を危なげなく倒すことができたけれど
「もともと対魔獣戦闘ではお前たちの方が上だと思っておったが、これほどだったとはな」
僕たちのように1刀の元に切り伏せるというわけにはいかず、このような評価をされてしまった。
簡単なハンドサインをいくつか教えたうえで森に踏み入った。先導する僕たちは全力を尽くして最適ルートを選び魔の森の奥地にむかう。時々隊列を止め静かに腰を下ろさせることもある。今はまだ魔の森の表層、低位の魔獣がちょこちょこいるため、大人数での移動は少々面倒だ。特に戦闘能力のない調査団を引き連れている以上低位の魔獣でさえ致命傷になりかねない。今もルートの先およそ300メルドを2体の低位魔獣が横切っているのを探知で確認している。これ以上近付くと調査団の気配でこちらに寄ってくるだろう。それでもこのルートが一番魔獣の密度が小さいため多少の待機時間は必要経費として我慢するしかない。その我慢がちょっとした休憩となり身体だけでも休ませる時間になる。せめて中層にまで至れば魔獣と魔獣の間隔が広がる。もちろん魔獣の脅威度はあがるが、そうなれば僕たちが先導することで魔獣と魔獣の間を縫う事自体は難しくなくなる。
そうこうし魔獣との遭遇を最低限にしつつ進み今は深層と呼ばれる領域までたどり着いている。
「フェイ、ミーア。このあたりでお前たちの今の実力を見せてもらえないか」
唐突な師匠の言葉に
「いや、師匠。無駄に戦わなくても、そのうち嫌でも戦う時が来ますから、その時で良いじゃないですか。今は調査と護衛を優先したいです」
「フェイの言いたいことも分かるけれど、これは戦力の把握のためだからな。連携をとるにしても、調査団の直掩で足止めするにしても、お前たちの戦力をある程度は把握しておきたい」
「ああ、なるほど。了解です。普段僕たちは2人だけで行動することが多いのでうっかりしていました……」
僕たちは探知で適当な魔獣を見繕う。単独で他の魔獣との距離があり、戦闘音で他の魔獣を引き寄せない位置にいる魔獣を探す。
「あれでいいですかね」
僕は師匠に確認する。
「うん、まずは誰がいくかな」
誰、という表現にちょっと引っ掛かりを感じたけれど
「まずは僕がいきます」
僕はオリハルコンの両手持ちの大剣を構え5メルドは超える上位魔獣に切りかかった。魔獣が僕を認識し、両腕を振りかぶり打ちかかってくる。僕の振り払った剣はその両腕ごと魔獣を両断し、魔獣は上半身と下半身別々に地に伏せた。
「このあたりの魔獣相手だと僕の場合はこんな感じですね」
「あ、まあ、なんというか想像以上になっているなフェイ」
中々見ることの出来ない師匠の引き攣った表情が見られただけでも成果だ。
「つ、次はミーア。今の実力を見せてくれ」
「あーい」
師匠の言葉にミーアが答える。
「あいつでいいかしら」
ミーアが首をコテンと傾げながら師匠に聞いている。指さした先にいるのは先ほど僕が倒したのと同種の上位魔獣。まだ名前の付いていない新種。やはり5メルドはある巨体だ。
「ああ、ミーアの戦いも見せてくれ」
師匠の言葉に、嬉しそうに微笑むとミーアが駆け出す。ミーアが風を巻くように魔獣に迫る。それに気付いた魔獣がその凶悪な腕を振り下ろすけれど、ミーアはそれをスルリと躱し右手に持ったオリハルコンの片手剣で首を切り落とした。どさりと崩れ落ちるように倒れる巨躯を背後にミーアが微笑む。師匠に成長を見せることが出来て嬉しいのだろう。師匠の前まで駆け戻りニコニコとまるでご褒美を待っている飼い犬のような笑顔で師匠の言葉を待っている。
「み、ミーアも、ここまでよく精進したな」
師匠の言葉にミーアが嬉しそうだ。
「ところで、お前たちの剣を見せてはもらえんか。例のオリハルコンの剣なのだろう」
僕とミーアは僅かに躊躇したけれど
「師匠の要望とあれば是非もありません」
と剣帯ごと外して渡す。ラーカルでの騎士団の事が頭をよぎったが、師匠はどうにかオリハルコンの剣を持つことが出来たようだ。
「む、重いな。お前たちはこれを振り回せているのか」
僕とミーアは、ホッとした顔を見合わせラーカルでの出来事を師匠に話した。
「なるほど。何か分からぬが、資格のようなものが無いと持ち上げることさえ出来ない剣か。おもしろい。この調査から帰ったら私用に1振り欲しいものだ」
「いいですね。師匠に1振りプレゼントさせてください」
「ま、それでも今は愛剣たるこのオリハルコンコートの片手剣を振るわせてもらおう。2人が倒したのと同じ魔獣を見繕ってくれ」
「え、師匠が戦うのですか」
「おう、お前たちが倒した魔獣の強さを知らねば、お前たちの本当の強さは分からんだろう」
結果、師匠も新種の上位魔獣を危なげなく倒すことができたけれど
「もともと対魔獣戦闘ではお前たちの方が上だと思っておったが、これほどだったとはな」
僕たちのように1刀の元に切り伏せるというわけにはいかず、このような評価をされてしまった。
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