僕が守りたかったけれど

景空

文字の大きさ
139 / 166

139話

しおりを挟む
 「これで終わりだ」
僕の振り切った両手剣が青い体をその血で赤く染め、巨体は血に伏せた。
「みごとだ」
「え。話ができるのか」
「ふん、我とて四神獣がひとつ。人語ごとき操れずにどうとするか」
「そうか、悪いな。僕達の勝手な都合で命をもらう」
「気にするな。我を倒さねば、貴様たちが命を落としていたのだからな」
「ありがとう」
「くくく、変わったやつらよの。そんな貴様たちに贈ろう。夕日の沈む水面に浮かぶ白き月、闇が覆う時光が差す」
「それはどういう……」
そこまで言うとブルードラゴンは息を引き取った。
「そう言えば、四神獣と言ったよね」
「そうね、真竜とは何か違うのかしら」
僕もミーアもこの辺りになると分からない。
「エイリアに戻ったら、調べてみようか」

「ただいま」
「おかえりなさいませ。首尾はいかがでしたか」
ギディオンは執事らしく迎えてくれた。
「ああ、ブルードラゴンの討伐に成功したよ。ただ、最後に気になることを聞いてね」

「四神獣でございますか」
「うん、何か聞いたことはないかな」
ギディオンは少し考えこんでいたけれど、
「伝承や伝説の中に似たような名前を聞いたことがあるような気がします。グラハム伯にその手の内容を記した本が無いかお尋ねになってみてはいかがでしょうか」
「なるほど、本か。となれば領主であるグラハム伯が一番だろうね。ありがとう尋ねてみるよ」

「グラハム伯、ご無沙汰しております」
「また深層の奥に行っていたそうだな」
「はい、今回はブルードラゴンと遭遇しました」
「またドラゴンか。お前たちと話していると、常識がズレて来ているのを自覚するよ。ドラゴンと遭遇してケガも無く帰ってくるんだからな。で、今日は何の用だ。まあ用が無くても遊びに来てくれていいのだけどな」
僕の後ろにいるエルンストとイングリッドを見て目を細めているグラハム伯。跡取り自体はいるけれど孫がまだおらず、ラーハルトの時もそうだったけれど僕達の子を自分の孫のようにかわいがってくれている。そんなグラハム伯に2人も懐いていて本当の祖父と孫のような関係だ。
「ありがとうございます。時間のある時には寄らせていただきます」
そう言いながら、ふたりを前に押し出す。ふたりはモジモジとしながらも嬉しそうにグラハム伯に甘えにいく。これで4級冒険者くらいなら剣だけで瞬殺する力があるのだから不思議なものだ。
「で、今日の本題はなんだ」
「実は……」
僕はブルードラゴンの残した言葉についてグラハム伯に話し、心当たりが無いか聞いてみた。
「四神獣と謎の言葉か。たしか何かで読んだ記憶があるな」
「本当ですか。どういったことでしょうか」
僕はつい踏み込みながら聞いてしまった。
「フェイ、ちょっと待って。グラハム伯が驚いているから。ちょっと落ち着いて」
ミーアが、驚きながら僕を引き留め、グラハム伯も少し驚きながら
「オレもはっきりと覚えているわけではないが、城の書庫にそういった伝承に関するものがあったはずだ。よければ司書に出すように言うが」
「お願いします」
「ふむ、ならそうだな5日後に城に来い。準備をさせておく」
「ありがとうございます。いつもお世話になります」
「なに、気にするな。お前たちがエイリアに住んでいるだけで俺は随分と楽をさせてもらっているからな。お互い様だ」
そう言うと、グラハム伯はニヤリと笑い不器用なウィンクをしてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...