162 / 166
アフターストーリー イングリッドとエルンスト。フェイとミーアの剣③
しおりを挟む
「グスタフ、何を言おうとしているのかしら」
ママの声がしたとたん。
「い、いえ。自分は何も……」
タフで鳴らす騎士団長グスタフさんがとたんに取り乱した。額にはうっすらと汗がにじんでいる。ママの声は決して怒鳴っている訳でもなく、柔らかな優しい声なのだけれど、妙な圧力があるのは確かで、僕とイングリッドも固まってしまっている。
「何もじゃないわよね」
「も、申し訳ございません。ご子息様、ご息女様の剣技があまりに素晴らしくうっかりいたしました」
グスタフさんはママの前に跪き首を垂れた。
そこでママは小さくため息をついた。
「もうわかってるでしょうに。あれらの剣を振るえた段階でどうなのかは」
「は、しかし」
「しかしじゃないの。あれらの剣は認めた使い手に力を与える。でも使い手の本当の力までは判断してくれない。あなたにも話したことあるわよね。未熟だった頃の勇者様が聖剣に振り回されてどういうことをしでかしたか」
「は、結界を破壊してしまったというお話ですな」
「私の大切な子供たちに同じ轍を踏ませるつもりだったのかしら」
「いえ、決してそのようなことは」
「なら、どうするべきかわかるわよね」
ママがそう言うとグスタフさんが立ち上がり、僕たちに向かって歩み寄ってきた。
「エルンスト様、イングリッド様。お2人がそれらの剣に認められたことお祝い申し上げます。しかし、現時点ではまだお2人がその剣を振るうことを認めるわけにはまいりません。武器庫にお戻し頂けますよう」
僕もイングリッドも言われている意味が分からず
「ええ、なんで。ちゃんと振るえていたでしょう」
そう反論したところ、ママが声を掛けてきた。
「エルンスト、その剣を振るってどう感じたかしら」
どう感じたって
「すごい切れ味で、まるで素振りをしているように木杭が切り落とせたよ」
「それだけかしら」
「それ以外になにかあるの」
「イングリッドあたしの剣をかしてみなさい」
そう言うとママはイングリッドから双剣を受け取り、木杭に向かって振るって見せた。いや、おそらくは振るったと思う。その剣筋は僕たちには一筋の金色の光にしか見えなかった。まるでダンスを舞うようにママはひとしきり剣を振るうと、双剣をイングリッドに手渡した。
「あなた達の剣と違いが分かるかしら。エルンストが手に持つ両手持ちの大剣はあたしでは手に余るから振るって見せてあげることは出来ないけれど、パパが振るえば竜の首さえ落とすわ。いえパパの振るうその大剣の前には本当の意味で耐えることのできるものはいない」
確かに明らかに僕たちが振るった時と何かが違うのは感じた。でも、
「その、これらの剣を振るうことでこそ鍛えられるのではないの」
僕は思わず疑問を口にしていた。
「あなた達は、その剣に振り回されているの。それらの剣はどれも素晴らしい力を秘めているわ。でもね、あなた達ではまだ剣に使われている。その剣の従僕になってしまっているの。だから今はあなた達にその剣を与えるわけにはいかない。いつかその剣より上に立ち剣の主となれる力をつけたその時にこそ、それらの剣を本当の意味で譲りましょう」
ママの声がしたとたん。
「い、いえ。自分は何も……」
タフで鳴らす騎士団長グスタフさんがとたんに取り乱した。額にはうっすらと汗がにじんでいる。ママの声は決して怒鳴っている訳でもなく、柔らかな優しい声なのだけれど、妙な圧力があるのは確かで、僕とイングリッドも固まってしまっている。
「何もじゃないわよね」
「も、申し訳ございません。ご子息様、ご息女様の剣技があまりに素晴らしくうっかりいたしました」
グスタフさんはママの前に跪き首を垂れた。
そこでママは小さくため息をついた。
「もうわかってるでしょうに。あれらの剣を振るえた段階でどうなのかは」
「は、しかし」
「しかしじゃないの。あれらの剣は認めた使い手に力を与える。でも使い手の本当の力までは判断してくれない。あなたにも話したことあるわよね。未熟だった頃の勇者様が聖剣に振り回されてどういうことをしでかしたか」
「は、結界を破壊してしまったというお話ですな」
「私の大切な子供たちに同じ轍を踏ませるつもりだったのかしら」
「いえ、決してそのようなことは」
「なら、どうするべきかわかるわよね」
ママがそう言うとグスタフさんが立ち上がり、僕たちに向かって歩み寄ってきた。
「エルンスト様、イングリッド様。お2人がそれらの剣に認められたことお祝い申し上げます。しかし、現時点ではまだお2人がその剣を振るうことを認めるわけにはまいりません。武器庫にお戻し頂けますよう」
僕もイングリッドも言われている意味が分からず
「ええ、なんで。ちゃんと振るえていたでしょう」
そう反論したところ、ママが声を掛けてきた。
「エルンスト、その剣を振るってどう感じたかしら」
どう感じたって
「すごい切れ味で、まるで素振りをしているように木杭が切り落とせたよ」
「それだけかしら」
「それ以外になにかあるの」
「イングリッドあたしの剣をかしてみなさい」
そう言うとママはイングリッドから双剣を受け取り、木杭に向かって振るって見せた。いや、おそらくは振るったと思う。その剣筋は僕たちには一筋の金色の光にしか見えなかった。まるでダンスを舞うようにママはひとしきり剣を振るうと、双剣をイングリッドに手渡した。
「あなた達の剣と違いが分かるかしら。エルンストが手に持つ両手持ちの大剣はあたしでは手に余るから振るって見せてあげることは出来ないけれど、パパが振るえば竜の首さえ落とすわ。いえパパの振るうその大剣の前には本当の意味で耐えることのできるものはいない」
確かに明らかに僕たちが振るった時と何かが違うのは感じた。でも、
「その、これらの剣を振るうことでこそ鍛えられるのではないの」
僕は思わず疑問を口にしていた。
「あなた達は、その剣に振り回されているの。それらの剣はどれも素晴らしい力を秘めているわ。でもね、あなた達ではまだ剣に使われている。その剣の従僕になってしまっているの。だから今はあなた達にその剣を与えるわけにはいかない。いつかその剣より上に立ち剣の主となれる力をつけたその時にこそ、それらの剣を本当の意味で譲りましょう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる