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異世界へ
第17話 森を抜ける
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転移から今日で23日。あたしと影井さんは今日も川に沿って歩いているのだけど未だ文明どころか知的生命体の痕跡も見つけられていないの。
そしてこの23日の間に分かったこと。
ひとつ、どうやらこの世界の1日はおおよそ24時間。これは転移後に揺さんが腕時計で確認してたからほぼ間違いないわ。それにしても手巻きの機械式腕時計を持ってるって揺さんってこういうところもマニアックよね。ふたつ、この地域は季節は無さそう。これは倒れた木を見て揺さんが年輪が無いから季節は多分ないって言ってたのよね。みっつ、水は煮沸して飲みさえすれば害は無さそう。20日以上飲んできたから少なくとも短期的に健康に被害は無いわね。ただし、今のところ生水を飲む勇気はないわ。よっつ、嬉しいのは動物の肉も食べて平気だったの。これはとっても助かる。成長期のあたしに肉は絶対に必要だもの。ただそう言ったら揺さんに可哀そうなものを見る目で見られてしまったのよね。解せぬ。
そうそう、最近あたし達はお互いの呼び方を変えたの。これからいつまでかわからない間バディとして過ごすなら、もっとお互いの距離を縮めたほうがいいからってあたしが提案したの。だから今あたしは影井さんの事を揺さんって呼ぶし、瑶さんには、あたしのことを朝未って呼んでもらっているのよね。やっぱり呼び方が変わるとぐっと親近感が増したから、これは成功だったと思うの。
そしてそしてなんと今あたしの手には弓矢があるの。あたしが近接戦闘をしなくていいようにって、これも揺さんが木を切って削って作ってくれたのよね。弦はどうするのかしらって思ったのだけど、木の皮を叩いてほぐして作ってくれたわ。矢も細い木と落ちていた鳥の羽で作ってくれたのよね。練習用に10本。狩り用に20本。あたしの力だとあまり遠くまで飛ばなかったけど、どのみちそんな遠くの目標には当たらないものいいわ。矢筒も竹と木の皮で作ってくれたのよね。まあ、慣れてきたからか段々遠くまで飛ばせるようになってきたのだけど。今は飛ばすだけなら50メートルは飛ぶわね。当たらないけれど。クスン。
それにしても揺さんて本当に現代人かしら。サバイバル適性が高すぎるわよね。あたしはそれで助かっているので文句は全くないし、むしろ感謝しているのだけど。
そして今、揺さんは木に登っているのよね。この先の地形を少しでも確認しているって言ってたわ。その間あたしは暇になるので弓の練習中よ。毎日練習しているから10メートルくらいの距離においた直径50センチくらいの止まった的なら半分くらい当たるようになったのよ。昨日の狩りでは先制攻撃で1発当てたんだから。
「朝未、大分上手になったね」
ビクッとして狙ったところからかなりズレたところに矢が飛んで行ってしまったわ。向こうのほうでカツンと硬い音がして木か何かに当たったの分かるわね。
「か、瑶さん。驚かさないでくださいよ」
あたしが頬を膨らませて抗議すると揺さんはなんとなく目を泳がせて右手で頭の裏をかいているわね。
「いやあ、すまなかった。まさかそこまで集中しているとは思わず。でも実戦では周りの様子にも気を配らないといけないからね」
くっ、ど正論に反論ができないじゃないの。となれば話をそらすしかないわね。
「それで、上から見てどうでした?」
何か気付いたみたいだけど良いわよね。
「あと2、3日で平野に出られると思う。向こうに山の影がなくなったからね。あとは今まで通り川に沿って川下に向かおう。この川なら近くに文明があれば何かあると思うから」
「早く、この世界の文明を確認したいですよね。あ、あたし向こうに飛ばしてしまった矢を回収してきます」
「ああ、私も荷物をまとめておくよ」
的をそれた矢は少し離れたところの木に突き刺さっていたわ。最初の頃に比べるとあたしの弓の力も随分と強くなったのね。最初は木に刺さるなんてこと無かったもの。やっぱりコツをつかむと違うのね。
あたしは矢をどうにか木から引き抜いて回収すると瑶さんが荷物をまとめている場所に戻った。
そしてあたし達は、また川沿いを下っていく。
川幅が広くなり既に両側の河川敷まで含めるなら500メートルにせまる大きさとなった川面を見ながら瑶さんは期待を口にしたわ。実際文明が無かったなら、あたし達は2人きりで見知らぬ世界で生きていかないといけないのよね。瑶さんの事は信頼しているし一緒にいることは苦にならないけど、2人きりというのはさすがに色々な意味で辛いわ。年齢差を考えたら最後の数十年を1人で生きないといけなくなってしまうもの。そんなことになったらあたしきっと気が狂ってしまうわ。そこまで考えてフッと気づいたのは瑶さんは男性であたしは女性ということ。そうね、もし文明が無ければきっと……。想像して、うん不思議と嫌悪感なくて嫌ではないわ。でも今はまだそういう時期じゃないわね。それに瑶さんも今のところあたしを女性としては見ていないように思えるもの。
そしてその4日後、あたし達は森を抜けた。
そしてこの23日の間に分かったこと。
ひとつ、どうやらこの世界の1日はおおよそ24時間。これは転移後に揺さんが腕時計で確認してたからほぼ間違いないわ。それにしても手巻きの機械式腕時計を持ってるって揺さんってこういうところもマニアックよね。ふたつ、この地域は季節は無さそう。これは倒れた木を見て揺さんが年輪が無いから季節は多分ないって言ってたのよね。みっつ、水は煮沸して飲みさえすれば害は無さそう。20日以上飲んできたから少なくとも短期的に健康に被害は無いわね。ただし、今のところ生水を飲む勇気はないわ。よっつ、嬉しいのは動物の肉も食べて平気だったの。これはとっても助かる。成長期のあたしに肉は絶対に必要だもの。ただそう言ったら揺さんに可哀そうなものを見る目で見られてしまったのよね。解せぬ。
そうそう、最近あたし達はお互いの呼び方を変えたの。これからいつまでかわからない間バディとして過ごすなら、もっとお互いの距離を縮めたほうがいいからってあたしが提案したの。だから今あたしは影井さんの事を揺さんって呼ぶし、瑶さんには、あたしのことを朝未って呼んでもらっているのよね。やっぱり呼び方が変わるとぐっと親近感が増したから、これは成功だったと思うの。
そしてそしてなんと今あたしの手には弓矢があるの。あたしが近接戦闘をしなくていいようにって、これも揺さんが木を切って削って作ってくれたのよね。弦はどうするのかしらって思ったのだけど、木の皮を叩いてほぐして作ってくれたわ。矢も細い木と落ちていた鳥の羽で作ってくれたのよね。練習用に10本。狩り用に20本。あたしの力だとあまり遠くまで飛ばなかったけど、どのみちそんな遠くの目標には当たらないものいいわ。矢筒も竹と木の皮で作ってくれたのよね。まあ、慣れてきたからか段々遠くまで飛ばせるようになってきたのだけど。今は飛ばすだけなら50メートルは飛ぶわね。当たらないけれど。クスン。
それにしても揺さんて本当に現代人かしら。サバイバル適性が高すぎるわよね。あたしはそれで助かっているので文句は全くないし、むしろ感謝しているのだけど。
そして今、揺さんは木に登っているのよね。この先の地形を少しでも確認しているって言ってたわ。その間あたしは暇になるので弓の練習中よ。毎日練習しているから10メートルくらいの距離においた直径50センチくらいの止まった的なら半分くらい当たるようになったのよ。昨日の狩りでは先制攻撃で1発当てたんだから。
「朝未、大分上手になったね」
ビクッとして狙ったところからかなりズレたところに矢が飛んで行ってしまったわ。向こうのほうでカツンと硬い音がして木か何かに当たったの分かるわね。
「か、瑶さん。驚かさないでくださいよ」
あたしが頬を膨らませて抗議すると揺さんはなんとなく目を泳がせて右手で頭の裏をかいているわね。
「いやあ、すまなかった。まさかそこまで集中しているとは思わず。でも実戦では周りの様子にも気を配らないといけないからね」
くっ、ど正論に反論ができないじゃないの。となれば話をそらすしかないわね。
「それで、上から見てどうでした?」
何か気付いたみたいだけど良いわよね。
「あと2、3日で平野に出られると思う。向こうに山の影がなくなったからね。あとは今まで通り川に沿って川下に向かおう。この川なら近くに文明があれば何かあると思うから」
「早く、この世界の文明を確認したいですよね。あ、あたし向こうに飛ばしてしまった矢を回収してきます」
「ああ、私も荷物をまとめておくよ」
的をそれた矢は少し離れたところの木に突き刺さっていたわ。最初の頃に比べるとあたしの弓の力も随分と強くなったのね。最初は木に刺さるなんてこと無かったもの。やっぱりコツをつかむと違うのね。
あたしは矢をどうにか木から引き抜いて回収すると瑶さんが荷物をまとめている場所に戻った。
そしてあたし達は、また川沿いを下っていく。
川幅が広くなり既に両側の河川敷まで含めるなら500メートルにせまる大きさとなった川面を見ながら瑶さんは期待を口にしたわ。実際文明が無かったなら、あたし達は2人きりで見知らぬ世界で生きていかないといけないのよね。瑶さんの事は信頼しているし一緒にいることは苦にならないけど、2人きりというのはさすがに色々な意味で辛いわ。年齢差を考えたら最後の数十年を1人で生きないといけなくなってしまうもの。そんなことになったらあたしきっと気が狂ってしまうわ。そこまで考えてフッと気づいたのは瑶さんは男性であたしは女性ということ。そうね、もし文明が無ければきっと……。想像して、うん不思議と嫌悪感なくて嫌ではないわ。でも今はまだそういう時期じゃないわね。それに瑶さんも今のところあたしを女性としては見ていないように思えるもの。
そしてその4日後、あたし達は森を抜けた。
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