JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

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異世界文明との接触

第45話 勇者たちを……

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「おーい、ヴェルマー!。わたしだミーガンだ。瑶様と朝未様の武器防具が仕上がったと聞いてきたわよ」

前回と同じようにミーガンさんが大声で呼んで、しばらくしたところでヴェルマーさんがのっそりと出てきたわね。あら、ちょっと寝不足なのかしら目をショボショボさせているわね。

「おう、奥に準備してあるぞ。入ってこい」

ヴェルマーさんの後ろについていった部屋で見回すと、あたし達が注文した武器防具が並べてあるわね。

「まず、これがチェインメイル。大きさが違うからどっちがどっちかを間違うことはないだろう。とりあえず着け方を教えるが、本来は鎧下を着てから装備するもんだからな忘れるなよ」

あら、腰のところをベルトで止めるのね。上から被るだけかと思っていたわ。

「嬢ちゃん、腰のベルトを不思議そうに見てるが、これのあるなしで疲れ方が違うからな」

それから一通り装備方法や自分でできる手入れの方法を教わって、今日のところは革袋に入れて持ち帰る事になったの。

「さて、次はアリアネのとこですね。先日、最終調整もして完成してるそうですから」


アリアネさんの工房で、手袋やブーツ、皮鎧を試着して合っていることを確認して受け取ったの。特にブーツが数日前の仮合わせの時と比べて随分と現代風なものに変わっていてびっくりしたわ。快適になっていたのだから文句はないのだけど。

「さて、これで最低限の装備は揃ったわけだけど」

宿に戻ると瑶さんと打ち合わせを始めたの。

「当面はこのエルリックを拠点にして、ハンターとして日銭を稼ぎつつ、商業ギルドでこの世界の常識や言葉や読み書きを勉強するでいいね?」
「そう、ですね。でも言葉ってどのくらいで覚えられるのかしら?」
「元の世界でなら近い言語を知っていれば最低限なら半年からかな。あとはこの世界に来て高性能になった身体の物覚えがどのくらい高性能か、だね」
「そ、そうですね。この数日の勉強の感じからすると随分と高性能になっている気はするんですけど」

実際、この国の文字は表音文字なので文字数こそ少ないけど、初日で表記方法をほぼ覚えられて自分に驚いたもの。あとは、言葉そのものと同時に常識を覚えないとね。あ、そうだ。

「あの気になっていることがあるのだけど」
「気になっている事?なんだい?」

「トランルーノ聖王国が勇者召還をしたってミーガンさんもカトリンさんも言ってたでしょう。あれが気になっていて」
「そのことについては私も少しばかり思うところはあるけど、具体的に朝未はどんなふうに気になっているのかな?」

「そうですね。具体的にはタイミングですね。あたし達がこの世界に来てそろそろ2カ月ですよね。噂を総合すると勇者召還もちょうどその頃みたいじゃないですか」
「そうだね。それで?」
「ひょっとしたら、ですけど。あたし達ってその勇者召還のとばっちりを受けてこの世界に来ちゃったのかなって。そして、もしそうなら召喚された勇者ってあたしたちのいた世界から連れてこられた人たちなのかもって思ったんです」
「朝未もそう思うの?」
「ええ、それにこの世界に来た時、瑶さんが言ったことを思い出したんです」
「私が言った事?」

「あたしの後ろにいた高校生3人を中心に何かが光って、瑶さんがあたしを助けようとしてくれたってこと。ひょっとしたら、その光が勇者召喚の力だったのかもしれないって。瑶さんが庇ってくれたからあたし達はトランルーノ聖王国に取り込まれずに済んだのかもしれないって。なら今トランルーノ聖王国にいる勇者ってその時の高校生達なのかもしれないって」
「私も、その可能性が高いと思っているよ。そしてそれが本当なら彼らも私達と同じく高性能な身体を手に入れている可能性が高い。ただ、カトリンさんの言っていたことが本当なら彼らは隷属の魔法道具によって戦争の道具にされている可能性が高いね」

「やっぱり。それなら……」
「助けに行くとでも言うのかい?」
「え?」
「現状、確かに私達の身体は高性能になっているのは間違いないね。でも国の軍隊を相手に出来るほどかな?」

なんで軍隊を相手にすることに?

「ここは物語の世界じゃないよ。国の最大戦力になる3人に簡単に近づけるとは思えない」
「じゃ、じゃあ同じ世界から連れてこられて苦しんでいる人たちを放っておくの?」

”パシン”
え?今何が起きたの。
あ、瑶さんがあたしの頬を叩いた?

「朝未。冷静になりなさい。私だって本当に私たちと同じ世界の人間なら助けてあげたいとは思う。でも、現状では無理だよ。今の私たちはちょっとだけ一般人より強いだけの下級ハンターでしかない。この世界の常識も分からないし、トランルーノ聖王国の情報も何も知らない。協力者だって必要だよ。ミーガンさんは良くしてくれているけど、さすがに国に喧嘩を売るとなれば味方をしてくれるとは思えない。今のまま助けに行っても無駄に死ぬか、逆につかまって私達も隷属させられるのがおちだよ。そうなっては彼らを助けることも出来ない」

「じ、じゃあどうすれば良いの?勇者として使い潰されるのを黙って指をくわえてみてろっていうの?」

「朝未。何度も言うけれど冷静になりなさい。大丈夫。彼らはある意味切り札のはず。国に逆らうような事をしなければ当面は安全だよ。その逆らうっていうのも隷属化されていれば無茶な逆らいかたは出来ないだろうから」

「本当?」

「多分ね。だからまずは私たちは力を付けること、そしてこの世界の常識を覚える事、そしてトランルーの聖王国の情報を集める事。そこから始めよう」
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