JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

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新天地へ

第89話 また来た

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夜中、あたしの見張りの順番の時、探知魔法を展開したまま、朝食用のパン生地の準備をしていた。そして、ちょうど1次発酵のために鍋に生地を入れようとしたタイミングで探知魔法に反応があった。動きからして動物の類じゃないわね、一直線にこちらに向かってくる感じでもないから魔獣とも違いそう。となれば盗賊の可能性が高そうね。まだ距離はあるし、あたしは、鍋をしまって、自分にクリーンを掛けた。

「瑶さん。多分盗賊が近づいてきています。距離はあちらに約200メートル、数は12人です。どうしましょう?」
「200メートルとなると、気付いたことをこちらでも知らせるには少し早いね。向こうの会話を聞いておいてくれるかな?私はいくつか簡単な罠を仕掛けてくる。どのみちこっちから何かするには遠すぎるしね」


ウィンドイヤーに注意を傾け盗賊見込みの集団の会話を拾ってみると、まだ遠いからと油断しているのか、いろいろしゃべってる。
どうやら、かなり遠くで焚火の光を見つけて当たりをつけてきたみたいね。弓使いが3人いて、最初に見張りを弓矢で始末して、さらに火矢を射かけてくる予定なのね。そして混乱に乗じて襲ってくると。盗賊のくせにいやらしい作戦たててくるものだわ。
それにしても、また対人戦。人相手の殺し合いなのね。
この世界に転移して、エルリックでこの世界の常識を学んで、覚悟を決めていたはずだったのだけど、初の対人戦では情けないところを見せて、自分の覚悟がまだ甘かったのは感じたけど、やらなければやられるのがこの世界なのよね。
そんなことを考えていたら瑶さんが戻ってきたわ。

「で、朝未。あとどのくらいの位置にいる?」
「あと100メートルってところですね。森の切れ目まできたところであたしと瑶さんに矢を射かけて、続けて火矢でテントを焼く手はずになってます」
「ああ、矢かあ。夜に矢は面倒だなあ」
「そうですね。明るい時間帯なら普通の矢くらい叩き落せますからね」
「それに火矢ってのも面倒だね。叩き落しても火は残るから」
「火矢って油か何かを使うんですよね。そうなると相手の手元で落としても火事が怖いですよね」
「うーん、相手が火を使うってわかっていると……。朝未、火矢がなくなるまでは魔法は水属性メインで、そのあとも油への引火がいやらしいから、火属性魔法は今回やめておいてくれるかな」
「そうですね。相手も最初は森の中ですし、流れ魔法が森を燃やしても面倒ですね。生木だけなら簡単には燃えないんですけどね」

「じゃあ、私は見回りに出て気付いたことにしてみんなを起こしてくるよ」

そこからは流れるようにあっという間だったの。
瑶さんに指示された場所に向かって中級の水属性魔法アイスランスをばらまくように打ち込み、盗賊を罠のあるエリアに追い込み、盗賊が混乱している間に貫く剣が包囲してあっという間に倍以上の数の盗賊を打倒し追い散らした。半分以上逃がしたけど討伐でなく護衛なのでこれで正解なのだとか。あたしとしても今回近接戦闘をしなくて済んだのは精神的に助かったのは間違いないのでそれ以上は突っ込むのはやめておいたの。

「マルタさん、とりあえず今夜はもう襲ってくることはないでしょう。まだ休む時間はあります。馬車でおやすみください。天使ちゃんとヨウも見張りは交代でいいぞ。朝まで休んでくれ」
「フアンさん、ありがとうございます。じゃあ、遠慮なく休ませてもらいますね」

あたしと瑶さんは割り当てられているテントに一緒に入っていった。
最近では、瑶さんと一緒の毛布にくるまって寝るのが当たり前になっていて、瑶さんの胸に甘えて寝させてもらっているのよね。試しに一度一人で寝てみようとしたこともあるのだけど、不安と恐怖で寝るどころじゃなかったの。その時の様子を瑶さんに見られてから瑶さんもあたしに夜ひとりで寝るようには言わなくなった。マルティナさんとふたりでならと思ったこともあったけど、だめだったし。瑶さんはただ、『朝未が安心できるように守るよ』と言ってくれたの。今は同じテント内でマルティナさんも寝てるので周りからはとりあえず変なことは言われてないと思う。

そのあとは特にまた盗賊が襲ってくるようなイベントもなく、あたしは朝食の準備中。買ってきた肉でステーキにして軽く切れ目を入れ、夜の間に仕込んでおいたパン生地を焼いたプレーンなパンに挟んでいく。味付けは塩と香辛料、それに野営地近くで摘んできたハーブ。この世界のハーブなんて知らないから何となくそれっぽいものを摘んで匂いをかいで、よさげなものを口に入れて食べてよさそうか確認して使ってる。どうやらあたしには毒耐性があるみたいで毒のある草を食べてもちょっと口が痺れるだけだけど、さすがに他の人の食事に使うわけにはいかないものね。

そんなことを考えながら準備を進めていたら、ふっとマルティナさんと一緒にハーブを摘んでいた時のことを思い出した。あたしが適当に匂いを確認しては口に入れているのを見て『それ毒草です』なんて言って慌てて吐き出させようとしてたわね。あたしが平気な顔してるのを見てマルティナさんは自分でも食べて、途端に苦しみだしたのよね。慌ててキュアポイズンで解毒してあげることになったんだっけ。あのことが無かったら、あたしきっと自分が毒耐性あるなんて思いもしなかったわね。その流れで瑶さんにも毒耐性があるってわかって、最初の1カ月に食べたものにきっと普通の人だったら死んじゃうような毒物もあったかもって怖くなったり笑ったりしたのよね。

「さて出来た。これでお昼のお弁当まではできたから、今日はしっかり護衛のお仕事できそうね」
「あ、アサミ様。できたのですね。片付けとお運びは、わたしがさせていただきます。アサミ様は少しでもお休みください」

マルティナさんが、そういって、出来上がった朝ごはんと、お昼のお弁当、それに夕飯用に分けたパンまで仕分けをしてそれぞれを持って行ってくれた。出来上がってすぐに来てくれたってことはずっと見ていたのかしら。でも、何か嬉しそうにしてるのでお願いしてしまおうかしら。
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