89 / 155
新天地へ
第89話 また来た
しおりを挟む
夜中、あたしの見張りの順番の時、探知魔法を展開したまま、朝食用のパン生地の準備をしていた。そして、ちょうど1次発酵のために鍋に生地を入れようとしたタイミングで探知魔法に反応があった。動きからして動物の類じゃないわね、一直線にこちらに向かってくる感じでもないから魔獣とも違いそう。となれば盗賊の可能性が高そうね。まだ距離はあるし、あたしは、鍋をしまって、自分にクリーンを掛けた。
「瑶さん。多分盗賊が近づいてきています。距離はあちらに約200メートル、数は12人です。どうしましょう?」
「200メートルとなると、気付いたことをこちらでも知らせるには少し早いね。向こうの会話を聞いておいてくれるかな?私はいくつか簡単な罠を仕掛けてくる。どのみちこっちから何かするには遠すぎるしね」
ウィンドイヤーに注意を傾け盗賊見込みの集団の会話を拾ってみると、まだ遠いからと油断しているのか、いろいろしゃべってる。
どうやら、かなり遠くで焚火の光を見つけて当たりをつけてきたみたいね。弓使いが3人いて、最初に見張りを弓矢で始末して、さらに火矢を射かけてくる予定なのね。そして混乱に乗じて襲ってくると。盗賊のくせにいやらしい作戦たててくるものだわ。
それにしても、また対人戦。人相手の殺し合いなのね。
この世界に転移して、エルリックでこの世界の常識を学んで、覚悟を決めていたはずだったのだけど、初の対人戦では情けないところを見せて、自分の覚悟がまだ甘かったのは感じたけど、やらなければやられるのがこの世界なのよね。
そんなことを考えていたら瑶さんが戻ってきたわ。
「で、朝未。あとどのくらいの位置にいる?」
「あと100メートルってところですね。森の切れ目まできたところであたしと瑶さんに矢を射かけて、続けて火矢でテントを焼く手はずになってます」
「ああ、矢かあ。夜に矢は面倒だなあ」
「そうですね。明るい時間帯なら普通の矢くらい叩き落せますからね」
「それに火矢ってのも面倒だね。叩き落しても火は残るから」
「火矢って油か何かを使うんですよね。そうなると相手の手元で落としても火事が怖いですよね」
「うーん、相手が火を使うってわかっていると……。朝未、火矢がなくなるまでは魔法は水属性メインで、そのあとも油への引火がいやらしいから、火属性魔法は今回やめておいてくれるかな」
「そうですね。相手も最初は森の中ですし、流れ魔法が森を燃やしても面倒ですね。生木だけなら簡単には燃えないんですけどね」
「じゃあ、私は見回りに出て気付いたことにしてみんなを起こしてくるよ」
そこからは流れるようにあっという間だったの。
瑶さんに指示された場所に向かって中級の水属性魔法アイスランスをばらまくように打ち込み、盗賊を罠のあるエリアに追い込み、盗賊が混乱している間に貫く剣が包囲してあっという間に倍以上の数の盗賊を打倒し追い散らした。半分以上逃がしたけど討伐でなく護衛なのでこれで正解なのだとか。あたしとしても今回近接戦闘をしなくて済んだのは精神的に助かったのは間違いないのでそれ以上は突っ込むのはやめておいたの。
「マルタさん、とりあえず今夜はもう襲ってくることはないでしょう。まだ休む時間はあります。馬車でおやすみください。天使ちゃんとヨウも見張りは交代でいいぞ。朝まで休んでくれ」
「フアンさん、ありがとうございます。じゃあ、遠慮なく休ませてもらいますね」
あたしと瑶さんは割り当てられているテントに一緒に入っていった。
最近では、瑶さんと一緒の毛布にくるまって寝るのが当たり前になっていて、瑶さんの胸に甘えて寝させてもらっているのよね。試しに一度一人で寝てみようとしたこともあるのだけど、不安と恐怖で寝るどころじゃなかったの。その時の様子を瑶さんに見られてから瑶さんもあたしに夜ひとりで寝るようには言わなくなった。マルティナさんとふたりでならと思ったこともあったけど、だめだったし。瑶さんはただ、『朝未が安心できるように守るよ』と言ってくれたの。今は同じテント内でマルティナさんも寝てるので周りからはとりあえず変なことは言われてないと思う。
そのあとは特にまた盗賊が襲ってくるようなイベントもなく、あたしは朝食の準備中。買ってきた肉でステーキにして軽く切れ目を入れ、夜の間に仕込んでおいたパン生地を焼いたプレーンなパンに挟んでいく。味付けは塩と香辛料、それに野営地近くで摘んできたハーブ。この世界のハーブなんて知らないから何となくそれっぽいものを摘んで匂いをかいで、よさげなものを口に入れて食べてよさそうか確認して使ってる。どうやらあたしには毒耐性があるみたいで毒のある草を食べてもちょっと口が痺れるだけだけど、さすがに他の人の食事に使うわけにはいかないものね。
そんなことを考えながら準備を進めていたら、ふっとマルティナさんと一緒にハーブを摘んでいた時のことを思い出した。あたしが適当に匂いを確認しては口に入れているのを見て『それ毒草です』なんて言って慌てて吐き出させようとしてたわね。あたしが平気な顔してるのを見てマルティナさんは自分でも食べて、途端に苦しみだしたのよね。慌ててキュアポイズンで解毒してあげることになったんだっけ。あのことが無かったら、あたしきっと自分が毒耐性あるなんて思いもしなかったわね。その流れで瑶さんにも毒耐性があるってわかって、最初の1カ月に食べたものにきっと普通の人だったら死んじゃうような毒物もあったかもって怖くなったり笑ったりしたのよね。
「さて出来た。これでお昼のお弁当まではできたから、今日はしっかり護衛のお仕事できそうね」
「あ、アサミ様。できたのですね。片付けとお運びは、わたしがさせていただきます。アサミ様は少しでもお休みください」
マルティナさんが、そういって、出来上がった朝ごはんと、お昼のお弁当、それに夕飯用に分けたパンまで仕分けをしてそれぞれを持って行ってくれた。出来上がってすぐに来てくれたってことはずっと見ていたのかしら。でも、何か嬉しそうにしてるのでお願いしてしまおうかしら。
「瑶さん。多分盗賊が近づいてきています。距離はあちらに約200メートル、数は12人です。どうしましょう?」
「200メートルとなると、気付いたことをこちらでも知らせるには少し早いね。向こうの会話を聞いておいてくれるかな?私はいくつか簡単な罠を仕掛けてくる。どのみちこっちから何かするには遠すぎるしね」
ウィンドイヤーに注意を傾け盗賊見込みの集団の会話を拾ってみると、まだ遠いからと油断しているのか、いろいろしゃべってる。
どうやら、かなり遠くで焚火の光を見つけて当たりをつけてきたみたいね。弓使いが3人いて、最初に見張りを弓矢で始末して、さらに火矢を射かけてくる予定なのね。そして混乱に乗じて襲ってくると。盗賊のくせにいやらしい作戦たててくるものだわ。
それにしても、また対人戦。人相手の殺し合いなのね。
この世界に転移して、エルリックでこの世界の常識を学んで、覚悟を決めていたはずだったのだけど、初の対人戦では情けないところを見せて、自分の覚悟がまだ甘かったのは感じたけど、やらなければやられるのがこの世界なのよね。
そんなことを考えていたら瑶さんが戻ってきたわ。
「で、朝未。あとどのくらいの位置にいる?」
「あと100メートルってところですね。森の切れ目まできたところであたしと瑶さんに矢を射かけて、続けて火矢でテントを焼く手はずになってます」
「ああ、矢かあ。夜に矢は面倒だなあ」
「そうですね。明るい時間帯なら普通の矢くらい叩き落せますからね」
「それに火矢ってのも面倒だね。叩き落しても火は残るから」
「火矢って油か何かを使うんですよね。そうなると相手の手元で落としても火事が怖いですよね」
「うーん、相手が火を使うってわかっていると……。朝未、火矢がなくなるまでは魔法は水属性メインで、そのあとも油への引火がいやらしいから、火属性魔法は今回やめておいてくれるかな」
「そうですね。相手も最初は森の中ですし、流れ魔法が森を燃やしても面倒ですね。生木だけなら簡単には燃えないんですけどね」
「じゃあ、私は見回りに出て気付いたことにしてみんなを起こしてくるよ」
そこからは流れるようにあっという間だったの。
瑶さんに指示された場所に向かって中級の水属性魔法アイスランスをばらまくように打ち込み、盗賊を罠のあるエリアに追い込み、盗賊が混乱している間に貫く剣が包囲してあっという間に倍以上の数の盗賊を打倒し追い散らした。半分以上逃がしたけど討伐でなく護衛なのでこれで正解なのだとか。あたしとしても今回近接戦闘をしなくて済んだのは精神的に助かったのは間違いないのでそれ以上は突っ込むのはやめておいたの。
「マルタさん、とりあえず今夜はもう襲ってくることはないでしょう。まだ休む時間はあります。馬車でおやすみください。天使ちゃんとヨウも見張りは交代でいいぞ。朝まで休んでくれ」
「フアンさん、ありがとうございます。じゃあ、遠慮なく休ませてもらいますね」
あたしと瑶さんは割り当てられているテントに一緒に入っていった。
最近では、瑶さんと一緒の毛布にくるまって寝るのが当たり前になっていて、瑶さんの胸に甘えて寝させてもらっているのよね。試しに一度一人で寝てみようとしたこともあるのだけど、不安と恐怖で寝るどころじゃなかったの。その時の様子を瑶さんに見られてから瑶さんもあたしに夜ひとりで寝るようには言わなくなった。マルティナさんとふたりでならと思ったこともあったけど、だめだったし。瑶さんはただ、『朝未が安心できるように守るよ』と言ってくれたの。今は同じテント内でマルティナさんも寝てるので周りからはとりあえず変なことは言われてないと思う。
そのあとは特にまた盗賊が襲ってくるようなイベントもなく、あたしは朝食の準備中。買ってきた肉でステーキにして軽く切れ目を入れ、夜の間に仕込んでおいたパン生地を焼いたプレーンなパンに挟んでいく。味付けは塩と香辛料、それに野営地近くで摘んできたハーブ。この世界のハーブなんて知らないから何となくそれっぽいものを摘んで匂いをかいで、よさげなものを口に入れて食べてよさそうか確認して使ってる。どうやらあたしには毒耐性があるみたいで毒のある草を食べてもちょっと口が痺れるだけだけど、さすがに他の人の食事に使うわけにはいかないものね。
そんなことを考えながら準備を進めていたら、ふっとマルティナさんと一緒にハーブを摘んでいた時のことを思い出した。あたしが適当に匂いを確認しては口に入れているのを見て『それ毒草です』なんて言って慌てて吐き出させようとしてたわね。あたしが平気な顔してるのを見てマルティナさんは自分でも食べて、途端に苦しみだしたのよね。慌ててキュアポイズンで解毒してあげることになったんだっけ。あのことが無かったら、あたしきっと自分が毒耐性あるなんて思いもしなかったわね。その流れで瑶さんにも毒耐性があるってわかって、最初の1カ月に食べたものにきっと普通の人だったら死んじゃうような毒物もあったかもって怖くなったり笑ったりしたのよね。
「さて出来た。これでお昼のお弁当まではできたから、今日はしっかり護衛のお仕事できそうね」
「あ、アサミ様。できたのですね。片付けとお運びは、わたしがさせていただきます。アサミ様は少しでもお休みください」
マルティナさんが、そういって、出来上がった朝ごはんと、お昼のお弁当、それに夕飯用に分けたパンまで仕分けをしてそれぞれを持って行ってくれた。出来上がってすぐに来てくれたってことはずっと見ていたのかしら。でも、何か嬉しそうにしてるのでお願いしてしまおうかしら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる