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力をつけるために
第126話 格の違い②
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「ふ、ふざけんな!バカにするのもいい加減にしろ!」
「いえ、別にバカにしたわけじゃないんですけどね。実際狩場での立ち回りは見事でしたし。ただあたし達には不要ってだけで」
「な、なんで知って……。いや今はそんなことじゃない。なんでなんでもアリアリだとおまえ相手にオレが何も出来ないってんだ」
いちいち説明するのも面倒ね。
「ま、論より証拠。やってみせましょ。とりあえずあたしは魔力を使わないで相手をするわ」
「ふざけんな!って言ってるだろうが。魔法なんか使う暇なくぶっとばしてやる」
「え?いえそういう意味じゃないんですけど」
どうやらレアルさんは魔力を使うイコール魔法で、魔法は延々と詠唱がいるって思ってるんでしょうね。
「うーん、瑶さん。どうしましょう?」
「そう、だね。もう模擬戦を取りやめるのは難しそうというよりも、彼がいつまでも粘着しそうだから軽く終わらせるしかないかな。戦い方としては、とりあえず魔法はやめておこうか。朝未の魔法は一般人に向けるにはちょっと問題がありすぎるからね。武器へのエンチャントも無しで。朝未がエンチャントすると木剣でも真剣とかわらなくなるからね。補助魔法は攻撃力の上がるものは無しで……」
あ、レアルさん、あたしが瑶さんと話している間にじれったくなったみたい。
「おい、いい加減にしろ。怖気づいたか?負けを認めるならやらないでやってもいいぞ」
「あら、それでいいなら負けでいいわ。最初からそれならそうといいなさいよ。はいはい、あたしの負けよ。じゃこれで帰るわね。瑶さんマルティナさん行きましょ」
「ふ、ふざけるな!貴様オレをバカにしているのか!!」
「ふぅ。まったく。バカになんかしてませんよ。あの森の奥で魔物を狩れるハンターをバカにするわけないじゃないですか。ただ……」
「ただ、なんだ!!」
「面倒くさいと思っているだけです」
「な、面倒くさい、だと……」
「だって、どっちが強いとかどうでもいいじゃないですか。それをこっちの気持ちを無視してこんなところに連れてきて」
「う、ぐっ。どっちが強くてもどうでもいいだと?ハンターにとって強さってのは……」
「別に、あたしが、あなたより強くても弱くても狩れる魔物がかわるわけじゃないですからね」
「う、ぐっ」
「プッ」
あ、後ろでマルティナさんが吹き出したみたいね。瑶さんも笑いをこらえている気配があるわね。
「と言う訳で。あたしの負けということでおしまい。じゃあ帰りますね」
何も言えずに突っ立っているレアルさんをその場に残して、あたし達は家に帰った。
「おい、おまえ。オレと勝負しろ」
翌日、あたし達が狩りを終えてハンターギルドに清算に行くと、獣耳に尻尾を揺らしたハンターレアルさんが待ち構えていた。
「もう、あたしの負けってことで話はついたじゃないの。その辺りの人に言いふらしてもいいですよ。そうすればレアルさんの面子も立つでしょ」
「面子のもんだいじゃねえ。おまえ本当はオレより強いって思ってるだろう。それが気に入らねえ」
「あたしが?仮にあたしが、レアルさんよりあたしの方が強いと思っていたとしてレアルさん自身の強さに何か関係ありますか?他人が心の中でどう思っているかなんかどうでもいいのではないですか?」
「違う。心の底から強いと思わせる。それがハンターには必要なんだ」
「うーん、あたしには理解できないですが、レアルさんにとってはそうなんでしょうね。でも、他人の心の中なんてわかるものじゃないと思うんですよね」
「な……」
「だって、そんな心の中が本当にわかるのなら騙される人なんていなくなるでしょ?」
「でも、オレは……」
「あたしが本当にどう思っているかを知りたいのではなくて、レアルさんの都合の良いように思っていると信じたい。違いますか?」
「ぐっ、う、うるさい。いいから来ればいいんだ」
そう言うとレアルさんは、訓練場に足を向けた。はあ、仕方ないわね。
「瑶さん、マルティナさん、少しだけ相手してきますね」
ハンターギルドの訓練場であたしは普段使っている短剣に近いサイズの木剣を手にレアルさんと対峙している。そしてこの場になって気付いたことがあるの。
「あら、そういえば、あたしどうやって攻撃したらいいのかしら。相手が死なないような攻撃って……」
「おら、隙だらけだ。ここで向き合った段階で始まってんだよ」
あたしが悩んでいる間にレアルさんが訓練用の木剣で切りかかってきた。
仕方ないので、とりあえず木剣で受ける。
「ガキン!」
鈍い音が響きあたしとレアルさんの木剣がぶつかる。
「バ、バカな。獣人としての力を込めたオレの剣をたかが人族の小娘が正面からまともに受け止めただと」
レアルさんの言葉からすると獣人の力は普通人族が受け止められるものではないってことなのかしらね。でも高性能になったあたしの身体にはまだ余裕があるのよね。というわけで「えいっ」っとばかりにはじき返して見せる。
ふふ、驚いているわね。
「でも、この模擬戦も問題ですよね」
「な、何を言い出す」
「だってレアルさんって前衛の剣士でしょう?あたし基本は後衛の魔法使いですよ。戦い方がかみ合わないですよ」
あ、レアルさんの顔色が真っ赤になったわ。向こうで見ているマルティナさんは苦笑しているわね。あたし何かおかしなこと言った?
「う、うそをつくな。魔法使いが、オレの剣を受けられるわけが……」
「こんなことでうそを言ってもしかたないでしょう。証拠に……。ファイヤーアロー」
レアルさんの足元に最低限の魔力に絞ったファイヤーアローを落とす。
「な、ん、で、魔法使いが剣を……。しかも無詠唱……」
「魔法使いだって近接されることありますからね。基本はその時の備えです。それで何度ケガをしたことか……」
「ぷっ。アサミ様、アサミ様の剣は既に備えというレベルを超えていますよ。それを備え程度と言われては前衛の剣士はたまったものではありません」
あたしとレアルさんのやりとりに後ろからマルティナさんが吹き出しながら口を挟んできた。
「でも、前衛として足りるほどではないですよね。実際瑶さんもマルティナさんも前衛としてあたしよりずっと強いじゃないですか」
「いえ、別にバカにしたわけじゃないんですけどね。実際狩場での立ち回りは見事でしたし。ただあたし達には不要ってだけで」
「な、なんで知って……。いや今はそんなことじゃない。なんでなんでもアリアリだとおまえ相手にオレが何も出来ないってんだ」
いちいち説明するのも面倒ね。
「ま、論より証拠。やってみせましょ。とりあえずあたしは魔力を使わないで相手をするわ」
「ふざけんな!って言ってるだろうが。魔法なんか使う暇なくぶっとばしてやる」
「え?いえそういう意味じゃないんですけど」
どうやらレアルさんは魔力を使うイコール魔法で、魔法は延々と詠唱がいるって思ってるんでしょうね。
「うーん、瑶さん。どうしましょう?」
「そう、だね。もう模擬戦を取りやめるのは難しそうというよりも、彼がいつまでも粘着しそうだから軽く終わらせるしかないかな。戦い方としては、とりあえず魔法はやめておこうか。朝未の魔法は一般人に向けるにはちょっと問題がありすぎるからね。武器へのエンチャントも無しで。朝未がエンチャントすると木剣でも真剣とかわらなくなるからね。補助魔法は攻撃力の上がるものは無しで……」
あ、レアルさん、あたしが瑶さんと話している間にじれったくなったみたい。
「おい、いい加減にしろ。怖気づいたか?負けを認めるならやらないでやってもいいぞ」
「あら、それでいいなら負けでいいわ。最初からそれならそうといいなさいよ。はいはい、あたしの負けよ。じゃこれで帰るわね。瑶さんマルティナさん行きましょ」
「ふ、ふざけるな!貴様オレをバカにしているのか!!」
「ふぅ。まったく。バカになんかしてませんよ。あの森の奥で魔物を狩れるハンターをバカにするわけないじゃないですか。ただ……」
「ただ、なんだ!!」
「面倒くさいと思っているだけです」
「な、面倒くさい、だと……」
「だって、どっちが強いとかどうでもいいじゃないですか。それをこっちの気持ちを無視してこんなところに連れてきて」
「う、ぐっ。どっちが強くてもどうでもいいだと?ハンターにとって強さってのは……」
「別に、あたしが、あなたより強くても弱くても狩れる魔物がかわるわけじゃないですからね」
「う、ぐっ」
「プッ」
あ、後ろでマルティナさんが吹き出したみたいね。瑶さんも笑いをこらえている気配があるわね。
「と言う訳で。あたしの負けということでおしまい。じゃあ帰りますね」
何も言えずに突っ立っているレアルさんをその場に残して、あたし達は家に帰った。
「おい、おまえ。オレと勝負しろ」
翌日、あたし達が狩りを終えてハンターギルドに清算に行くと、獣耳に尻尾を揺らしたハンターレアルさんが待ち構えていた。
「もう、あたしの負けってことで話はついたじゃないの。その辺りの人に言いふらしてもいいですよ。そうすればレアルさんの面子も立つでしょ」
「面子のもんだいじゃねえ。おまえ本当はオレより強いって思ってるだろう。それが気に入らねえ」
「あたしが?仮にあたしが、レアルさんよりあたしの方が強いと思っていたとしてレアルさん自身の強さに何か関係ありますか?他人が心の中でどう思っているかなんかどうでもいいのではないですか?」
「違う。心の底から強いと思わせる。それがハンターには必要なんだ」
「うーん、あたしには理解できないですが、レアルさんにとってはそうなんでしょうね。でも、他人の心の中なんてわかるものじゃないと思うんですよね」
「な……」
「だって、そんな心の中が本当にわかるのなら騙される人なんていなくなるでしょ?」
「でも、オレは……」
「あたしが本当にどう思っているかを知りたいのではなくて、レアルさんの都合の良いように思っていると信じたい。違いますか?」
「ぐっ、う、うるさい。いいから来ればいいんだ」
そう言うとレアルさんは、訓練場に足を向けた。はあ、仕方ないわね。
「瑶さん、マルティナさん、少しだけ相手してきますね」
ハンターギルドの訓練場であたしは普段使っている短剣に近いサイズの木剣を手にレアルさんと対峙している。そしてこの場になって気付いたことがあるの。
「あら、そういえば、あたしどうやって攻撃したらいいのかしら。相手が死なないような攻撃って……」
「おら、隙だらけだ。ここで向き合った段階で始まってんだよ」
あたしが悩んでいる間にレアルさんが訓練用の木剣で切りかかってきた。
仕方ないので、とりあえず木剣で受ける。
「ガキン!」
鈍い音が響きあたしとレアルさんの木剣がぶつかる。
「バ、バカな。獣人としての力を込めたオレの剣をたかが人族の小娘が正面からまともに受け止めただと」
レアルさんの言葉からすると獣人の力は普通人族が受け止められるものではないってことなのかしらね。でも高性能になったあたしの身体にはまだ余裕があるのよね。というわけで「えいっ」っとばかりにはじき返して見せる。
ふふ、驚いているわね。
「でも、この模擬戦も問題ですよね」
「な、何を言い出す」
「だってレアルさんって前衛の剣士でしょう?あたし基本は後衛の魔法使いですよ。戦い方がかみ合わないですよ」
あ、レアルさんの顔色が真っ赤になったわ。向こうで見ているマルティナさんは苦笑しているわね。あたし何かおかしなこと言った?
「う、うそをつくな。魔法使いが、オレの剣を受けられるわけが……」
「こんなことでうそを言ってもしかたないでしょう。証拠に……。ファイヤーアロー」
レアルさんの足元に最低限の魔力に絞ったファイヤーアローを落とす。
「な、ん、で、魔法使いが剣を……。しかも無詠唱……」
「魔法使いだって近接されることありますからね。基本はその時の備えです。それで何度ケガをしたことか……」
「ぷっ。アサミ様、アサミ様の剣は既に備えというレベルを超えていますよ。それを備え程度と言われては前衛の剣士はたまったものではありません」
あたしとレアルさんのやりとりに後ろからマルティナさんが吹き出しながら口を挟んできた。
「でも、前衛として足りるほどではないですよね。実際瑶さんもマルティナさんも前衛としてあたしよりずっと強いじゃないですか」
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