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力をつけるために
第127話 格の違い③
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「オレの剣を受けとめていながら、前衛として足りない、だと?」
「だって、あたし剣は練習こそしてるけど、まだ練習が足りないからほとんど力任せに振り回してるだけですから」
そうなのよね、日本の体育の授業で剣道あったからちょっとだけは振る練習はしたけど、この世界の剣技とは似てはいても違うみたいだし。そもそも剣道は竹刀で打ち付けるだけで切るって意識じゃなかったし。両手で持ってたし、この世界に来て本物の剣を持った時はもう身体が高性能になってたから片手で持ってたしね。
「そんなことで納得できるかああ!!」
レアルさんは叫び打ちかかってきた。残念、終わりにしてくれればよかったのに。今度は受けとめずに、避ける。さっき受け止めた時に木剣から嫌な感触があったのよね。あの調子で打ち合わせてたらきっと折れる。どっちの木剣が折れるかは分からないけど、扱いに慣れていないだけにこういうところでは、あたしの方が不利だと思うのよね。かと言ってエンチャントはダメ。エンチャントしたらあたしの持つ木剣は折れないだろうけど、あれだと多分、いえ間違いなく斬ってしまうから。
避けた態勢のまま、右手の木剣を振る。狙いは振り切った後の腕。あたしの振るった木剣はわずかに腕をかすめて空を切る。
「ったく、本当に後衛の魔法使いかよ。あの態勢からの剣速じゃねえぞ」
身体をひねって飛び退りレアルさんは油断なく構え、吐き出すようにつぶやいた。
あたしは追い打ちで足を狙う。これは剣で流された。
もう一度足を狙う。でも、これはフェイト。防ごうと剣を下ろしてきたところに腕を狙って切り上げる。
右腕、左足、右足、両足を薙ぐように……。どれも当たらない。純粋な技術ではどうしてもレアルさんには及ばない。かと言って、これ以上力を込めて打ち込むと当たった時の被害が大きくなりすぎる。
大怪我をさせたくないくて手加減をしたあたしの攻撃では、レアルさんは捕まえられない。でも、どこまでなら力を入れていいのかわからない。
それでもと、連続で打ち込み続けていると、レアルさんが止まった。
「おまえ、オレをバカにしているのか」
「いえ、そんなことは……」
「なら、なぜ手を抜く。なぜ本気で打ち込んで来ない。なぜ手足しか狙わない。なぜだ!!!」
「レアル。アサミ様はレアルに大怪我をさせないよう配慮をしてくださっているだけですよ」
あたしが何も返事を出来ないでいると後ろからマルティナさんがフォローしてくれた。
「つまり最初から、オレを下に見ているってことかよ!!」
またレアルさんがあたしに詰め寄ってくる。
「い、いえ、決してそんなことは」
「ならなんだよ。獣人が剣の模擬戦で人族の小娘に手加減されてなんてのは例え相手が強くたって赦せないんだよ」
「でも、模擬戦で大怪我とかは……」
「アサミ様。ここまで来たのなら、納得させてあげてください。ただし、エンチャントや補助魔法は無しで。それなら獣人のレアルなら死にはしないと思いますので」
マルティナさんが説得に来たわ。そして後半はあたしにしか聞こえないような小声で。でも、獣人って耳も良くない?そっとレアルさんの様子をうかがうと気付いた様子はないわね。
「わかりました。技術も何もない力任せの剣ですが、力の限りお相手します」
あたしとレアルさんは、仕切り直し、5メートルほどの距離をおいて向かい合った。
「アサミ様が、本気で立ち会われるとなれば止める人間が必要となるでしょう。そのため、わたしが判定をさせていただきます。わたしが止めた際には速やかに手を止めること。よろしいですね」
「待て、マルティナ。おまえは、元オレのパーティーメンバーとは言え、今はその小娘のパーティーメンバーだろう。公平性に欠ける。こちらからも判定者を出す。そうだなケヴィン、頼む」
「わたしが不公平な判定をするとでも?」
「そこまでは言わないが、気持ちとしてどうしてもそいつ寄りになるだろう」
「わたしの目的は、そんなところにはないんだが。良いでしょう。わたしが止めた時に不当と感じたのなら聞けばいい」
そして、マルティナさんとケヴィンさんを判定員?審判みたいなものかしらね、にして模擬戦を始めることになった。
「どちらかに実戦時に戦闘不能となる攻撃、もしくは降参の意思をもって決着とする。はじめ」
マルティナさんの「はじめ」の合図が終わる前にレアルさんが突っ込んできた。でも、今回は手加減をしないと決めた。レアルさんの突きを躱しつつ下から本気で切り上げる。今回は腕や足ではない。皮鎧で守られている腹部を狙った。
「ガフッ!!」
重い手ごたえにレアルさんが膝をつく。
「勝負あり。アサミ様の勝ちだ」
「まだだ、今のは防具の上からだ。致命傷とは認められない」
マルティナさんとケヴィンさんの判定が食い違った。どうするのかしら。あ、マルティナさんがため息をついたわね。
「レアル。まだやる?」
「あ、あたりまえだ。防具の上から1撃で落ちるなんてのは有り得ないからな」
「はあ。まあ良いでしょう。再開です。開始位置に戻って。……はじめ」
今度は突っ込んでこないわね。
なら、今度はあたしから行くしかない、か。
レアルさんの右を抜ける方向に走り、急角度に左へ進路変更しつつ下からすくい上げるように胴を薙ぐ。そしてそのまま、後ろに回り込み崩れ落ちるレアルさんの首に木剣を添えた。
「だって、あたし剣は練習こそしてるけど、まだ練習が足りないからほとんど力任せに振り回してるだけですから」
そうなのよね、日本の体育の授業で剣道あったからちょっとだけは振る練習はしたけど、この世界の剣技とは似てはいても違うみたいだし。そもそも剣道は竹刀で打ち付けるだけで切るって意識じゃなかったし。両手で持ってたし、この世界に来て本物の剣を持った時はもう身体が高性能になってたから片手で持ってたしね。
「そんなことで納得できるかああ!!」
レアルさんは叫び打ちかかってきた。残念、終わりにしてくれればよかったのに。今度は受けとめずに、避ける。さっき受け止めた時に木剣から嫌な感触があったのよね。あの調子で打ち合わせてたらきっと折れる。どっちの木剣が折れるかは分からないけど、扱いに慣れていないだけにこういうところでは、あたしの方が不利だと思うのよね。かと言ってエンチャントはダメ。エンチャントしたらあたしの持つ木剣は折れないだろうけど、あれだと多分、いえ間違いなく斬ってしまうから。
避けた態勢のまま、右手の木剣を振る。狙いは振り切った後の腕。あたしの振るった木剣はわずかに腕をかすめて空を切る。
「ったく、本当に後衛の魔法使いかよ。あの態勢からの剣速じゃねえぞ」
身体をひねって飛び退りレアルさんは油断なく構え、吐き出すようにつぶやいた。
あたしは追い打ちで足を狙う。これは剣で流された。
もう一度足を狙う。でも、これはフェイト。防ごうと剣を下ろしてきたところに腕を狙って切り上げる。
右腕、左足、右足、両足を薙ぐように……。どれも当たらない。純粋な技術ではどうしてもレアルさんには及ばない。かと言って、これ以上力を込めて打ち込むと当たった時の被害が大きくなりすぎる。
大怪我をさせたくないくて手加減をしたあたしの攻撃では、レアルさんは捕まえられない。でも、どこまでなら力を入れていいのかわからない。
それでもと、連続で打ち込み続けていると、レアルさんが止まった。
「おまえ、オレをバカにしているのか」
「いえ、そんなことは……」
「なら、なぜ手を抜く。なぜ本気で打ち込んで来ない。なぜ手足しか狙わない。なぜだ!!!」
「レアル。アサミ様はレアルに大怪我をさせないよう配慮をしてくださっているだけですよ」
あたしが何も返事を出来ないでいると後ろからマルティナさんがフォローしてくれた。
「つまり最初から、オレを下に見ているってことかよ!!」
またレアルさんがあたしに詰め寄ってくる。
「い、いえ、決してそんなことは」
「ならなんだよ。獣人が剣の模擬戦で人族の小娘に手加減されてなんてのは例え相手が強くたって赦せないんだよ」
「でも、模擬戦で大怪我とかは……」
「アサミ様。ここまで来たのなら、納得させてあげてください。ただし、エンチャントや補助魔法は無しで。それなら獣人のレアルなら死にはしないと思いますので」
マルティナさんが説得に来たわ。そして後半はあたしにしか聞こえないような小声で。でも、獣人って耳も良くない?そっとレアルさんの様子をうかがうと気付いた様子はないわね。
「わかりました。技術も何もない力任せの剣ですが、力の限りお相手します」
あたしとレアルさんは、仕切り直し、5メートルほどの距離をおいて向かい合った。
「アサミ様が、本気で立ち会われるとなれば止める人間が必要となるでしょう。そのため、わたしが判定をさせていただきます。わたしが止めた際には速やかに手を止めること。よろしいですね」
「待て、マルティナ。おまえは、元オレのパーティーメンバーとは言え、今はその小娘のパーティーメンバーだろう。公平性に欠ける。こちらからも判定者を出す。そうだなケヴィン、頼む」
「わたしが不公平な判定をするとでも?」
「そこまでは言わないが、気持ちとしてどうしてもそいつ寄りになるだろう」
「わたしの目的は、そんなところにはないんだが。良いでしょう。わたしが止めた時に不当と感じたのなら聞けばいい」
そして、マルティナさんとケヴィンさんを判定員?審判みたいなものかしらね、にして模擬戦を始めることになった。
「どちらかに実戦時に戦闘不能となる攻撃、もしくは降参の意思をもって決着とする。はじめ」
マルティナさんの「はじめ」の合図が終わる前にレアルさんが突っ込んできた。でも、今回は手加減をしないと決めた。レアルさんの突きを躱しつつ下から本気で切り上げる。今回は腕や足ではない。皮鎧で守られている腹部を狙った。
「ガフッ!!」
重い手ごたえにレアルさんが膝をつく。
「勝負あり。アサミ様の勝ちだ」
「まだだ、今のは防具の上からだ。致命傷とは認められない」
マルティナさんとケヴィンさんの判定が食い違った。どうするのかしら。あ、マルティナさんがため息をついたわね。
「レアル。まだやる?」
「あ、あたりまえだ。防具の上から1撃で落ちるなんてのは有り得ないからな」
「はあ。まあ良いでしょう。再開です。開始位置に戻って。……はじめ」
今度は突っ込んでこないわね。
なら、今度はあたしから行くしかない、か。
レアルさんの右を抜ける方向に走り、急角度に左へ進路変更しつつ下からすくい上げるように胴を薙ぐ。そしてそのまま、後ろに回り込み崩れ落ちるレアルさんの首に木剣を添えた。
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