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力をつけるために
第131話 これからの方針は
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ハンターギルドのカウンターでパオラさんが難しい顔をしている。
「スペクターにベン・ニーアですか……」
「私達も初めて見た魔物ですので多分という言葉はつきますが」
瑶さんの言葉にパオラさんは席を立った。
「すみません。少しこちらでお待ちください」
そうして連れていかれたのは、前にもギルマスターのアイノアさんと話をした部屋だった。
「ねえ、瑶さん。この部屋に連れられてきたってことはアイノアさん案件なのかしら?」
「まあ、そうなんだろうね」
「でも、ギルマスが出てくるような報告してませんよね」
「アサミ様、通常スペクターやベン・ニーアの出現はギルドマスターが判断する案件ですよ」
あたしと瑶さんが首を傾げていると、やれやれとばかりに呆れた声でマルティナさんが教えてくれた。
「そんなですか?」
「おそらく、状況確認したら領軍の派遣を要請するんじゃないでしょうか」
「え?」
領軍ってことは領主の配下よね。領主って普通は貴族だと思うの。ちょっと嬉しくない状況じゃないかしらねこれ。
「瑶さん。もし領軍が来るなら……」
「そうだね。最低でも活動休止で家に引きこもるか、できれば移動して目にとまらないようにしたいね。まあ、なんにしてもギルドマスターの話の内容次第かな」
そんな話をしながら待っていると、ドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
「お待たせしました」
予想通り、パオラさんに続いてギルドマスターのアイノアさんが入ってくる。
「ああ、いい。座っていてくれ」
あたし達が立って挨拶をしようとしたのに気付いたらしいアイノアさんが、そのまま椅子をすすめてくれた。
「で、悪いが、ここからはパオラも外してくれるか」
驚いた顔のパオラさんにアイノアさんが言葉をつづける。
「ここからの話はデリケートな内容になる可能性が高いからな、パオラも知らない方が君のためだろう」
パオラさんが、部屋を辞したところでアイノアさんが口を開いた。
「まずは、北の森の探索報告ご苦労だった」
「いえ、依頼をこなしてきただけですから」
「それで、パオラからの連絡だとスペクターとベン・ニーアが出たそうだね」
「スペクターはマルティナさんが確認してくれたので間違いありませんが、ベン・ニーアの方はわたし達の誰も今まで出会ったことがないので、多分という言葉がつきますが、それぞれ1体ですね」
瑶さんの返事にアイノアさんは眉をしかめて天井を見上げた。
「ゾンビ、スケルトン、そしてグールにスケルトンナイトときてついにスペクターとベン・ニーアか……。これはやむを得ないだろうな。領軍と神官戦士を呼ばざるを得ないか」
アイノアさんは、あたし達に聞こえない小声で呟いたつもりなのだろうけど、高性能になったのは身体能力だけではない、目もよくなった、耳もよく聞こえるようになった。だからあたし達に聞かせるつもりの無かったはずのその言葉も聞こえてしまった。それはきっと瑶さんも同じ。だからよね、ちょっと顔をしかめている。
「さて、どう話したものか……」
アイノアさんが右手の掌で口を隠すようにしながら口を開いた。
「お前たちがアンデッドの強さについての一般的な評価を知っているかどうかわからんが……。北の森の入り口付近、お前たちの言うところの第1層に現れるゾンビやスケルトンくらいなら実はそれほど問題にならない。なんなら2層で出てくるというグールやスケルトンナイトもな」
アイノアさんは、そこで一旦言葉を止める。戸惑うことなく続く言葉を待つあたし達の様子に、アイノアさんは再度口をひらいた。
「その顔は問題が分かっているようだな。そう非実体系のアンデッドが問題なんだ。それでもシャドウやレイスまでなら少数なら、いや多くても狩ってしまえば問題にはならん。魔石が他と見わけがつかないからな。しかし、スペクターやベン・ニーアはまずい。100歩譲ってベン・ニーアは実体があるから少数ならまぐれで済ませられるが、スペクターは本気でまずい」
そう言うと、アイノアさんはテーブルの上に2つの魔石をゴロリと置いた。それはあたし達が狩ったスペクターとベン・ニーアの魔石。今まで狩ったこれ以外の魔物・魔獣の魔石はすべて無色透明で大きさも5センチくらいだったけど、スペクターの魔石は青、ベン・ニーアの魔石は赤、サイズも10センチくらいと明らかに他と違っている。
「これは、私達が持ち込んだスペクターとベン・ニーアの魔石ですね」
「そうだ。明らかに他と違うのは分かるだろう?この辺りのクラスから魔石のサイズが大きくなり、色が付き始める。それも魔物によって色が決まっているんだ。つまり、これはここクリフにスペクターとベン・ニーアを狩ったハンターが存在することを証明してしまう。それに、このレベルのアンデッドが現れたとなると領主に報告せざるを得ない」
「つまり、クリフになんらかの聖属性の攻撃が出来るハンターがいることが領主にバレると?」
「さすがにそうは言わない。その辺りはうまく誤魔化すさ。ただ、その関係で、スペクターの魔石の清算は少し待ってもらいたい」
「え、ええ。そのくらいはかまいませんが……」
「ありがとう。物分かりが良くて助かるよ」
瑶さんの言葉にアイノアさんは、あからさまにホッとした表情をした。
「さて、ここからが本題なんだが。スペクターやベン・ニーアが出るとなると、領主にこいつらに対応できる戦力を出してもらうことになる。そうするとだな、おそらく領軍だけじゃなく領の騎士団、それとおそらく神官が派遣されてくる」
「そんな大事なんですか?」
「大事なんだよ。普通はな。お前達は何気なく狩ってくるが、アンデッドってのは普通は厄介なんだよ。生き物と違って死んでるから魔石以外に弱点が無い。となると動けないくらいに徹底的に破壊したうえで、魔石を取り出すか、魔石をピンポイントで壊すくらいしか斃す方法が無い。そんな戦い方が出来るハンターは、このクリフでさえ多くはいない。しかも、それは実体の無いアンデッドには通用しない。少数のシャドウやレイスが出るだけなら、その出現地点を避けるようにするって対処もありだが、スペクターやベン・ニーアだと」
「領主への報告義務があるから、そういうわけにはいかない?」
「そういうことだ」
「で、お前達がどうするか、なんだが。実際のところどうしたい?」
「どう、とは?」
「今まで通り王侯貴族や神殿を避けて活動するか、いっそ庇護を求めるかってことだな。今まで通りなら後ろ盾はハンターギルドだけだが自由がある。王侯貴族や神殿の庇護下に入れば自由は制限されるが間違いなく保護される。待遇も悪くはないと思う。まあハンターギルドとしては、今まで通りでいてもらった方が利益は大きいがな。そこはあくまでもお前達の選択だ」
アイノアさんの言葉にあたし達は顔を見合わせた。でもそんなの方針は決まってるわよね。
「スペクターにベン・ニーアですか……」
「私達も初めて見た魔物ですので多分という言葉はつきますが」
瑶さんの言葉にパオラさんは席を立った。
「すみません。少しこちらでお待ちください」
そうして連れていかれたのは、前にもギルマスターのアイノアさんと話をした部屋だった。
「ねえ、瑶さん。この部屋に連れられてきたってことはアイノアさん案件なのかしら?」
「まあ、そうなんだろうね」
「でも、ギルマスが出てくるような報告してませんよね」
「アサミ様、通常スペクターやベン・ニーアの出現はギルドマスターが判断する案件ですよ」
あたしと瑶さんが首を傾げていると、やれやれとばかりに呆れた声でマルティナさんが教えてくれた。
「そんなですか?」
「おそらく、状況確認したら領軍の派遣を要請するんじゃないでしょうか」
「え?」
領軍ってことは領主の配下よね。領主って普通は貴族だと思うの。ちょっと嬉しくない状況じゃないかしらねこれ。
「瑶さん。もし領軍が来るなら……」
「そうだね。最低でも活動休止で家に引きこもるか、できれば移動して目にとまらないようにしたいね。まあ、なんにしてもギルドマスターの話の内容次第かな」
そんな話をしながら待っていると、ドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
「お待たせしました」
予想通り、パオラさんに続いてギルドマスターのアイノアさんが入ってくる。
「ああ、いい。座っていてくれ」
あたし達が立って挨拶をしようとしたのに気付いたらしいアイノアさんが、そのまま椅子をすすめてくれた。
「で、悪いが、ここからはパオラも外してくれるか」
驚いた顔のパオラさんにアイノアさんが言葉をつづける。
「ここからの話はデリケートな内容になる可能性が高いからな、パオラも知らない方が君のためだろう」
パオラさんが、部屋を辞したところでアイノアさんが口を開いた。
「まずは、北の森の探索報告ご苦労だった」
「いえ、依頼をこなしてきただけですから」
「それで、パオラからの連絡だとスペクターとベン・ニーアが出たそうだね」
「スペクターはマルティナさんが確認してくれたので間違いありませんが、ベン・ニーアの方はわたし達の誰も今まで出会ったことがないので、多分という言葉がつきますが、それぞれ1体ですね」
瑶さんの返事にアイノアさんは眉をしかめて天井を見上げた。
「ゾンビ、スケルトン、そしてグールにスケルトンナイトときてついにスペクターとベン・ニーアか……。これはやむを得ないだろうな。領軍と神官戦士を呼ばざるを得ないか」
アイノアさんは、あたし達に聞こえない小声で呟いたつもりなのだろうけど、高性能になったのは身体能力だけではない、目もよくなった、耳もよく聞こえるようになった。だからあたし達に聞かせるつもりの無かったはずのその言葉も聞こえてしまった。それはきっと瑶さんも同じ。だからよね、ちょっと顔をしかめている。
「さて、どう話したものか……」
アイノアさんが右手の掌で口を隠すようにしながら口を開いた。
「お前たちがアンデッドの強さについての一般的な評価を知っているかどうかわからんが……。北の森の入り口付近、お前たちの言うところの第1層に現れるゾンビやスケルトンくらいなら実はそれほど問題にならない。なんなら2層で出てくるというグールやスケルトンナイトもな」
アイノアさんは、そこで一旦言葉を止める。戸惑うことなく続く言葉を待つあたし達の様子に、アイノアさんは再度口をひらいた。
「その顔は問題が分かっているようだな。そう非実体系のアンデッドが問題なんだ。それでもシャドウやレイスまでなら少数なら、いや多くても狩ってしまえば問題にはならん。魔石が他と見わけがつかないからな。しかし、スペクターやベン・ニーアはまずい。100歩譲ってベン・ニーアは実体があるから少数ならまぐれで済ませられるが、スペクターは本気でまずい」
そう言うと、アイノアさんはテーブルの上に2つの魔石をゴロリと置いた。それはあたし達が狩ったスペクターとベン・ニーアの魔石。今まで狩ったこれ以外の魔物・魔獣の魔石はすべて無色透明で大きさも5センチくらいだったけど、スペクターの魔石は青、ベン・ニーアの魔石は赤、サイズも10センチくらいと明らかに他と違っている。
「これは、私達が持ち込んだスペクターとベン・ニーアの魔石ですね」
「そうだ。明らかに他と違うのは分かるだろう?この辺りのクラスから魔石のサイズが大きくなり、色が付き始める。それも魔物によって色が決まっているんだ。つまり、これはここクリフにスペクターとベン・ニーアを狩ったハンターが存在することを証明してしまう。それに、このレベルのアンデッドが現れたとなると領主に報告せざるを得ない」
「つまり、クリフになんらかの聖属性の攻撃が出来るハンターがいることが領主にバレると?」
「さすがにそうは言わない。その辺りはうまく誤魔化すさ。ただ、その関係で、スペクターの魔石の清算は少し待ってもらいたい」
「え、ええ。そのくらいはかまいませんが……」
「ありがとう。物分かりが良くて助かるよ」
瑶さんの言葉にアイノアさんは、あからさまにホッとした表情をした。
「さて、ここからが本題なんだが。スペクターやベン・ニーアが出るとなると、領主にこいつらに対応できる戦力を出してもらうことになる。そうするとだな、おそらく領軍だけじゃなく領の騎士団、それとおそらく神官が派遣されてくる」
「そんな大事なんですか?」
「大事なんだよ。普通はな。お前達は何気なく狩ってくるが、アンデッドってのは普通は厄介なんだよ。生き物と違って死んでるから魔石以外に弱点が無い。となると動けないくらいに徹底的に破壊したうえで、魔石を取り出すか、魔石をピンポイントで壊すくらいしか斃す方法が無い。そんな戦い方が出来るハンターは、このクリフでさえ多くはいない。しかも、それは実体の無いアンデッドには通用しない。少数のシャドウやレイスが出るだけなら、その出現地点を避けるようにするって対処もありだが、スペクターやベン・ニーアだと」
「領主への報告義務があるから、そういうわけにはいかない?」
「そういうことだ」
「で、お前達がどうするか、なんだが。実際のところどうしたい?」
「どう、とは?」
「今まで通り王侯貴族や神殿を避けて活動するか、いっそ庇護を求めるかってことだな。今まで通りなら後ろ盾はハンターギルドだけだが自由がある。王侯貴族や神殿の庇護下に入れば自由は制限されるが間違いなく保護される。待遇も悪くはないと思う。まあハンターギルドとしては、今まで通りでいてもらった方が利益は大きいがな。そこはあくまでもお前達の選択だ」
アイノアさんの言葉にあたし達は顔を見合わせた。でもそんなの方針は決まってるわよね。
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