JC聖女とおっさん勇者(?)

景空

文字の大きさ
133 / 155
力をつけるために

第133話 偽装

しおりを挟む
「領軍に誤解させようって意図はわかりました。そのためには非実体系のアンデッドを選択的に討伐する必要があるのも理解しました。あとは、どうやって実行するかですが、瑶さんに、アイディアありますか?単にシャドウやレイスを斃すだけなら適当にホーリーを振り撒くだけでよさそうではありますけど」
「それだとゾンビやスケルトンといった実体系のアンデッドも一緒に斃してしまうよね」
「あ……」

そうよね。ゾンビやスケルトンは斃しちゃいけないんだったわね。

「そこでだ。シャドウやレイスを斃すのは、私やマルティナさんの剣で行おうと思う」
「え、あたしは除け者ですか?」
「いやいや、そうじゃないよ。これは私の話し方が悪かったね。朝未には、広範囲のホーリーで魔物の動きを鈍らせてほしい。そうして弱体化している間に、私とマルティナさんがシャドウやレイスを斃すというのが、今私が想定している手順なんだ」

うーん、この場合ってホーリーいるかしら?瑶さんとマルティナさんなら群れに突撃してシャドウやレイスをサクッと斃せそうなんだけど。

「ホーリー無しでもいいんじゃないかって思ってそうな顔だね」
「だって、今までの感じだとシャドウやレイスって群れに1体か2体でしたよね。瑶さんやマルティナさんがエンチャントした武器持っていけば1撃じゃないですか。防具にもエンチャントしておけば事故もないでしょう?」

「斃すだけなら、その通りだね。でも、斃して、魔石を拾って、追いかけられないところまで群れから離れるところまでセットだからね」
「魔石は、そこまで拘らなくてもいいんじゃないですか?群れから急いで離れないといけないのはわかりますけど」

「魔石も1個2個なら別に放置でも偶々取りこぼしたとされるかもしれないけど、ハンターの収入源の魔石があまり大量にあるようだと不自然だからね。それに離れるときにも、トレインで、あまり引き連れていきたくない。私達は平気でも、そこに後から別のハンターが遭遇すると危険だからね。だからゾンビやスケルトンを斃さない程度のホーリーで動きを鈍らせて実行したいんだよ。ただ、そうすると多分ゾンビやスケルトンのヘイトが朝未に集中する。そこが気に入らないところではあるんだけどね」

「瑶さん、ヘイトって言った。くふふ、やっぱりゲーマーでしたね。ま、それはおいといて、ゾンビやスケルトン相手なら、あたしはアンデッドへの特攻持ちですから気にしなくていいです」



翌日から、あたし達は北の森の浅いエリアでシャドウやレイスの狩りを始めることにした。

「瑶さん、右手奥、多分アンデッド15体の群れです。先導します」

探知魔法の反応からすれば、そろそろ見えるはず。あたしの目に見えたところで一旦木を盾にして身を隠しつつ瑶さんとマルティナさんに目標を知らせる。ここまでは、いつもと同じ。

「シャドウが1体。見えますか?」
「ああ、見える。スケルトンの向こう側にゆらゆらと立っているね」

瑶さんが返事をくれ、マルティナさんが無言で頷いた。

「では、補助魔法とエンチャント次第、範囲を広げ、強度を落とした足止め用のホーリーを撃ちます。ただ、初めての使い方なので上手く行かないかもしれません。その場合は事前の打ち合わせ通りにお願いします。シャドウ討伐後の離脱方向は後方右手、あちらの方向に」

あたしは補助魔法を掛け、マルティナさんの武器防具にエンチャントを行う。そして、瑶さんとマルティナさんと頷きを交わす。

「いきます。ホーリー」

あたしがホーリーを発動させると、いつものホーリーと比べ光度も低く色も薄いホーリーがアンデッドの群れを中心に広く覆った。そのとたん、群れの動きが鈍る。動きが遅く、ぎこちない。カクンカクンと今にも転びそうになりながら発動させたあたしを探すように周囲を見回している。
そこに瑶さんとマルティナさんが駆け込む。シャドウへのルート直線上のゾンビとスケルトン数体だけを切り飛ばしシャドウに切りかかった。

直接の攻撃を行ったにも関わらず、群れの意識はやっと見つけたあたしに向いている。予想通りね。
周囲のゾンビやスケルトンから攻撃されることなく悠々と魔石を回収した瑶さんとマルティナさんが駆け戻ってくる。あたし達は、ホーリーをそのままに後方に離脱。アンデッドの群れから距離をとる。



「もう大丈夫です。追尾をあきらめたようです」

瑶さんとマルティナさんがあたしの言葉に、足を止めた。

「初回から成功させるとは思わなかったよ。さすがは朝未だね」

瑶さんが褒めてくれながらあたしの頭をガシガシを撫でる。ちょっと嬉しいのは秘密ね。マルティナさんが何か生暖かい笑顔で見てるのは気付かないフリをしておく。

「でも、ホーリーの効果範囲から出るまでに1体落ちました。次はもう少し弱くします」

そして数回の試験を経て、アンデッドの群れの動きを抑えながら、ゾンビやスケルトンを1体も斃さない強さに調整できた。
ここからは単なる作業。4日で第2層の非実体系のアンデッドをほぼ狩りつくした。
続けて同じ手順で第3層の非実体系のアンデッド、レイスを狩る。ただ、1層2層の実体系のアンデッドを狩っていないので離脱方向が少し面倒になってきた。こまごまと方向を変えながら走る。



そんなことをして非実体系のアンデッドを狩ること20日。

「完全にではないけれど、シャドウやレイスは、ほとんどみなくなったね。予定通り、今日でクリフでの狩りを一旦中止にして、明日クリフを離れることにするよ」
「あたしとしては、本当は4層の奥も気になるんですけどね。スペクターやベン・ニーアで頭打ちなのか、もっと上位種が出るのか」
「朝未の気持ちもわからないではないけど……」
「わかってます。気になるからと言って貴族や神殿に捕捉されるようなことはしません」

そして翌日、あたし達は数カ月滞在したクリフを一旦離れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...