幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
18 / 314

第18話 「待ってる」「待ってて」

しおりを挟む
「あ、おじさん、おはようございます」
「おぉ桜ちゃんおはよう。今日は見送りに来てくれたのかな」
「はい、楓もそろそろ来ると思います。今日は空港まで、お見送りにいくつもりです」
「そうか、ありがとうね。おーい、愛翔、もう桜ちゃん来てるぞ」
呼ばれて出てくる愛翔は、大型のスーツケースと小さな旅行鞄を抱えている。
「おはよう桜。早いな」
「おはよう愛翔。だってもう3年も会えなくなるのよ。少しだけでも長く一緒にいたいもの」
そう言うといつも通り愛翔の左腕に抱きつく。
「そっか、ありがとう」
愛翔もやさしく桜の頭を撫でる。桜はへにゃりとした笑顔を見せ愛翔の胸に顔を擦り付けるように甘えている。
「おはようございます。愛翔もおはよう。あ、桜もう来てたのね、おはよう」
そう言いながら玄関先に入ってきたのは腰までの黒髪を風になびかせた綺麗系の美少女楓。当然のように楓も愛翔の腕に抱きつく。
「愛翔に抱きつくのも今日でしばらくお預けかぁ」
楓の何気ない一言に桜も顔を曇らせた。
「おいおい、しばらく会えないんだからさ。沈んだ顔じゃなく笑顔見せてよ」
愛翔が軽い言葉で流し、ふたりの頬にキスを落とす。桜と楓も笑顔になり左右から愛翔の頬にキスを返した。
「えへへ、おかえしぃ」

「へぇ、それじゃ愛翔は向こうの中学?でいいのかな、の2年生に編入するの?」
「ミドルスクールって言うらしいんだけどね、日本でいう小学校が5年生までとところと6年生までのところがあって、5年生で卒業して通うようになるんだって。そこの2年目に編入する予定。アメリカだと小学校とか中学校高校の何年生って言わずにグレード何々って言うらしいんだけど、それのグレード7。で自分で取る授業を選ぶんだと。俺は初年度はとにかく英語の勉強のつもりでそっち系を特に頑張る。で2年目3年目で他の授業を目いっぱい取って追いつく感じにすると思う」
「へぇ中学、あミドルスクールだっけ。からまるで大学みたいね」
「そ、だからこっちにいる間から選択する科目選びをしてるんだぜ。まあ色々あって面白いけどね」
そんな雑談をしながら空港までの時間を過ごす3人組とそれを微笑ましく見守る浩之。
「それじゃ、愛翔、航空会社のチェックインカウンターに行くぞ。桜ちゃんも楓ちゃんもはぐれないようにね」
チェックインカウンターで航空券やパスポートの確認をし荷物を預けた一行。
「少し時間があるからレストランで軽く何か食べようか」
浩之が誘い空港内のレストランにはいる。
「やっぱり寂しくなるな」
楓がぽつりとつぶやき桜も
「ねぇ、どうしても行かなきゃいけないの?」
「何度も話しただろう。そこは仕方ないんだよ」
そこから誰も口を開かず、沈んだ雰囲気の食事となってしまった。
それでも時間は過ぎるもので
「そろそろ時間だよ。ゲートに向かおう」
浩之の言葉におずおずと立ち上がる3人。
出国ゲート前でも口を開けず向かい合う3人に浩之は”これも青春だなぁ”と微笑ましい思いを持ち見守っている。ギリギリの時間まで待っていた浩之だったけれど、
「さ、もうゲートに入らないといけないから。愛翔、ちゃんと行ってきますを言わないと後悔するよ。桜ちゃんも楓ちゃんも笑って行ってらっしゃいと言ってやってくれると嬉しいな」
その言葉に動き出す3人。
「愛翔、元気でね」
「桜、俺がいないからって人見知りでやられ放題になるなよ」
そう言いながら、桜を抱きしめる愛翔。
「うんうん、あたしも頑張る」
桜を離し楓に向かい合う愛翔。
「楓、色々暴走した時に止めてくれてありがとう。これからは桜を守ってやってな」
そう言いやはり楓を抱き寄せる
「うん、まかせて。愛翔も向こうで頑張ってね」
楓を離し、愛翔は二人と向き合う。
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい。元気でね」
ふたりに背を向ける愛翔に桜が手を伸ばしかけ途中で止まる。それを見て楓は溜息を吐き、桜の背中を押す。
「え?」
突然の楓の行動に戸惑う桜に
「ちゃんと言葉と行動にしないと、向こうの金髪美人にとられるよ」
「う、うん。ありがとう楓」
ゲートに向かう愛翔を追って駆け出す桜。
「愛翔」
声を掛けられて、驚いたように振り向く愛翔に抱きつき言葉を絞り出す桜。
「愛翔、好き。幼馴染としてじゃなく男の子としてあたしは愛翔の事が好き」
桜の突然の告白に戸惑いながらも
「桜。俺の事を好きって言ってくれてありがとう。でも、俺は……」
愛翔の言葉をさえぎり桜が言葉を挟む
「わかってる。愛翔はまだ女の子と付き合うとか、好きになるって事が分からない。そう言ってたものね」
「うん」
「だからね、3年の間に答えを決めてきて。あたしは待ってるから」
「桜。わかった。3年できっと決めてくる。待ってて」
そう言って離れようとする愛翔を最後とばかりに抱き寄せ唇を奪う桜。
「えへ、今のは幼馴染へのキスじゃないからね。大好きな愛翔へのキスだから」
「桜……」
「ほら、飛行機乗り遅れちゃうよ」
そう言って愛翔の背中を押す桜に。
「わかった。行ってきます」
愛翔はどうにか笑顔を向け、ゲートを抜ける。
最後に振り向き手を振る愛翔に桜と楓も手を振り見送った。

愛翔の乗った飛行機が滑走路から飛び立つ。それをしんみりと眺める桜と楓。
「行っちゃった」
「うん、行っちゃったね」
「明日から愛翔いないんだ」
寂し気につぶやく桜に
「でも桜、ちゃんと言えたじゃない」
楓が桜の気分を上げようと囁く。
「うん、ありがとう。でも楓はよかったの?本当は楓だって」
「ふふ、大丈夫よ。私は愛翔と一緒。お付き合いするとか、男の子のことが好きとかよくわからないの。愛翔の事もそう、愛翔の事は好きだけど、今の私にとって愛翔はとても仲の良い幼馴染の男の子だもの。でも桜が油断してたらどうなるか分からないからね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...