幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
32 / 314

第32話 U18

しおりを挟む
「へぇ、結構いい雰囲気じゃない。ふたりはこういうところでデートしてるの?」
楓の褒め言葉に照れる藤島と理子。
「こ、こないだ偶々見つけてね」
裏通りの目立たない喫茶店。アンティーク調の落ち着いた雰囲気で楓も桜も気に入ったようだ。片隅にテレビがひっそりと置かれているだけで緩やかな時間がながれている。
「それだったらふたりの秘密の場所にするものだじゃないの?」
桜が返す。
「それも考えたんだけどね、桜や楓と話そうと思っても、学校だとジロジロ見られて落ち着かないじゃない。こういうところでだったらゆっくりおしゃべり出来るかなって思ってさ」
理子が嬉しそうに笑っている。
「ああ、あの人たちねぇ」
桜も思い当たるところがあり溜息をついた。
「人の事を動物園の熊か何かみたいにジロジロ見てくるのはやめて欲しいわね。挙句の果てに私の事をよく知りもしないくせに”好きです”とか気持ち悪いったらないわ」
楓は更に辛辣だった。
「それだから告白は全部断っているのか?」
藤島が直球の質問を投げてきた。
「それもあるけど、今は誰かとお付き合いするつもりはないってのも大きいわね」
あまり深く追求するつもりも無いようで、そこからはスポーツや趣味の話に話題が移っていく。そして藤島がふっとテレビに目をとめた。
「アメリカのサッカークラブチームか。へぇー日本人が参加してるんだ。それも俺たちと同じ年でU18ってすげぇな」
ポツリと零した言葉に桜と楓が反応する。
「え?なんのこと?」
「おぉ、今そこのテレビで特集してるぞ。15歳の日本人がアメリカのクラブチームでU18のチームに招聘されたんだって言って今からやるみたいだ」
その言葉に桜と楓の目がテレビにくぎ付けになった。そこには一回りも二回りも大きな選手を相手に互角以上に渡り合う少年の姿があった。
「愛翔?」
ぽつりとつぶやく桜。楓も目を見開き言葉もない。
 高速ドリブルでライン際を駆け上がる。素早いチェックで相手の攻撃の立ち上がりを潰す。広い視野で決定的なアシストをする。そしてハイボールに合わせたオーバーヘッドシュートが決まった。チームメイトと抱き合い笑顔で得点を喜ぶ。それは紛れもないふたりの大切な幼馴染、愛翔の今の姿だった。
「U18に上がったその日に1ゴール2アシストかよ。それにあの動き。凄いな」
藤島が呆然と呟く。
「あ、インタビューあるみたいよ」
理子も同じ年代の日本人の活躍にはしゃいでいる。
 戸惑いながらも笑顔でインタビューに応える愛翔。その姿に涙ぐむふたり。そんなふたりに
「頑張ってる同年代見てそんなに感動した?」
理子が揶揄うように声を掛けた。そのタイミングで画面の中のインタビューを終えた愛翔に抱きつくストロベリーブロンドの小柄な美少女。驚いた表情とともに苦笑しつつなにやら声を掛ける愛翔。そこまでで画面がスタジオに切り替わった。
呆然として黙り込む桜と楓。特に桜の落ち込み具合が酷い。
「あ、あの、ふたりともどうかしたの?」
ふたりの突然の変化に戸惑う理子。
「あの男がどうかしたのか?」
藤島が何かに気付いたように問うと。
「あの男の子は、私達の幼馴染なの。凄くなっていてびっくりしただけよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...