幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

第38話 スポット

　グラウンドでの練習を終え三々五々更衣室へ引き上げる選手たち。その中に愛翔がいた。
「よう、アイト。相変わらずライン際での強さぱねぇな」
「それはルーのアタックがが直線的すぎるからだよ。もう少し搦め手を混ぜてこられたら、あそこまで抜けないぜ。おまえのアタックの圧は頭一つ抜けてるんだから」
そんな雑談をしているところにグランドコーチのケインが声をかけてきた。
「おーい、アイト。ＧＭが呼んでるぞ。マスタールームに行ってくれ」
「わかった。シャワー済ませたら行く。ケインありがとう」
シャワーで汗を流し愛翔はマスタールームに向かった。
”コンコンコン”３回のノックをすると。
「誰だ？」
中から誰何の声がした。
「愛翔です。ＧＭが呼んでいると言われて来ました」
「アイトか、入れ」
「失礼します」
一言断り、マスタールームの入り口をくぐると、そこにはＧＭルーカス・デヴィッド・リピンスキーともうひとり女性がいた。ショートのダークブロンドにハーフリムの眼鏡をかけた長身で鋭い感じの美女だ。
「紹介します。Ｕ18のライトウィングに招聘したアイトスミヨシです。アイト、こちらはオリヴィア・ヴァン・ハーシュ。うちの上位プロチームのスカウトをされている」
「はじめまして、ミスオリヴィア。お会いできて光栄です。アイト・スミヨシ、日本人です。よければアイトと呼んでください」
オリヴィアの目を見てにこやかに右手を差し出す愛翔。
「オリヴィア・ヴァン・ハーシュよ。アイトは、かなり有望だそうね」
アイトの手を握り笑顔を見せるオリヴィア。
「ありがとうございます。そうあるように頑張っています」
愛翔の返事に笑みを深くするオリヴィア。
「いいわね、あなた。日本人は謙遜し過ぎる。アスリートならあなたくらい自信を見せるのが良いわ」
「それで、プロスカウトのオリヴィアさんが俺になんの用でしょうか？」
「うちのフォワードがひとり先日の試合でケガをしたのは知っているわね」
「ええ、足首の軽い捻挫だと聞いていますが、それが何か？」
「明日ここでゲームがあるのだけれど、実は運が悪いことに、フォワードの控えメンバーが体調不良で誰も出られそうにないのよ」
「つまり？」
「アイト・スミヨシ。あなたをスポットで明日のメジャーリーグサッカーの公式戦に招聘します」