幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
42 / 314

第42話 特集

しおりを挟む
「おい、住吉がとんでもないことしたらしいぞ」
朝の喧騒の中、桜と楓を掴まえた多賀が叫んでいる。
「とんでもないこと?」
「アメリカのプロサッカーリーグの公式戦に出たらしい」
「それ本当なの?」
楓が確かめる。
「まだ俺も正確には知らないんだ。でも今日夕方のサッカーチャンネルでなんかやるらしい」
騒ぐ多賀をぼんやり眺めながら
「愛翔がプロ?」
桜がつぶやいた。

 放課後、部活も終わり空も茜色に変わり始めているなか、6人の少年少女がワイワイと騒ぎながら歩いている。先頭に多賀、そのすぐ後ろに桜と楓、そして藤島と理子のカップルが腕を絡めながらついていき、最後尾に剣崎がいた。
「いや、サッカー部は今日その話題で練習にならなかったんだよ」
藤島が愚痴のように口に乗せる。
「そうそう、15歳の日本人プロサッカー選手が……ってな」
剣崎も興奮気味だ。
「そしてそれが俺の中学時代からのライバルだ……イテ」
多賀が言いかけたところで藤島が頭にチョップを入れた。
「お前のは、一方通行だろうが。そもそも住吉は多賀の事を覚えているかどうかさえ怪しいっての」
「うぉ、そ、それは言っちゃだめな奴だから」
胸を抑えて蹲る演技をする多賀。なんだかんだ言って楽しそうだ。一方桜と楓は未だに不安そうにしている。
「愛翔、向こうでプロになっちゃうのかな?」
「そんなわけないじゃない。愛翔は帰ってくるって約束したんだもの。愛翔が約束を破ったことないでしょ」
不安を口にする桜に楓が大丈夫だとなだめる。


「さ、適当に座ってくれ」
リビングにメンバーを招き入れテレビのスイッチを入れる多賀。愛翔の出場したゲームが特番として放送されるということで多賀の家に集まったメンバーも目を見張っている。
「多賀の家には、初めてきたけど結構豪華だな」
「ここだけな。親父が凝ってるんだ。そのおかげで俺も大画面、高画質、高音質で色々見れるんだけどな。地上波だけじゃなく、BS、CS、ネット配信までここに繋いでくれてるから、こういう時には助かるし」
「で、その特番ってのは?」
「18時からだから、そろそろだな」
そう言うと多賀はチャンネルを合わせた。テレビから流れるノリのいいテーマソングに続いてアナウンサーが挨拶をする。
「今回は、MLSに彗星のように現れた現代のシンデレラボーイ、住吉愛翔さんをご紹介します」
愛翔のプレーのスチルがカットインしアナウンサーによる愛翔の紹介が始まった。
「住吉愛翔さん。〇〇〇〇年7月28日生まれの15歳。アメリカのハイスクール10thG、日本でなら高校1年生です。アメリカは9月始まり6月終わりですので来月で10thGは終了ですね。小学校時代は幼馴染さんと一緒にミニバスケットで活躍し、全国大会MVPとなったこともあるスポーツマンです。今でも時に街角でストリートバスケットボールを楽しむこともあり、地域のナンバーワンセンターとワンオンワンで競い合い勝ち越しているとか」
そこで愛翔の小学校時代ミニバスケットでMVPに選ばれ表彰台に立つ姿が映る。その隣には小学校時代の桜の姿も写っている。
「あ、あれ桜じゃん。小学6年生のミニバス全国大会のMVP表彰の時だ」
楓の指摘に桜がいきなり照れ始める。
「中学に入りサッカー部に入ったのがサッカーとの出会いだそうですが、親御さんの仕事の都合で中学1年の夏に渡米し、地元のクラブチームに所属。そして先日U18に昇格。直後にトップチームのフォワードが体調不良で戦線離脱したため急遽招聘され今回スポットでのMLSデビューとなりました」
それに対しゲストの女性がコメントを挟む。
「15歳でMLSにスポットとは言え参戦って凄いですね。……あれ?15歳ですよね。9thGじゃないんですか?」
「そこが住吉愛翔さんの素晴らしいところのひとつです。なんと学業も優秀で3年目にして1年スキップして10thGに在籍しているんです」
「サッカーで活躍しながら学業もって凄いですね」
「そうなんです。では、そんな住吉愛翔さんの日常をハイスクールでの生活からピッチでのプレイまでご覧いただきましょう」
そこからは明るいBGMを背景に愛翔の日常が写された。ハイスクールでクリスやケイトをはじめ男女問わず多くの友人たちと笑顔で会話し肩を組み笑い合う愛翔。真剣な顔で講義を受け質疑応答をする愛翔。ハイスクールでの様々なシーンで生き生きと過ごす愛翔が映し出された。
 そこでカメラが切り替わりクラブでの練習シーンが映される。ライン際1回りも2回りも大きな選手を相手にボールを運ぶ、鋭く切り込み決定的なパスを送る、フィールド中央で大人と子供ほども対格差のある相手と1対1でボールを奪う、相手ディフェンダーを躱しミドルシュートを決める。愛翔の活躍が映し出されていた。
「このようにハイスクールやクラブのU18で活躍されているんですね」
「凄いですね、ハイスクールでもグラウンドでも人の中心にいて」
「そして、そんな住吉愛翔さんがMLSにスポットで参戦された時の映像がこちらになります」
キックオフ直後にフリーでパスを受けシュートをする、パスを受けラインぎわを駆けあがりアーロンにセンタリングを上げる、後半に入り執拗なマークにボロボロになりながらもタイムアップ直前のロスタイムにシュートをする。ゲーム後に両チームから祝福を受ける存在感を示した愛翔が映る。
 そんな愛翔を見て
「これ、本当に俺たちと同学年なのか?」
ぽつりともらす藤島の声にサッカー部のふたりは大きく頷いていた。
そして特番は進み
「では、最後にMLS参戦時の住吉愛翔さんのインタビューをご覧いただきましょう」
そこには堂々とインタビューに答える愛翔の姿があった、そして最後のインタビューに移ろうかという時に愛翔の両サイドから美少女ふたりが抱きついた。そして愛翔の口からこぼれた言葉は
「They are my girlfriends」
日本語訳でこそ
『彼女たちは友達です』
とされていたものの桜にも楓にも聞こえてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...