幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第90話 一方的にみていた

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「あいとー。おまたせー」
ぽすんと愛翔の右腕に抱きつく栗色の髪の少女。
「大丈夫だ桜。俺の予定が早まっただけだからな。楓も今来たところだし」
そう言いながらやさしく桜を撫でる愛翔。その流れのままにいつものように頬にキスを交わす。
「あー、橘さんとキスをしていたのを見ていて今更なんだけど、人前で平気なんだ」
周りの黄色い悲鳴をBGMに疑問を口にする丘。愛翔の影からキョトンとした顔で丘を見る桜。
「えと、どなた?」
「あ、ごめんなさい。わたし丘ゆう子2年C組。よろしくね。サッカー部での住吉君の扱いが酷かったって話をしてたの」
「華押桜です。えと丘先輩、初対面ですよね」
やや人見知りを発揮しつつ尋ねる桜。
「そ、そうね。わたしが一方的に見ていただけだから、華押さんからしたら初対面でしょうね。でも、わたしは、ずっとあなた達を見てきたわ。正直言うと本当は最初は住吉君への興味だった。15歳でプロとしてはそんなにレベル高くないとは言っても本物のプロのMLSにスポットとは言え招聘された住吉君が身近に来たんだもの。でも住吉君が帰国して最初の悲しそうだった華押さんを見て、グループから抜けたばかりだったのに住吉君と再会してとても幸せそうな橘さんを見て、サッカー部のイケメン剣崎君と決別して住吉君の隣に並んで笑うようになった華押さんも見てきたわ。そしてそんなあなた達2人に寄り添う住吉君もね。いいなぁって思ったの。素敵だなって。そしたらあの事件でしょ。住吉君がSNSやマスコミまで巻き込んで解決して。凄いなぁって思った。そのあとふっと思ったの。あれって失敗したら住吉君の今までを全部吹っ飛ばしかねないんじゃないかって。そして一緒にいるあなた達3人を見てたら、住吉君への興味があなた達3人への興味に変わってたのよね」
ふふふと笑う丘に3人は苦笑するばかり。
「って、こんな一方的にベラベラしゃべってもわけわかんないわよね」
そんな丘の態度に愛翔が最初に我に返った。
「よくわかりませんが、丘先輩は俺たち3人に興味があって、ここに突撃してきたわけですか?」
愛翔の言葉に丘はいたずらっ子の顔でウィンクをひとつ飛ばし
「まあそんなとこね。仲間に入れてもらえたら嬉しいわ」
愛翔は桜と楓の顔を順番に見回しそれぞれが頷いたのを見て。
「まぁ別に他人を排除する意図はなので。悪意や変な下心は無さそうですし別に構いませんよ」
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