幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第111話 クラブの方針?

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「住吉!!」
時枝の声にハッと前を見た愛翔の視線の先を転がるボールがタッチラインを割った。
「すまん」
時枝に向かい両手を合わせ、謝罪の意を示す愛翔。
「頼むぞ、今日何度目だ?」
今日の愛翔は昨日の丘の指摘に桜と楓の事で頭がいっぱいになり集中力がそがれミスを頻発してしまっている。
「住吉!!」
愛翔が得意のドリブル中にあっさりとボールを奪われていた。
見ると織部監督が愛翔に手招きをしている。
「住吉。なんで呼ばれたかわかるか」
「今日は特にミスが多く……」
「それじゃねぇぞ。いやそれなんだが、その原因だ。おまえ今日は集中力が欠けてるだろう。いつもの切れがなさすぎる。そもそもそんな気もそぞろな状態じゃケガするぞ」
「はい、すみません」
「謝らなくていい。ただ、今日は外れておけ。それと、練習終わったら監督室にこい」


「で、何を悩んでいるんだ?」
織部は練習終了後監督室に顔を出した愛翔に直球で尋ねた。
「……」
言い淀む愛翔に織部は更に声を掛ける。
「プレイに支障がある以上、俺は把握する必要がある。ってのもあるがな、クラブの方針として青少年の健全育成ってのが掲げられているのは知っているな」
「え、ええ」
「あれは、半分はポーズだが、残りの半分はお前たちクラブメンバーのメンタルケアとして生きているんだ。他の誰にも漏らさん。言ってみろ」
愛翔は躊躇いつつもそれぞれの名前は言わず幼馴染としての桜と楓との関係、そして丘に指摘された内容を話した。
「ふむ、住吉が恋愛事で悩むとはな。少しばかり意外だったぞ。それにしても家族としての愛か。まあ、住吉が悩むのは分からんでもない。が、構わないんじゃないか?」
「え、でも」
「恋愛ってのは最終的に行き着くのは結婚、家族だろう。そこまで一気に行き着く必要は無いし、相手の女の子との気持ちのズレはあるだろうが愛は愛でいいんじゃないのか。そこからどれだけその娘が好きなのか大事なのか自分の中の気持ちを確かめればいいだろう。どんな言い方だったのかまではわからんが、実際その指摘した先輩ってのもそのあたりを指摘したんじゃないのか?」
織部の言葉に愛翔は意外だという表情を見せ
「てっきり恋愛なんかにうつつを抜かすなとか言われるかと思いましたよ」
「ん、まあぶっちゃけるとだな。他のクラブはどうか知らんがうちでは有力選手には、むしろ早いうちに恋人を作るなり、結婚するなりして欲しいってのがあるんだ」
「は、なんです、それ?」
愛翔の疑問に織部は淡々と答える。
「有力選手ってのはとにかくいろんな誘惑がある。住吉は年齢的にまだだろうが、夜の街とか、そこの妙な女とかな。恋人がいたり結婚していたりすれば、そういう誘惑にある程度距離が取れるからな。実際住吉も少し様子見ではあったが。何人か女友達を連れてきてたりしてたから、クラブ側からアクションを起こす話も出てきていたんだ」
「それって、俺と一緒に居た女友達を俺の彼女にみたいな話をってことですか?」
「そうだな、ただまあ住吉はまだ16になったところだし、早いって事で保留になっている。安心しろ」
そういって織部は笑い
「ま、クラブとしては住吉が恋人をつくるのは歓迎なわけだが、今の住吉の状況はではな。ま、落ち着いて自分の気持ちを見つめてその幼馴染と向き合えばいいさ。ただし、ピッチの中と外で切り替えを出来るようにだけなれ。もう少しでU18日米交流戦の選抜もある。住吉のセルフコントロールなら出来ると信じているぞ」
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