幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第125話 新生

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「住吉ボールだプレスを掛けろ」
第2回選抜合宿。明確な弱点を晒した愛翔はゲーム形式の練習では常にチャージを含めパワータイプのディフェンスを仕掛けられるようになっていた。愛翔もスピードとテクニックで対抗するのだけれど、さすがに選抜候補だけあって簡単には切り抜けることが出来ない。愛翔も幾度となく弾かれグラウンドに転がる。
それでも、しぶとく追いすがり、存在感をみせつける。
「ったく、住吉。スピードとスマートなテクニックだけかと思っていたんだけど、ねちっこく泥臭いサッカーもできるんじゃねえか」
そして実際のところ愛翔にとって一番やりにくい相手は身体が出来上がりフィジカルが強く愛翔ほどではなくてもスピードのある同じフォワード陣。スピードで抜き去ろうとしてもわずかな差では簡単ではなくフィジカルで押し込められることも度々だった。
合宿後のミケルとの面談ではつい愛翔の口から弱音がこぼれる。
「フィジカルで上回る相手への対応間に合うのでしょうか」
「アイト。今は焦る時期ではない。もちろん絶対に間に合うとは言えないが、今は我慢して身体をつくることだ。必ず効果は出てくる」
そしてこの時期愛翔はクラブでの動きでもやや精彩を欠いた。普段ならスピードとテクニックで抜き去る大型ディフェンダーに当たられ体勢を崩しボールを奪われかけ、相手フォワードを抜くタイミングがズレショルダーチャージでとばされた。
「おい、住吉。いきなりスランプか。大丈夫なのか?」
試合後に芦原が心配そうに聞いてくる。
「ああ、ちょっとな。今壁を超えるために新しいことに挑戦してるんだ。その影響でズレが出ているみたいだ。それでも迷惑かけたすまん」
「いや、迷惑は別に、ゲームは勝てたし構わないんだが、そんな調子を落としていたら選抜どころじゃないんじゃないか?」
「いや、まあ現状でも選抜に残る事は出来るかもしれないけど、せっかく合宿までしてるんだから、どうせなら1段階上がりたいって思ってな」

そして、選抜合宿も回数を重ね1次選抜合宿としては、最終日となる日曜日。
「よーし、今日でこの1次選抜合宿を最後だ。そこで最後に試合を行い最終選抜を行う。試合に重きは置くがこれまでの状態も加味して選抜するからな」
総合監督の川端の言葉で試合が始まった。
この合宿の集大成と全員のプレーがいつもに増して激しい。ヒートアップした選手達が時にギリギリのラフプレーを混ぜる。そんな中で、ビブスチームに交じり愛翔もボールを持ち右奥、いつものエリアを駆け上がる。
「住吉、お前の弱点はわかってんだ。そうそう抜かせはしないぞ」
ユニフォームチームのディフェンダーが愛翔の前に立ちふさがりプレッシャーをかけてくる。両社が交差しディフェンダーが愛翔にチャージ。当たったように見えたけれど、そのばにディフェンダーが転がり愛翔が何もなかったかのようにボールをキープし駆け抜けた。
その後も、何度も愛翔にチャージを繰り返すユニフォームチーム。しかし、それをことごとく躱し受け流すように抜ける愛翔。
「住吉の距離が遠い。当たらない。当たってもぬるりと逃げられる」
ここに来て愛翔の新しい挑戦が形になってきていた。柔軟性の向上で懐が深くなり、体幹を鍛えることでバランスが向上した。より相手の遠くでボールを扱い、相手が当たってきた時にも衝撃を受け流すように体を逃がす。そして、それはディフェンスの向上だけではなかった。相手のキープするボールに対してもより深く追い込みボールを奪う。相手を引き付けた状態から大胆なパスを出す。その日愛翔がグラウンドに転がることは無かった。
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