幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第152話 キックオフシュートとカウンターアタック

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日米交流戦、アメリカシリーズ第1戦。愛翔はセンターフォワードとしてスタメン出場をしている。アメリカチームから戸惑う気配を感じながら日本チームボールで試合が始まった。
 アメリカチームのポジショニングを見渡し愛翔は光田に何かを耳打ちし、センターサークル後方に下がる。”ピー”審判のホイッスルが鳴り光田が助走から全力でボールを蹴った。キックオフシュート。光田の大胆なキックに敵味方双方が驚きボールの行方を追う。キックオフということでやや上がり気味だったアメリカチームのゴールキーパーも慌てて戻りゴールマウス内に入ろうとしていたボールを辛うじてパンチングで防いだ。日米双方のサポーターをはじめピッチに立つ選手までが溜息を吐き全体の空気が一瞬弛緩した。そこにキックオフ直後から全力でゴール前に愛翔が走り込んだ。ゴールキーパーがパンチングで落としただけで誰も支配していないボールをキープし身体ごとゴールに飛び込む。
”ピー”静まり返るピッチに審判のホイッスルが鳴り響いた。日本チームは、日米交流戦第1戦に続きアメリカシリーズ第1戦でも愛翔の大胆な活躍で先取点を上げた。
「ナイス住吉」
「ナイスキック光田」
愛翔と光田がハイタッチを交わす。
サポーター席でも日本チームサポーターは大騒ぎだ。
「「愛翔ー」」
桜と楓が抱き合いながら叫んでいる。
「住吉さーん」
「光田くーん」
ちょっとしたカオスだ。それほどにアウェイでの先取点は大きい。
そしてやはり試合開始直後の失点はアメリカチームに動揺を誘い動きに精彩を欠く。サイドから攻撃を組み立てようとしたアメリカチームだったけれど、そんな状態では日本チームのディフェンダーに押し込まれる。パスを出したくても中央部には愛翔が待ち構えている。アメリカチームのメンバーは愛翔の近くにボールを運ぶことを躊躇する。それこそまるでPTSDかのように。そのためアメリカチームの戦略が限定される。愛翔にカットされることを恐れグラインダーでのパスは少ない。愛翔がセンターフォワードに入ったことで中央部でのゲームメイクも消極的だ。結果サイドからサイドへの大きなパスが多くなり大味なプレイが増える。単純なロングパスが増えれば当然日本チームによるパスカットも増え全体に日本チームがゲームを支配する時間が増える。その結果前半を2対0で日本優勢で折り返した。
ハーフタイム、ざっとシャワーを浴びリフレッシュした日本U18チームメンバーがリラックスしながら雑談をしている
「しかし、光田がキックオフシュートとはね。思い切ったな」
「いや、あれは住吉がやれって言ったものだから」
「そういえば住吉もよく躊躇なくゴール前に走り込んでいたな」
「光田のキック力なら可能性は十分にあると思ってたからな。俺が押し込んだのは結果だよ」

「よーし、後半に向けて簡単にブリーフィングを行うぞ」
総合監督川端の声に身体はリラックスさせつつも表情を引き締め川端に視線を送る日本チームのメンバー。
「前半は作戦がはまって良い感じで折り返した。前半と同じならこのまま行けばいいが、まあ何かやってくるだろう。アメリカチームの住吉アレルギーは相当だから住吉にマークを厚くするってあたりが有力だが、その場合、住吉はマークを引きつけ他で数的優位をつくって……」

「さ、後半もがっちり行くぞ」
「住吉頼むぞ」
「お前がキーマンなのは間違いないからな」
ブリーフィングを終え愛翔の背中を叩きながらピッチへ向かう日本チームメンバー。愛翔も自分の頬を叩き気合を入れなおし駆け出す。
選手たちが姿を見せればサポーター席から歓声と激励が飛ぶ。
「後半も頼むぞ」
「光田くーん、後半も……」
「住吉さーん」
「愛翔ー、頑張ってー」
愛翔がサポーター席に目をやり声援を送る桜と楓の姿を目に収め頬を緩め手を振る。
他の日本チームメンバーも思い思いに声援に応え気分を高揚させている。
愛翔はチームのゴールキーパー谷中にコソリと一言告げピッチに足を踏み入れた。
後半はアメリカチームのキックオフからの開始。愛翔は更にキックオフ直前にミッドフィルダーに入っている時枝に一言告げポジションについた。
アメリカチームのキッカーはレイ・パトリック・ヴィンセント。センターサークルギリギリの助走からキックオフシュートを放った。ボールは日本チームのゴール枠に向かっている。これもキックオフゴールが決まったかに見えたが、谷中は危なげなく両手で掴みファインセーブを見せた。そして前方をチラリと確認し、次の瞬間に谷中が行ったのは全力のパントキック。そして中央でそれを受けた時枝が躊躇することなく前方へ大きくフィード。誰もいないエリアに何故と誰もが思ったところに愛翔が駆け込みワンタッチシュート、ボールはアメリカチームのゴール内を静かに転がっていった。アメリカチームのキックオフシュートから10秒での日本チームのカウンターによる得点にどよめきと歓声が起こった。
「なんであのシュートが止められるんだ」
「ためらいなく送ったあのパントキックも……」
「あのゴールキーパーもただものじゃないぞ」
こんなことがあれば当然のようにアメリカチームは混乱し、その後のプレーでも精彩を欠くことになり、日本チームは後半で更に1点を追加し4対0でアメリカシリーズ初戦を勝利で飾った。
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