幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第161話 制限付き復帰

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愛翔がステラスターFCU18 の練習に復帰して更に3カ月後の日曜日、ステラスポーツセンター第一グラウンドにてU18公式戦ステラスターFCU18対ダイランFCU18が行われた。その中愛翔もベンチスタートではあるものの登録メンバーとして参加している。
そしてステラスターFCとしてはどうやら愛翔を宣伝に使うつもりのようで地元テレビ局やスポーツ雑誌、スポーツ新聞、地元一般誌等が記者席に陣取っていた。
さすがに試合前にインタビューをするような不作法は無かったものの愛翔がゲームに出場すればゲーム後に囲まれるのは間違いないだろう。
じりじりとした緊張感のなかゲーム開始の時間となった。
”ピー”
ダイランFCボールでのキックオフ。キッカーは一度自陣に蹴り戻しミッドフィルダーが右サイドよりをドリブルで上がる。しかしあっという間に前に詰めるステラスターFCディフェンダー。そこは愛翔との練習で徹底的に鍛えられた場所。フェイントで抜こうとするところをあっという間にボールを奪いフォワードにフィードする。ステラスターFCフォワードは左サイドから攻め上がるものの、ダイランFCディフェンダーに前を塞がれミッドフィルダーに一度下げる。司令塔時枝が指示を飛ばし立て直しをはかり攻めの形は出来るが今一つ突破力が万全ではなくシュートチャンスを作り切れない。ベンチでそれを見ている愛翔もじりじりと落ち着かず
「そこでサイドチェンジ」
「思い切ってシュートだ」
ブツブツと小声でつぶやいている。
結局前半を0対0で折り返した。
「攻めの形は出来ている。相手の攻撃を潰すのも良い感じだ。もう1歩踏み込んで得点を狙うぞ」
ハーフタイムにチームメンバーへ檄を飛ばす織部。そして
「住吉。マックス15分なんだな?」
「はい」
「残り10分で行ってもらうぞ。準備しておけ」
「わかりました」
後半に入りダイランFC、ステラスターFC双方とも攻勢をかけるもののやはりどちらも1手足らず、得点に結びつかない。後半20分が経過したところで愛翔がベンチコートを脱いだ。ピッチ横でストレッチ、軽いダッシュ等で身体をほぐしウォーミングアップを始める。それに気づいたステラスターFCサポーターが歓声を上げる。
「住吉ー」
「サンクチュアリの登場だー」
そして当然そこには両手を握り祈るように見つめる4対の瞳。
「「愛翔」」
「「愛翔君」」
桜、楓、丘、そして高野。愛翔に近しい4人の女性が見守っている。
それに反してダイランFC側ベンチからは動揺が伝わってくる。
「住吉だと」
「ここでか?」
「いや、住吉は病み上がりだ」
「それでも……」
過去にさんざんな目にあっている愛翔が参戦するかもしれないという、それだけでダイランFCはピッチでも動揺が隠せない。それでもディフェンスだけはかろうじて機能し得点までは許さないまま後半残り8分ステラスターFCのシュートが防がれダイランFCのゴールラインを超え、ステラスターFCはコーナーキックを獲得した。
そこでステラスターFCは選手交代を告げる。
「14番アウト、7番イン」
タッチライン横で待機し交代する選手と拳をぶつけあいついに愛翔がピッチに立つ。これは愛翔が造血幹細胞移植を受けた実に8カ月後、制限付きとはいえ奇跡に近い短期間での復帰だった。
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