幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第193話 俺より速い?

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前半1対0で折り返したステラスターFCU18チーム。ロッカールームでは愛翔に口撃が集中している。
「おい、住吉。さっきのドライブシュートはなんだ。練習では見せたこと無いだろ」
「それだけじゃないぞ。相手のディフェンダーを弾き返したフィジカルもこれまで見せて来てないよな」
「チームにまで秘密にしているとか、ありえないだろう。説明してもらおうか」
そこで愛翔は簡単に話すことにした。あの日からの密かな拘り、それは愛翔の覆すべき悔しさ。


「なるほど、日米交流戦からの……か。分かる気はする。でも、当時住吉は16歳だったんだろ。U18の中では身体が出来ていなくて当たり前で……。ああ、だからか。だから身体の出来てきた今なんだな」
石岡が納得したように口にした言葉は、チームメンバーにも理解できた。
「なら、思いっきりやれ。てか、もう手加減いらねぇんだろ身体の方も」
「え……」
続けて紡がれた言葉に愛翔はハッと顔を上げ周囲を見回す。
「あ、な、んで……」
言葉に詰まる愛翔にチームメンバーからは
「気付いてないとでも思ったか」
「期待してるぞ」
「まあ、今日のあのプレーで確信したってのもあるけどな」
「おい、鈍感か?」
一頻り笑ったところで織部監督が声を掛けた。
「リラックスタイムは、その辺りでいいだろう。ミーティングを始めるぞ」
一気にピリッとした空気に変わり雑談をやめるメンバーたち。
「前半をリードして折り返したのは幸いだ。そして後半は……」
ミーティングを終えピッチに向かうメンバーたち。その表情は引き締まって……にやけていた。

ピッチに出れば当然のようにサポーターからの歓声が響く。
後半もガッツ大阪FCU18ボールでのキックオフ。愛翔はいつも通りライトウィングのポジションにつく。
”ピピー”主審のホイッスルが鳴り、ガッツ大阪FCU18は、やはり愛翔の逆サイドへボールを運ぶ。
愛翔はスルスルとポジションを下げ一見ボランチに見える位置に。
そして、中盤から積極的に相手フォワードにプレッシャーをかける。ボトムに近い位置で愛翔と対したガッツ大阪FCU18フォワードは咄嗟にパスで逃げようとしたけれど、その動きのスキをつき愛翔がボールとの間に身体をねじ込みボールの支配権を奪う。そのまま変形のマルセイユルーレットで相手を置き去りにした愛翔はドリブルで上がりつつ全体の動きを見渡し、
「石岡」
ちょうどフリーになった石岡に大きくフィード。さらに俊足を飛ばし相手陣営右奥に入り込んでいく。ステラスターFCU18のミッドフィルダーとフォワードの間をボールが何度か行き来する。ガッツ大阪FCU18も動揺を抑えがっちりと守っているため突破口が掴めない状況のようだ。
「住吉!!」
困った時の愛翔とばかりに石岡が愛翔の先10mにパスを送る。トップスピードに乗った愛翔がボールを確保しようとしたところにガッツ大阪FCU18の選手がひとり愛翔の後ろから追い抜きボールを支配下に置いた。
「俺より速い?」
一瞬愛翔が驚いた時にはその選手はボールをパスで中盤にフィードしていた。
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