幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
201 / 314

第201話 女子バスケットボール部のIH⑥

しおりを挟む
「それじゃあ、さっきの試合のあと近寄ってきていたのは」
愛翔が試合後に相手チームの一人が桜に近寄っていた時の事をきいているのだけれど
「うん竹原さんから託されちゃった」
ペロリと舌を出す桜。それでいて目の奥には真剣な光が宿っている。
「勝ち抜くってのはそういうことだな」
愛翔の言葉に桜は小さく頷く。
「次辺りからは中堅以上の強いところと当たるけど勝つつもりでいるから」
桜が当然と胸を張りチームメンバーを見回す。その言葉を聞いた面々は驚いた顔。そして代表するように末成が言葉にする。
「勝てるかしら?」
「最初から勝てないと思っていたら勝てるものも勝てないわよ。たとえ地力で劣っていても勝つつもりで当たれば同じ高校生だもの、どうにかなる……んじゃないかな」
最後は少し苦笑交じりであったけれど桜として負けるつもりでゲームに向かうつもりはない。その気持ちがメンバーたちに伝わった。それでも
「でも、次は3回戦よ。ベスト16よ。2回戦突破だってインターハイ初出場としては出来過ぎなのに」
そこまで水野が悲観的な意見を言ったところで、チームいち冷静な表が口を挟んだ。
「でも突破出来た。それに私たちの県は実は結構な激戦区。決勝、準決勝を争った学校は過去にインターハイ優勝経験もある。最近はベスト16止まりではあるけど、それなりに強豪。そこに勝ってきたのだから私達光野高校女子バスケットボール部がベスト16に入ったのは実力的には不思議ではないでしょ。そこからもう1段上を狙おうという桜の意識は必ずしも慢心しているとも夢見心地だとも言い切れない。ある程度以上は現実を見て言っていると私は思う」
「マッキーの冷静な分析で可能性があることは理解したけど、実際のところ桜の目からして3回戦のあの学校に勝てる可能性はどのくらいだと思う?」
末成が状況を受け入れたうえで桜の感性を頼りに聞いてきた。あまり可能性が高いとは思っていないようだ。
「そうね、多く見積もって30パーセントってところかしら」
桜の答えに息を飲む光野高校女子バスケットボール部のメンバー。
「根拠を聞いてもいいかしら」
「それほど難しいものでは無いわ。まずあたし達の地力は恐らくベスト16は適正ね。これは県大会で対戦してきたチームの過去のインターハイの戦績からしてそれほど間違ってないと思うわ。だから地力は相手が少し上」
なるほどと末成は先を促す。
「それとこれは希望的な部分もあるけど、相手の持っているあたし達のデータは少ないはず。最小であるのなら2回戦のデータだけの可能性もあるし、おそらくこれは間違いないわ。まあ私たちの県自体をマークされていたら別だけれど、それにしても」
「1回戦と2回戦の2試合が精いっぱい?」
末成の言葉に桜が頷く。
「それに対してあたし達は……」
決勝で破った相手チームから受け取った大量の動画データを思い浮かべたのは桜だけではない。
「ただ、相手チームはこういった全国レベルの大会の常連なので、経験値がうちとは違いすぎるわね」
桜自身は中学まで全国レベルで試合をしてきたため「場慣れ」はしている。しかし他のメンバーたちにはそれが無い。格上に仕掛けて状況をひっくり返す引き出しが相手と比べて少なすぎる。むしろ皆無と言って良い。それゆえに
「だから多く見積もって30パーセントなのね」
桜に言わせず、末成が納得の言葉を紡ぐ。
「それでも……」
と、言い掛けたところに愛翔が口を挟む。
「それでも全国ベスト16で勝機30パーセントと言うのは上等じゃないか。必死に死物狂いになっても良いんじゃないかと思う程度には高い可能性だと俺なんかは思うけどな。勝率が50パーセント以上の試合なんてそうあるもんじゃない。50パーセントで普通。こんな大会の上位とやるなら30パーセントなんてのは上等だぞ」
愛翔からの言葉にメンバーたちはハッとしたような顔を見せる
「そっか、50パーセントで普通。格上相手で30パーセントなんて諦めるのはもったいないわね」
末成の言葉に他のメンバーたちも頷き目に光が戻った。
「分かったな。頑張れ」
そうして愛翔の激励に動き出す
「そうと決まれば、まずは相手チームの戦力分析。それから対策練習よ」
そんな女子バスケットボール部の様子を愛翔と楓は嬉しそうに眺め
「ほら、桜。お前も頑張れ」
愛翔は桜を一瞬ギュッと抱きしめ、頬にキスをして送り出した。
「ありがとう愛翔。愛してる」
そう言うと桜も愛翔を抱きしめキスを返し、メンバーたちのもとに走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...