幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第211話 ネーミングセンス

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「結局どっちが正解なのかな?」
長嶺が迷いを断ち切れないとこぼす。
「ね、作詞担当の楓ちゃんとしてはどっちが良いと思う?」
市野としてはどちらも捨てがたいと思っているようだ。
「え、私?」
楓は話を振られて目をパチリと瞬く。
「そうよ、作者としての意見はやっぱり聞いておきたいじゃない」
「それは……。前にも言ったけど、私としてはシンプルで落ち着いたバラードが、作った時のイメージだから。でも過去の映像見たうえでコンテストで受けるかと言われると、さすがにね」
「そうなのよね、明らかにぴかぴかに派手でテクニカルな曲がコンテスト受けしてるでしょ?」
大家もコンテストを重視するならという思いはある。それでもと続けた。
「それって横並びになった時に有利ってだけじゃないかなとも思うのよ」
ん?とメンバーが疑問符を頭に浮かべたところで楓がポンと手を打った。
「結局全国に出てくるんだからみんなそれなりにというか、かなりレベルが高い。言っちゃえばレベルは高いけど、ドングリの背比べ。となれば地味より派手のほうが目につくから上に来るってことね」
そしてつなげる
「逆に言えば、そのレベルになっていないと競争にすらならないってことよ」
楓は更に「つまり」と言葉をつづける。
「結局は、そのレベルに引き上げられるアレンジはどっち?ってことに行きつくのよね」
と振出しに戻し苦笑した。そして第3者的な視線が欲しいとばかりに顧問の田口に視線を向けた。
「え?私?私は軽音部の顧問でしゅけど。経験とかちしゅきとかないので、そういうところで頼られても、う、嬉しいけど困っちゃう」
田口は困惑しつつそう言うしかなかったけれど、楓はそう言うことではないと言葉をつづけた
「先生に専門的なアドバイスをくださいと言っているわけではありません。単に聞いていてどっちが好きか程度でも言ってもらえれば……」
「あくまでも私個人の好みだと派手な方が好きでしゅね」
相変わらずカミカミで田口が答える。
「とりあえず、明日のリハーサルは派手バージョンで。最終的にどうするかは本番までに決めましょ。そして何か決定的なものが見つからなかった場合は本番も派手バージョンで」
「言いたいことはわかったけど、一言言っていいかしら?」
市野がもの言いたげに尋ねた。
「良いわよ、ここに至ってはどんな意見でも出してちょうだい」
「いえ、大したことじゃないのだけど、
ななっち、派手バージョンとか地味バージョンってネーミングどうにかならなかったのかなって」
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