幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第285話 ある提案

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真実の口で桜の爆弾発言に愛翔と楓がうろたえ、桜が満面の笑みで締めたあとは、フォロ・ロマーノでローマの古代遺跡をながめる。
「なんか、ゴロゴロしてるようなものが多いわりに説明とかあまりないんだな」
愛翔が身も蓋もない言い方をし、
「でも、紀元前6世紀頃からの遺跡だっていうからこれもロマンよね」
「それにここってローマらしいじゃない」
楓も桜も気に入ったようだ。
そして
「今日のゴールはここよ。コロッセオ」
「ふああ、凄いわね。圧倒されるような迫力」
「古代ローマの闘技場か。映画では見たことあるけど実物はまた凄いな」
そんな楽しい1日の終わり、ホテルに帰った愛翔たち3人を待っていた人物がいた。
「ミケルさんじゃないですか。どうしたんですか?あ、ひょっとしてもう結論が出ましたか?」
愛翔の声に振り向いたミケル・レガスの表情はさえない。
「すまん、アイト。少し時間をもらってもいいか?」
「え、ええ良いですよ。桜、楓、2人は先に部屋で休んでいてくれ。俺はミケルさんの話を聞いてくる」
「え?愛翔。あたしも一緒に聞くわよ」
「私だってそうよ。レガスさん、私達が同席してもいいですよね」
ミケル・レガスは、わずかに戸惑った後、に頷いた。
「ああ、君たちはアイトの嫁だったな。ならむしろ一緒に聞いてくれた方が良いだろう」

そして、4人はホテルに併設されたカフェに移動した。
「おやっさん、ビール。それと」
ミケル・レガスはチラリと愛翔たち3人に目をやると続けた。
「エスプレッソ3つだ」
テーブル席に着くと沈黙が4人を包む。
僅かな時間でオーダーした飲み物がテーブルに並んだ。ミケル・レガスは苦し気な表情のままビールを一息に飲み干し、唐突に愛翔に対して頭を下げた。
「すまん、アイト」
突然のその行動に愛翔たち3人は一瞬あっけにとられ
「あ、あの、ミケルさん。突然どうしたんですか?」
愛翔がどうにか口をひらいたところ、ミケル・レガスが説明を始める。
「今回俺としてはアイトをローマ・ソチエタFCに入ってもらえるつもりで呼んだんだが、どうにも大人の事情で……」
そこまで言えば愛翔には分かる。
「はあ、ホセですか。スポンサー推薦みたいなプレイヤーですからね。クラブとしても拒否は難しいでしょう」
「やはり、アイトには分かるか。例えスポンサー推薦でも、ホセがもっと使えなければアイトをごり押しもできたんだろうが」
「ああ、ホセも言葉の問題さえなければ結構優秀ですからね。あれを拒否するのは難しいでしょうね」
「そうなんだ。だから今回の契約枠ではホセになってしまった。すまん」
「ミケルさんが謝る必要はありませんよ。元々確定ではないって話で来てるわけですしね」
「すまん。そう言ってもらえると少しは気が楽になる。だがな、うちのジェネラルマネージャーが身勝手な提案をしてきたんだ」
「身勝手な提案ですか。一応内容を聞いても?」
「ああ、そうだ。あまりに身勝手すぎると俺も止めたんだが、どうしても話すだけ話してくれと言われてな。だから、これは断ってくれていい。むしろ断るべきだと俺は思っている」
「えっと、ミケルさんがそこまで言う提案てのは何ですか?」
ミケル・レガスは口惜しそうに口を開いた。
「ローマ・ソチエタFCは、1年後にアイト・スミヨシと契約をしたい。ついてはその間、他クラブでのトップ契約を保留してほしい。こういうことだ」
「1年後ですか……」
「ああ、ふざけた話だ。若いサッカー選手の1年をなんだと思っているのか。分かっていないのかと俺もジェネラルマネージャーに言ったんだがな。すまん」
「いえ、ミケルさんの責任ではありませんから。ただ、さすがに返事はしばらく待って欲しいですね」
「だろうな。むしろ俺としてはこの場で断られると思っていたんだが」
「まあ、俺は色々ありますので……。それにこれは契約ではないですよね。なんにしても色々と考えたいので今日はこれで失礼します」
そこまで言うと愛翔たち3人は軽く頭を下げ、カフェを出ていった。
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