農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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21,女たらしのアリアさん。

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死にそう。退屈で死にそう。死にそうで退屈。

 おお、ここで私は哲学的な問いかけにたどり着く。退屈だから死にたくなるのか、死にたくなるから退屈なのか。

 嗚呼。ベッドの上で、まったく身動きが取れない。右腕と左足の骨と筋肉がグチャグチャなので、致し方ないけど。
 今回、ジェシカさんが運んでくれたのは人間の町の病院ではなく、エルフの里の病院だった。ジェシカさんいわく、人間の病院の3倍は医療技術が進んでいるそうだ。
 そして担当医さんいわく、リハビリ地獄を4ヵ月過ごせば、元の状態まで回復するだろうとのこと。まぁ、ここまで手ひどくやられたのでは、それくらいの治療期間は仕方ないのかも。とくに左足にいたっては、もう少しで千切れるところだったというし。とにかく、いまはまだリハビリも始められないのだ。

 そこで、まずはスキルツリーを確認でもしておく。
 というのも、【覇王魔窟】58階に至るどこかで意識が朦朧としたためか、貯めておくと決めたはずのスキルポイントを使いきってしまったので(武装Lv.は55から88に上がっていた)。
 厳密には、スキルポイント3が残っているけど。
 あーあ。《耕作:見習い人》スキルパネルを解放するため、貯めておくはずだったのに……まぁくよくよしても仕方ない。
 14階以降に解放した新たなパネルは、ぜんぶ6つ。

 まず『打撃』領域では、すでに解放してある《雷打》に続く形で、《氷打》。
『打撃時に、氷結作用が発動。氷属性』。
《雷打》と《氷打》は、単純な威力自体は同じのようだ。つまり敵魔物が、どちらの属性に弱いかを見極めて攻撃する必要があると。

『打撃』領域ではもう一つ、『武器の打撃力をUPする(打撃Lv.2)』の次にあたる『武器の打撃力をUPする(打撃Lv.3)』のパネルも解放済み。これで通常攻撃はさらに上がっているわけだ。

『防御』領域でも、まず『使用者の防御力UP(防御Lv.2)』の次のパネル『使用者の防御力UP(防御Lv.3)』が解放されている。

 防御スキルパネルでは、すでに解放してある《守りの盾》に続くパネル《鎧装甲》が、解放されている。『全身を鎧装甲で固めることができる。ただし、動きは鈍くなる。ほかのスキルと併用可能』。つまり《鎧装甲》+《強靭盾》で防御力を高めつつ、攻撃スキルも有りということだね。

『射程』領域は、二つのパネルを続けて解放していた。まず魔改造鍬〈スーパーコンボ〉を自由自在に動かせるスキルパネル《操縦》を解放してある。
 ただし自由自在とはいっても、ようは空中をぶんぶん飛ばせるだけで、《爆打》などの打撃スキルとかは使えない。

 もうひとつの解放済みパネルは、《波動砲Lv.2》。
『前方に向かって、通常攻撃と同じ威力の波動を飛ばすことができる』という能力は同じで、射程距離が30メートルから60メートルへ。

 うーん。全体的に悪くはないけど、《耕作:見習い人》》スキルが欲しいなぁ。あー、欲しすぎて、おしっこがしたい。

 ジェシカさんが不可解そうな顔で、病室に入って来た。

「あのさ、アリア。キミのために、セシリアという子を呼んできてあげようと思ったんだけど……」

「はい?」

「あのさぁ、セシリアって子、もしかして──いや、もしかしなくても──」

 なぜか言いよどむジェシカさん。ふと心配になって、私は聞いた。

「なんですか? セシリアちゃんがどうかしましたか? 勇者業の最中に怪我でも?」

「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、ううん、大丈夫。元気だよ。まぁ、会ったわけじゃないけど」

「そうですか、良かったです」

「セシリアさんは、あのー、忙しそうだったから、アレだけど。そのかわりというわけではないけど、ミリカ嬢がお見舞いにきてくれたよ。というか、エルフの里に人間を二人も入れるなんて、特別大サービスだからね。感謝しなよう。ミリカ嬢はいま廊下で待っているから、呼んでくるね」

 ミリカさんは入ってくるなり、私の左手をぎゅっと握った。

「あぁ、アリアさん。大変なことになってしまったね」

「いいえ、大丈夫です。よくあることですよ。ところでミリカさん。もしもまた【覇王魔窟】に挑む予定があるのでしたら、次はライオネルさんという〈挑戦者(ディファイアンス)〉を雇うといいですよ。あと14階の〈スライム〉は、食べればいいんです。この情報は、〈挑戦者(ディファイアンス)〉に広めてください。生贄要員を連れていくパーティが、少しでも減らすために」

「分かった……それにしても、あなたは立派だな。こんな重傷を負っても、ほかの人の心配ができるなんて」

「はぁ。ただ、カブ畑のことを思うと──いまごろ、誰も世話していない私のカブ畑は、荒れ放題でしょう」

「そのことなんだが、まことに勝手ながら、あなたのカブ畑を世話するため農家を雇ったんだ。いや、すまない。あなたは自分のカブ畑を、他人の手でいじられたくはないだろうが。あのままでは、あなたの育てているカブがダメになってしまうと思って」

「いえ、そんな。ありがとうございます、ミリカさんっっ! 私のカブ畑を守ってくださるなんて、大好きですっっ!!」

 ミリカさん、なぜか頬を赤らめる。

「そ、そうか。喜んでもらえて良かった。その、では私は失礼するよ。あまり長居すると傷にさわるから。その、また来るよ」

 そう言って、ミリカさんは足早に立ち去った。
 眺めていたジェシカさんが、ニヤニヤ笑いながら言う。

「アリア、この女たらし」

「訳のわからないことを言ってないで、おしっこ行くのに手を貸してください」
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