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22,私のカブ畑が荒らされている……
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盗賊が出るらしい。
【覇王魔窟】58階で〈巨人鬼(トロール)〉と〈歪爺(オールドマン)〉にボコボコにされてから、3か月。
退院後のリハビリも順調で、最近はカブ畑の拡張に乗り出せるくらいに元気になった。
というのも、お隣が亡くなりその土地を、なんやかやで私がもらいうけることになったからだ。まぁ土地税が増えるけど、これでカブ畑を増やすことができる。
ジェシカさんは「ジャガイモとかも栽培したら?」と言っていたけど、カブ農家を舐めてもらっちゃ困るのです。
とにかく、新たなカブ畑を耕していたところ、近くで牧場を営んでいるダバクさんが、年老いた馬に乗ってやってきた。そして盗賊の件を忠告してくれたのだ。
「アリアちゃんも、気をつけたほうがいい。南のほうから流れてきた盗賊団のようで、とにかく血も涙もないそうだ」
「そうですか。まぁ血も涙もある盗賊のほうが珍しい気もしますけど。ありがとうございます、気をつけますね」
とはいえ、盗賊団なんか縁はないわけですよ。彼らが狙うのは、財をなした商人や下級貴族など、狙いやすくかつ儲けがありそうな家。
私の家は狙いやすいけど、金目のものといったら、このカブくらいなもの。だけどカブの有難味を、盗賊風情が理解できるとも思えないし。
風が強くなってきたか。
「ふむ、今夜は荒れそうですね。早めに布団に入って寝るとしましょうか」
その夜。
気持ちよく熟睡していたところ、玄関の扉をガンガン叩く音がした。来客者? こんな夜更けに? 緊急事態で助けが必要なのかもしれない。
パジャマのままベッドから飛び出して、玄関扉を開ける。
「どうしました、大丈夫ですか?」
表にいたのは、お世辞にも人相がいいとはいえない男が二人。別に緊急事態という様子でもない。酒瓶片手に、妙にテンションが高いので。
それから、私を眺めながら二人で話し出した。
「おい、若い女が一人で暮らしていると聞いてきたら、まだガキじゃねぇか」
「ガキという以前に、見ろよ、こいつの顔。半分側がなんかグロいことになってるぜ。こんなのじゃ、ヤッている最中に吐くじゃねぇか」
「ボビー、お前はまだまだだな。顔は枕で隠せば、俺はヤレるぜ」
「なるほど。枕で隠す手があったか。お前、頭いいなぁ」
「まぁな~」
うーむ。なんか失礼さんだなぁ。
「いらっしゃいませ──と言いたいところですが、こんなに遅くにお邪魔されても迷惑ですね。私、来るものは拒む性格なので、どうぞお帰りください」
玄関扉を閉めようとしたら、押し開けられた。
「ふざけてんじゃねぇぞ、クソ女!」
「てめぇはこれから、俺たちに弄ばれるんだよ分かったか!?」
勝手に上がりこんでくる。困るなぁ、こういう迷惑な人たちって。とにかく出ていってもらわないと。
「あの~、よく分からないんですが。とりあえずお金なら持っていっていいですから。暴力沙汰はごめんですよ。といっても、さほどの貯えもありませんけど」
「へぇ。こんなボロ屋にもカネはあんのか。おい、先に俺がこの女で楽しんでっから、お前は金目のものをいただいておけ」
「あいよ。だがカンベルたちも呼ぶか。あのバカ兄弟、畑で何していやがる?」
「知るかよ」
なぬ、畑? 畑って、私のカブ畑か。
「あ、てめぇ待ちやがれっ!」
と怒鳴る男たちの手をすり抜けて、私は表に出た。
するとさらに二人の男が、私のカブ畑にいた。
一人は、使いふるした剣で収穫間際のカブを掘り起こしては、奇声を上げながら笑っている。もう一人は、なんとカブ畑にむかって小便しながら、酒瓶をあおっていた。
私のカブ畑が荒らされている……私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私の私の私の私のカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブ…………
勝手に上がり込んでいた二人が追いついてきて、私の腕をつかむ。
「てめぇ、なに逃げようとしてやがんだ!?」
私は振り返って、男たちを見やった。
「あなたたちは、この近くの人ではありませんね。どこの誰ですか?」
「俺たちは、バルク盗賊団の一員だ。分かったか、女? お前は、もう助かりようがねぇってことがよ。俺たちにまわされたあとは、この家と仲良く焼き殺してやんよ」
私は震えていた。
男の一人が、相棒の肩を小突いてニヤニヤ笑う。
「おい、ボビー。可哀そうにこのアマ、ビビりすぎて体が震えてやがるぜ」
この震えは、私の抑えられぬ感情のせいだ。だけど、まさか、こんなに激しい感情を抱くことがあろうとは。これほどの、怒りを。
「私のカブ畑を荒らした者たちは、二度と陽の目を見ることはありません」
「あぁ、なに言ってやがる?」
《操縦》で呼んだ魔改造鍬〈スーパーコンボ〉が飛んできたので、私は柄を握った。
そして振るうと、片方の男の頭部が跡形もなく吹っ飛ぶ。
飛び散るは脳漿の欠片のみ。
片割れは、しばし呆然としていた。相棒の頭部が消えてなくなり、首なし死体がどさりと倒れる。それを見て、ようやく理解したらしく、
「ボ、ボ、ボビぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
〈スーパーコンボ〉を振るって、叫んでいる男の右ひざを潰す。当然、片足がなくなれば、どさりと転びます。
「お、お、おれの右足がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」
「そこで待っていてください」
私はカブ畑まで歩いていく。カンベル兄弟は、お仲間の状態にも気づかず、楽しそうに私のカブ畑を荒らしていた。
「あなたがた、どちらがお兄さんですか?」
私がそう呼びかけると、カンベル兄弟がきょとんとした顔で、こちらを見てくる。
「なんだ、てめぇ? 女を逃がすとか、ボビーたちは何していやがるんだ」
「しかし兄ちゃん、この女、顔の半分がグロいぜ」
「枕で隠せばヤれるんだろ」
え、デジャブ?
とにかく、今の会話でどっちがお兄さんか分かった。そこで弟のほうへと、てくてく歩いていき、
「あぁ、なんだ? 俺のをしゃぶりにきたのかよ?」
〈スーパーコンボ〉を振り下ろして、頭部と胴体をまとめて潰した。
「…………………………………な、な、な、なにしていやがんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! オレの弟になにしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫しながら、弟の肉片を搔き集めようとするお兄さん。
「私のカブ畑を荒らしたら、こうなると分かっていたでしょう。なぜそのことを、お兄さんは、ちゃんと弟さんに教えてあげなかったのですか? 兄の務めでしょう? 激流を泳ごうとしてはいけません、溺れるから。雷が起きているときに木の下に行ってはいけません、落雷の恐れがあるから。そして、私のカブ畑を荒らしてはいけません。ブチ殺されるから。なぜ教えてあげなかったのですか、お兄さん!!??」
お兄さん、鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、私を見る。
「てめぇぇぇ誰だぁぁぁぁぁ!?!?」
〈スーパーコンボ〉を振るって、その顔を消し飛ばした。首無し死体が転がる。あぁ、私のカブ畑に死体がふたつも。
「………………肥料に、なるかなぁ?」
先ほど右ひざだけ潰した人のもとに戻る。
「あなた、お名前は?」
「ロ、ロンだぁぁ。てめぇクソ女、こんなことしてタダで済むと思っていやがるのか!? 俺たちは、バルク盗賊団の一員なんだぞぉぉぉ!!!」
そのとき、あることを思い出した。
昔、近所の子供が、うちの鶏を盗んで殺したことがあった。そのときパパは、その子供ではなく、ご両親に文句をいいにいき、謝罪させた。子の罪は、親が謝罪することなのだ。
では、盗賊団の一員の罪は、誰が謝罪すること? 誰が、その罪を償うの? もちろん、盗賊団の親分さんに決まっている。
私は、倒れているロンさんのもとへ屈みこんで、
「バルク盗賊団さんの、アジトを教えてくださいね?」
「な、なにをすつもりだぁぁあ?」
「カブ畑を虐殺した罪、償ってもらうに決まっているでしょう????」
夜明け前に、私は出発した。
【覇王魔窟】58階で〈巨人鬼(トロール)〉と〈歪爺(オールドマン)〉にボコボコにされてから、3か月。
退院後のリハビリも順調で、最近はカブ畑の拡張に乗り出せるくらいに元気になった。
というのも、お隣が亡くなりその土地を、なんやかやで私がもらいうけることになったからだ。まぁ土地税が増えるけど、これでカブ畑を増やすことができる。
ジェシカさんは「ジャガイモとかも栽培したら?」と言っていたけど、カブ農家を舐めてもらっちゃ困るのです。
とにかく、新たなカブ畑を耕していたところ、近くで牧場を営んでいるダバクさんが、年老いた馬に乗ってやってきた。そして盗賊の件を忠告してくれたのだ。
「アリアちゃんも、気をつけたほうがいい。南のほうから流れてきた盗賊団のようで、とにかく血も涙もないそうだ」
「そうですか。まぁ血も涙もある盗賊のほうが珍しい気もしますけど。ありがとうございます、気をつけますね」
とはいえ、盗賊団なんか縁はないわけですよ。彼らが狙うのは、財をなした商人や下級貴族など、狙いやすくかつ儲けがありそうな家。
私の家は狙いやすいけど、金目のものといったら、このカブくらいなもの。だけどカブの有難味を、盗賊風情が理解できるとも思えないし。
風が強くなってきたか。
「ふむ、今夜は荒れそうですね。早めに布団に入って寝るとしましょうか」
その夜。
気持ちよく熟睡していたところ、玄関の扉をガンガン叩く音がした。来客者? こんな夜更けに? 緊急事態で助けが必要なのかもしれない。
パジャマのままベッドから飛び出して、玄関扉を開ける。
「どうしました、大丈夫ですか?」
表にいたのは、お世辞にも人相がいいとはいえない男が二人。別に緊急事態という様子でもない。酒瓶片手に、妙にテンションが高いので。
それから、私を眺めながら二人で話し出した。
「おい、若い女が一人で暮らしていると聞いてきたら、まだガキじゃねぇか」
「ガキという以前に、見ろよ、こいつの顔。半分側がなんかグロいことになってるぜ。こんなのじゃ、ヤッている最中に吐くじゃねぇか」
「ボビー、お前はまだまだだな。顔は枕で隠せば、俺はヤレるぜ」
「なるほど。枕で隠す手があったか。お前、頭いいなぁ」
「まぁな~」
うーむ。なんか失礼さんだなぁ。
「いらっしゃいませ──と言いたいところですが、こんなに遅くにお邪魔されても迷惑ですね。私、来るものは拒む性格なので、どうぞお帰りください」
玄関扉を閉めようとしたら、押し開けられた。
「ふざけてんじゃねぇぞ、クソ女!」
「てめぇはこれから、俺たちに弄ばれるんだよ分かったか!?」
勝手に上がりこんでくる。困るなぁ、こういう迷惑な人たちって。とにかく出ていってもらわないと。
「あの~、よく分からないんですが。とりあえずお金なら持っていっていいですから。暴力沙汰はごめんですよ。といっても、さほどの貯えもありませんけど」
「へぇ。こんなボロ屋にもカネはあんのか。おい、先に俺がこの女で楽しんでっから、お前は金目のものをいただいておけ」
「あいよ。だがカンベルたちも呼ぶか。あのバカ兄弟、畑で何していやがる?」
「知るかよ」
なぬ、畑? 畑って、私のカブ畑か。
「あ、てめぇ待ちやがれっ!」
と怒鳴る男たちの手をすり抜けて、私は表に出た。
するとさらに二人の男が、私のカブ畑にいた。
一人は、使いふるした剣で収穫間際のカブを掘り起こしては、奇声を上げながら笑っている。もう一人は、なんとカブ畑にむかって小便しながら、酒瓶をあおっていた。
私のカブ畑が荒らされている……私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私の私の私の私のカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブ…………
勝手に上がり込んでいた二人が追いついてきて、私の腕をつかむ。
「てめぇ、なに逃げようとしてやがんだ!?」
私は振り返って、男たちを見やった。
「あなたたちは、この近くの人ではありませんね。どこの誰ですか?」
「俺たちは、バルク盗賊団の一員だ。分かったか、女? お前は、もう助かりようがねぇってことがよ。俺たちにまわされたあとは、この家と仲良く焼き殺してやんよ」
私は震えていた。
男の一人が、相棒の肩を小突いてニヤニヤ笑う。
「おい、ボビー。可哀そうにこのアマ、ビビりすぎて体が震えてやがるぜ」
この震えは、私の抑えられぬ感情のせいだ。だけど、まさか、こんなに激しい感情を抱くことがあろうとは。これほどの、怒りを。
「私のカブ畑を荒らした者たちは、二度と陽の目を見ることはありません」
「あぁ、なに言ってやがる?」
《操縦》で呼んだ魔改造鍬〈スーパーコンボ〉が飛んできたので、私は柄を握った。
そして振るうと、片方の男の頭部が跡形もなく吹っ飛ぶ。
飛び散るは脳漿の欠片のみ。
片割れは、しばし呆然としていた。相棒の頭部が消えてなくなり、首なし死体がどさりと倒れる。それを見て、ようやく理解したらしく、
「ボ、ボ、ボビぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
〈スーパーコンボ〉を振るって、叫んでいる男の右ひざを潰す。当然、片足がなくなれば、どさりと転びます。
「お、お、おれの右足がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」
「そこで待っていてください」
私はカブ畑まで歩いていく。カンベル兄弟は、お仲間の状態にも気づかず、楽しそうに私のカブ畑を荒らしていた。
「あなたがた、どちらがお兄さんですか?」
私がそう呼びかけると、カンベル兄弟がきょとんとした顔で、こちらを見てくる。
「なんだ、てめぇ? 女を逃がすとか、ボビーたちは何していやがるんだ」
「しかし兄ちゃん、この女、顔の半分がグロいぜ」
「枕で隠せばヤれるんだろ」
え、デジャブ?
とにかく、今の会話でどっちがお兄さんか分かった。そこで弟のほうへと、てくてく歩いていき、
「あぁ、なんだ? 俺のをしゃぶりにきたのかよ?」
〈スーパーコンボ〉を振り下ろして、頭部と胴体をまとめて潰した。
「…………………………………な、な、な、なにしていやがんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! オレの弟になにしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫しながら、弟の肉片を搔き集めようとするお兄さん。
「私のカブ畑を荒らしたら、こうなると分かっていたでしょう。なぜそのことを、お兄さんは、ちゃんと弟さんに教えてあげなかったのですか? 兄の務めでしょう? 激流を泳ごうとしてはいけません、溺れるから。雷が起きているときに木の下に行ってはいけません、落雷の恐れがあるから。そして、私のカブ畑を荒らしてはいけません。ブチ殺されるから。なぜ教えてあげなかったのですか、お兄さん!!??」
お兄さん、鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、私を見る。
「てめぇぇぇ誰だぁぁぁぁぁ!?!?」
〈スーパーコンボ〉を振るって、その顔を消し飛ばした。首無し死体が転がる。あぁ、私のカブ畑に死体がふたつも。
「………………肥料に、なるかなぁ?」
先ほど右ひざだけ潰した人のもとに戻る。
「あなた、お名前は?」
「ロ、ロンだぁぁ。てめぇクソ女、こんなことしてタダで済むと思っていやがるのか!? 俺たちは、バルク盗賊団の一員なんだぞぉぉぉ!!!」
そのとき、あることを思い出した。
昔、近所の子供が、うちの鶏を盗んで殺したことがあった。そのときパパは、その子供ではなく、ご両親に文句をいいにいき、謝罪させた。子の罪は、親が謝罪することなのだ。
では、盗賊団の一員の罪は、誰が謝罪すること? 誰が、その罪を償うの? もちろん、盗賊団の親分さんに決まっている。
私は、倒れているロンさんのもとへ屈みこんで、
「バルク盗賊団さんの、アジトを教えてくださいね?」
「な、なにをすつもりだぁぁあ?」
「カブ畑を虐殺した罪、償ってもらうに決まっているでしょう????」
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