農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
22 / 119

22,私のカブ畑が荒らされている……

しおりを挟む
 盗賊が出るらしい。

【覇王魔窟】58階で〈巨人鬼(トロール)〉と〈歪爺(オールドマン)〉にボコボコにされてから、3か月。
 退院後のリハビリも順調で、最近はカブ畑の拡張に乗り出せるくらいに元気になった。

 というのも、お隣が亡くなりその土地を、なんやかやで私がもらいうけることになったからだ。まぁ土地税が増えるけど、これでカブ畑を増やすことができる。
 ジェシカさんは「ジャガイモとかも栽培したら?」と言っていたけど、カブ農家を舐めてもらっちゃ困るのです。

 とにかく、新たなカブ畑を耕していたところ、近くで牧場を営んでいるダバクさんが、年老いた馬に乗ってやってきた。そして盗賊の件を忠告してくれたのだ。

「アリアちゃんも、気をつけたほうがいい。南のほうから流れてきた盗賊団のようで、とにかく血も涙もないそうだ」

「そうですか。まぁ血も涙もある盗賊のほうが珍しい気もしますけど。ありがとうございます、気をつけますね」

 とはいえ、盗賊団なんか縁はないわけですよ。彼らが狙うのは、財をなした商人や下級貴族など、狙いやすくかつ儲けがありそうな家。
 私の家は狙いやすいけど、金目のものといったら、このカブくらいなもの。だけどカブの有難味を、盗賊風情が理解できるとも思えないし。
 
 風が強くなってきたか。

「ふむ、今夜は荒れそうですね。早めに布団に入って寝るとしましょうか」

 その夜。
 気持ちよく熟睡していたところ、玄関の扉をガンガン叩く音がした。来客者? こんな夜更けに? 緊急事態で助けが必要なのかもしれない。
 パジャマのままベッドから飛び出して、玄関扉を開ける。

「どうしました、大丈夫ですか?」

 表にいたのは、お世辞にも人相がいいとはいえない男が二人。別に緊急事態という様子でもない。酒瓶片手に、妙にテンションが高いので。
 それから、私を眺めながら二人で話し出した。

「おい、若い女が一人で暮らしていると聞いてきたら、まだガキじゃねぇか」
「ガキという以前に、見ろよ、こいつの顔。半分側がなんかグロいことになってるぜ。こんなのじゃ、ヤッている最中に吐くじゃねぇか」
「ボビー、お前はまだまだだな。顔は枕で隠せば、俺はヤレるぜ」
「なるほど。枕で隠す手があったか。お前、頭いいなぁ」
「まぁな~」

 うーむ。なんか失礼さんだなぁ。

「いらっしゃいませ──と言いたいところですが、こんなに遅くにお邪魔されても迷惑ですね。私、来るものは拒む性格なので、どうぞお帰りください」

 玄関扉を閉めようとしたら、押し開けられた。

「ふざけてんじゃねぇぞ、クソ女!」
「てめぇはこれから、俺たちに弄ばれるんだよ分かったか!?」

 勝手に上がりこんでくる。困るなぁ、こういう迷惑な人たちって。とにかく出ていってもらわないと。

「あの~、よく分からないんですが。とりあえずお金なら持っていっていいですから。暴力沙汰はごめんですよ。といっても、さほどの貯えもありませんけど」

「へぇ。こんなボロ屋にもカネはあんのか。おい、先に俺がこの女で楽しんでっから、お前は金目のものをいただいておけ」
「あいよ。だがカンベルたちも呼ぶか。あのバカ兄弟、畑で何していやがる?」
「知るかよ」

 なぬ、畑? 畑って、私のカブ畑か。

「あ、てめぇ待ちやがれっ!」

 と怒鳴る男たちの手をすり抜けて、私は表に出た。
 するとさらに二人の男が、私のカブ畑にいた。
 一人は、使いふるした剣で収穫間際のカブを掘り起こしては、奇声を上げながら笑っている。もう一人は、なんとカブ畑にむかって小便しながら、酒瓶をあおっていた。

 私のカブ畑が荒らされている……私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私のカブ畑が荒らされている私の私の私の私のカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブカブ…………

 勝手に上がり込んでいた二人が追いついてきて、私の腕をつかむ。

「てめぇ、なに逃げようとしてやがんだ!?」

 私は振り返って、男たちを見やった。

「あなたたちは、この近くの人ではありませんね。どこの誰ですか?」

「俺たちは、バルク盗賊団の一員だ。分かったか、女? お前は、もう助かりようがねぇってことがよ。俺たちにまわされたあとは、この家と仲良く焼き殺してやんよ」

 私は震えていた。

 男の一人が、相棒の肩を小突いてニヤニヤ笑う。

「おい、ボビー。可哀そうにこのアマ、ビビりすぎて体が震えてやがるぜ」

 この震えは、私の抑えられぬ感情のせいだ。だけど、まさか、こんなに激しい感情を抱くことがあろうとは。これほどの、怒りを。

「私のカブ畑を荒らした者たちは、二度と陽の目を見ることはありません」

「あぁ、なに言ってやがる?」

《操縦》で呼んだ魔改造くわ〈スーパーコンボ〉が飛んできたので、私は柄を握った。
 そして振るうと、片方の男の頭部が跡形もなく吹っ飛ぶ。
 飛び散るは脳漿の欠片のみ。
 片割れは、しばし呆然としていた。相棒の頭部が消えてなくなり、首なし死体がどさりと倒れる。それを見て、ようやく理解したらしく、

「ボ、ボ、ボビぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

〈スーパーコンボ〉を振るって、叫んでいる男の右ひざを潰す。当然、片足がなくなれば、どさりと転びます。

「お、お、おれの右足がぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」

「そこで待っていてください」

 私はカブ畑まで歩いていく。カンベル兄弟は、お仲間の状態にも気づかず、楽しそうに私のカブ畑を荒らしていた。

「あなたがた、どちらがお兄さんですか?」

 私がそう呼びかけると、カンベル兄弟がきょとんとした顔で、こちらを見てくる。

「なんだ、てめぇ? 女を逃がすとか、ボビーたちは何していやがるんだ」
「しかし兄ちゃん、この女、顔の半分がグロいぜ」
「枕で隠せばヤれるんだろ」

 え、デジャブ?
 とにかく、今の会話でどっちがお兄さんか分かった。そこで弟のほうへと、てくてく歩いていき、

「あぁ、なんだ? 俺のをしゃぶりにきたのかよ?」

〈スーパーコンボ〉を振り下ろして、頭部と胴体をまとめて潰した。

「…………………………………な、な、な、なにしていやがんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! オレの弟になにしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 絶叫しながら、弟の肉片を搔き集めようとするお兄さん。

「私のカブ畑を荒らしたら、こうなると分かっていたでしょう。なぜそのことを、お兄さんは、ちゃんと弟さんに教えてあげなかったのですか? 兄の務めでしょう? 激流を泳ごうとしてはいけません、溺れるから。雷が起きているときに木の下に行ってはいけません、落雷の恐れがあるから。そして、なぜ教えてあげなかったのですか、お兄さん!!??」

 お兄さん、鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、私を見る。

「てめぇぇぇ誰だぁぁぁぁぁ!?!?」

〈スーパーコンボ〉を振るって、その顔を消し飛ばした。首無し死体が転がる。あぁ、私のカブ畑に死体がふたつも。

「………………肥料に、なるかなぁ?」

 先ほど右ひざだけ潰した人のもとに戻る。

「あなた、お名前は?」

「ロ、ロンだぁぁ。てめぇクソ女、こんなことしてタダで済むと思っていやがるのか!? 俺たちは、バルク盗賊団の一員なんだぞぉぉぉ!!!」

 そのとき、あることを思い出した。

 昔、近所の子供が、うちの鶏を盗んで殺したことがあった。そのときパパは、その子供ではなく、ご両親に文句をいいにいき、謝罪させた。子の罪は、親が謝罪することなのだ。
 では、盗賊団の一員の罪は、誰が謝罪すること? 誰が、その罪を償うの? もちろん、盗賊団の親分さんに決まっている。

 私は、倒れているロンさんのもとへ屈みこんで、

「バルク盗賊団さんの、アジトを教えてくださいね?」

「な、なにをすつもりだぁぁあ?」

、償ってもらうに決まっているでしょう????」

 夜明け前に、私は出発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...