農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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34,ドラゴン殺しの猛毒。

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『栽培』領域より《耕作:見習い人》を発動。

 発動条件は、バトル中。すでに〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉から攻撃を受けた身としては、立派なバトル中。

 ところでその〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉は、いまは中核都市ボーンの別区画へと飛んでいった。先ほどのレーザー光線で焼け野原状態にしたのは、都市の数ブロック。とにかく中核都市だけあって広いことです。
 だから今のうちに、耕作するのだい。

 まずは魔改造くわ〈スーパーコンボ〉で、地面に耕地を作る。どうやら〈スーパーコンボ〉で大地を抉ることで、その場に耕地を作ることができるようだ。なんか凄く便利だなぁ。
 ここで『スキルの種』を植えるのだけど、肝心の『スキルの種』は一体どこにあるのだろう。

 ふと見ると、腰の高さに光る種が一個だけ浮いていた。
 なるほど。これが『スキルの種』か。一個で充分ということだね。なんか勢いで、たっぷりの耕地を作っちゃったけども。
『スキルの種』を手に取り、丁寧に耕地に植える。

 ふむ。それで? すぐに発芽するものだと思ったけど、何も起こらない。まさか何日も待たなきゃいけない、なんてことはないと思うけれども。

 ミリカさんが、なんだかとても言いづらそうに言ってきた。

「アリアさん。現実逃避したい気持ちはわかるが、今はどう〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉と戦えばいいのか、検討するべきでは?」

「ですから、いまそれをしているところなんですよ。というより、ちょっと静かにしてください。いやまって。そうじゃない。歌ですっっ!」

「え?」

「歌ってくださいミリカさん。発芽を促すために、歌うのです」

「………………え?」

「ミリカさん、お願いしますっっっ!!」

「……………………………え?」

 ベロニカさんが、ミリカさんの肩をぽんと叩く。

「アリアちゃんの期待に応えるときじゃないの、ミリカ?」

「………い、いいでしょう。それがアリアさんの助けになるというのなら、わたしは歌いましょう!!」

 心意気で熱唱してくれるミリカさん。なんか思ったより音痴だったが、スキルの種の発芽に成功。そして、勢いよく本葉が成長してきた。
 ふむ。てっきりカブかと思ったけど、これは、これは──

 引っこ抜く。

 毒々しい色をしたニンジンですっっっっ!

 視界に、このニンジンの説明が表示される。
〈龍殺しの人参(にんじん)〉。
 効果は、『食することで、〈龍殺しの毒〉スキルを得ることができる。これはドラゴンを殺す猛毒の息吹を吐き出すスキル。ただし、〈龍殺しの人参〉を食した者の身体にも毒は蝕む。解毒するためには、真水を飲むこと』

 なるほど。これこそが、そのバトルに特化したスキルの発現。ドラゴンを殺すことだけに特化したスキル〈龍殺しの毒〉。ドラゴンだけを毒殺できる毒息吹の攻撃が可能と。
 ただし、このスキルを得るためには、私自身も毒に蝕まれねばならない。一度解毒してしまったら、二度と〈龍殺しの毒〉は復活しないだろう。

 つまり、タイミングが大事。
〈龍殺しの人参(にんじん)〉を食す→〈龍殺しの毒〉スキルを会得→〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を討伐→真水で私は解毒。これが最高のシナリオ。
 最悪のシナリオだと、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉は討てずに、私だけ毒で死ぬ。うーん。まずやるべきことは。

「真水です。誰か、真水を持ってきていますか?」

 ミリカさんは水筒を出して、申し訳なさそうに。

「すまないアリアさん。紅茶だ」

 ベロニカさんも水筒を出して、なぜか頬を赤らめて。

「ごめんねぇ、アリア。私の水は、媚薬入り」

「なんで、水がないんでしょう。というか、ベロニカさんに至って、どーーいうこと!?ですよ。分かりました。まずは井戸を探しましょう」

 井戸はすぐに見つかった。ところが先に井戸を覗き込んだミリカさんが、首を横に振る。

「この水は使えそうにない」

 私も覗き込んでみて納得した。
 井戸の中には、複数のゾンビが入れられていたのだ。市民がここに投げ込んだのだろうか? しかし井戸水を汚染するようなことをするとも思えないが。
 まてよ。複数のゾンビは、井戸水に溺れながら無心に人肉を食べている(器用だな)。そっか。追いかけられていた人が逃走中に井戸に落ちちゃって、追いかけていたゾンビたちも、飛び込んでいったのか。いや、そんな謎を解いている場合じゃない。

「うーん。まさか、真水を探し出すのが、こんな大変なことなんて」

「いったん都市の外に出て、水をもらってこようか?」

 と、ミリカさんが提案。案外、そのほうが時間短縮かも。
 ところが、ふいに突風が吹いて、私たちは転んだ。しかしこの突風、自然現象ではないぞ。

 見上げると、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉が巨大な両翼をバサバサやりながら、空中停止している。そして、どうも〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉から、熱い視線を感じるのだけど。
 これは気のせいではないのかも? 
 考えてみると、少年くんによって召喚された〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉が、はじめて見た人間は、この私。
 あのときは、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉は空を飛んでいくことを選んだけど。今回、『ここで会ったが百年目』の心理が働いていたとしても、おかしな話ではない?

「ミリカさん、ベロニカさん。真水です。どうか真水を探してきてください。私が、死ぬ前に」

「アリアさんは、どうするのだ?」

「私は──」

 私は〈龍殺しの人参〉をパクパクと食べて、完食。

「ドラゴンさんを殺しますよっっ!」
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