農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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33,想定外。

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 私は、二個分隊の片方に入れてもらった。

 このさい、もう一つの分隊に組み込まれていたベロニカさんが、こっちの分隊に移りたいと言い出し、もめた。
 とくに、すでにこっちの分隊の一員だったミリカさんと、大いに揉めた。
 結局、二個分隊の指揮官であるゼモルさん(先ほどの大男さん)が、分隊を再構成して一件落着。私はベロニカさんとミリカさんと同じ分隊となり、わざわざ言うまでもないが、この二人は喧嘩する。いや喧嘩するほど仲がいいのかも──というのは、淡い希望でしょう。

「計画はあるんですよね? まさか無計画に、『とりあえず突撃だい』精神で来たわけではないですよね?」

「あるらしいよぉ」

 と、適当な返事のベロニカさん。そういえば、この人がいた冒険者パーティ、少年くんこと〈悪鬼羅刹(ザ・ボーイ)〉に全滅させられていたっけ。

「災いを呼ぶ女ですねっっ!」

「いやぁん、アリアちゃん。言葉の暴力、ゾクゾクしちゃうっ!」

 ミリカさんが、あからさまに殺意の舌打ち。それから私に説明した。

「5日前、アバル荒原で王国騎士団と〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉の激しい戦闘があったんだ。そのとき、騎士団は壊滅的なダメージを受けてしまった。だがそのさい、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉の腹部にも、致命的な負傷を与えたそうなのだ。
 現在、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉が狼藉を働かず、大人しく眠っているのは、その傷を癒しているからと推測される。つまり、その腹部の傷こそが、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を討つための鍵」

 私は、市庁舎をベッドにして爆睡している〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を見やった。とぐろを巻くようにして眠っており、肝心の腹部の傷とやらは隠れている。

「このままでは狙えませんね?」

「そうだ、アリアさん。われわれの使命は、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を飛び立たせること。すなわち、傷のある腹部をあらわにさせること。そうしたら、ゼモルさんがトドメをさしてくれる」

「ゼモルさんが?」

「ゼモルさんの保有する攻撃スキル《八滅打》。なんでも城砦さえも粉微塵にする威力だという。この攻撃スキルを、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉の傷口に叩き込めれば──」

「〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を倒せるわけですね」

 いずれにせよ、私以外の誰かが〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を討伐してくれるに越したことはない。私は魔物と戦うのはワクワクするけれども、その背景に余計な重荷はいらないのだ。たとえば、ここで〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を討たねば、さらなる犠牲が出てしまう的な。

 かくして、私たちは進み。
 ついに〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉のもとへ。〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉のいびきで空気が振動している。

 ゼモルさんから一斉攻撃の指示が出る。
 一方、ゼモルさん自身はまだ動かず、その右拳が赤く輝き出す。あれが攻撃スキル《八滅打》か。破壊力をチャージした拳を叩き込むわけだね。

 とにかく、二個分隊の皆で〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉へと総攻撃。
 これは〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を怒らせ、飛び立たせることが狙い。市庁舎の高みにいる〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉へ、地上から攻撃するので、遠距離系の攻撃のみが効果をなす。私も《波動砲Lv.2》で参戦した。

 ついに〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉が腹立たしそうに鳴きながら、飛び立つ。
 同時に、ゼモルさんも飛ぶ。仲間の一人が、突風系スキルを発動することで。その即席の竜巻が、ゼモルさんを空中の〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉へと飛び立たせるのだ。

 一方、飛び立った〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉だが。
 あらわになる腹部の傷口──には、数多の〈蚤量魔(フリーデッド)〉が犇めいていた。それこそ何千という数だ。

 ミリカさん、右眼の眼帯をさすりながら、顔色が悪い。右眼球が蟲化したことを思い出しているのだろう。

 ベロニカさんは、こんなときも呑気だ。

「あらあら、傷口を蝕んでいるのかしらねぇ?」

「違います。あれは──守っているんですよ!」

〈蚤量魔(フリーデッド)〉としても、宿主である〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉が倒されるのは、困る。我が家がなくなるわけだし。
 そして動物的(ではなく魔物的)本能のもと、あの傷口こそが、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉のウィークポイントと理解している。

 この作戦は、失敗する。
 しかしもう止められない。私はベロニカさんを抱き上げ、ミリカさんに言う。

「退避しますよっっっっ!!」

 走りながらも見上げれば、ゼモルさんの《八滅打》の拳が、〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉の傷口へと叩き込まれる。
 だが実際は、傷口で犇めいていた数多の〈蚤量魔(フリーデッド)〉を吹き飛ばすだけで、終わってしまう。
 数多の〈蚤量魔(フリーデッド)〉たちが鎧の役目をなすことで、傷口自体までは、攻撃が通らなかったのだ。

 そして〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉は空を駆け、大技を放ったあとで無防備なゼモルさんを喰らう。
 巨大な牙で、ゼモルさんの身体を引きちぎる。
 同時に、地上に向かって、破壊のレーザー光線を放った。分隊の人たちは消滅、市庁舎を含めて複数の建物も、跡形もなく焼き飛んでいく。

 私たちは近くの民家に飛び込み、地下室へと転がり落ちた。扉を閉めた上、《強靭盾》と《守りの盾》を同時発動で、自分と二人をガード。

 ベロニカさんが後ろから抱きついてきた。

「アリアちゃんと死ねるのねぇっ!」

「まだ死にませんよっっ!!」

 そう死ななかった。しばらくして地上に出てみれば、建物も人も跡形もなくなり、荒れ地だけが残っている。
 私は〈スーパーコンボ〉片手に、その荒れ地を行く。

 ミリカさんが声をかけてきた。

「アリアさん、どうするつもりだ? わたしたちは、どうすれば?」

「こうなったら、私たちだけで〈橙鎧龍(オレンジドラゴン)〉を倒すしかないでしょう。そのためにいまやるべきことは──栽培です」

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