農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

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55,聖ルーン騎士団さん。

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超絶なる大爆発によって、私は吹き飛ばされた。

 祠から外へ飛ばされ、衝撃波にのって宙を舞っていく。その間にも、大爆発の破壊エネルギーはエルフの里の建物すべてを、粉みじんに吹っ飛ばしていった。
 言ってみたらこれは──証拠隠滅。
 エルフの里(だった場所)から3キロは離れたところまで飛ばされていき、やっと落ちる。ただまだ勢いは殺されず、地面を抉るようにして転がって、転がっていく。

「痛っ! うげっ! あぐっ! 痛いっ!」

 私は厳密にはもうとっくに死んでいる、それなのに痛覚はあるのだよ。そりゃぁ痛覚が切れていたら、とっくに『私もう人間じゃなかった』と気づいてしまっていたわけだけど。
 大樹にぶつかり、とまった(その犠牲として、大樹のほうはへし折れてしまった)。

 なんとか立ちあがる。とりあえず五体満足ではある。とっさに《鎧装甲》を発動したのが良かった。《鎧装甲》がなく、生身の(防御Lv.6)だけだったら、いまごろ死んでいたかも。
 いや、もう死んでいるから、正しくは機能停止か。うー、新しい定義に馴染めぬ。

 しかし、なんだかなぁ。
 ずっと人間だとばかり思っていたら、変異体とかなんとかの魔物化状態だったなんて。しかも私の大事な魔改造くわ〈スーパーコンボ〉は破壊されてしまったし。
 一応、残骸は道具袋に入れてきたけど。以前ベロニカさんが話していた《再生》パネルも解放していなかったので、復活することもない。
 あぁ、私の〈スーパーコンボ〉が。

 ……だけど、変だ。私自身にはスキルツリー覚醒の素質はなく、〈スーパーコンボ〉のスキルツリーが私の力となっていた。だから、いまさっき私の命を救った防御スキル《鎧装甲》も、〈スーパーコンボ〉のスキルのはず。
 だけどその〈スーパーコンボ〉は『ご臨終です』なのに、なぜ発動できたのか。
 それともまだ、〈スーパーコンボ〉は生きている? 試しに脳内で〈スーパーコンボ〉のスキルツリーに接続してみると、鮮明に表示された。
 だけど、やはり〈スーパーコンボ〉本体は破壊されているのだが。

 道具袋から残骸を取り出す。うーむ。きらきら輝いて復活! みたいな兆候はない。
 スキルツリーは生きているが、〈スーパーコンボ〉本体は死んでいる。試しに打撃スキル《破嵐打》を使ってみたが、反応はない。
《鎧装甲》は〈スーパーコンボ〉から私の身体へ付与されるスキルだが、《破嵐打》は〈スーパーコンボ〉によって発動するスキル。その違いか。

 とにかく、帰ろう。
 自宅に戻り、ベッドに直行。いろいろと疲れたようで、爆睡。

 夜中、寝返りをうったらベッドから落ちた。目が醒める。
 うん? 誰か、外にいるようだ。起き上がって、反射的に〈スーパーコンボ〉を手に取ろうとして、壊されちゃったのを思い出した。これは子供のころ、愛犬が亡くなったときに似ている。しばらくは朝目覚めるたび、朝の日課だった『愛犬なでなで』をしようと思って、そのたびにもう天国なんだよと思い出すのだった。
 とにかく、誰か外にいるようなので、玄関ドアを開ける。

「はい、どなた?」

 玄関の外には、全身を白い鎧で身にまとった、白騎士さんがいた。

「くらえ、《聖なる槍打ジャスティスランス》!!」

 光り輝く槍の一撃。もろに腹部に受けて、私は後ろに吹っ飛ばされた。壁を突き破って、そこから家の外に転がり出る。

「わぁっ、驚いた!」

(防御Lv.6)が機能していなかったら、いまごろ腹部を貫かれて死んでいたよ。あぁ、死ぬんじゃなくて、機能停止か。
 後ろに気配がしたので振り返ると、別の白騎士さん(こちらの武器装備は片手剣)が立っていた。

「ほう。ウースの槍スキルの一撃を受けても、ビクともしないか。やはり通報は本当のようだな。貴様は、【覇王魔窟】の外に逃げ出した魔物だ。その耐久力と、このオーブの反応が動かぬ証拠!」

 そうやって突き出してきたオーブとやらが、暗く光っている。うーむ。あの暗い光が『魔物がいる』という知らせかな? 
 それって私に反応しているのか、それとも私の体内の〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんか。〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんはといえば、いまも平常運転で爆睡中。聞こえてくる寝息が羨ましい。

「あの~、いま夜中ですし、明日にしませんか? 私も眠いんですが」

「問答無用! くらえ、わが強化武器〈滅する魔〉の一撃を! 《聖なる斬撃ジャスティスブレイド》!!」

 謎の『聖なる』縛りの人たちだなぁ。
 とりあえず《聖なる斬撃ジャスティスブレイド》を、(防御Lv.6)の右腕でガード。別に全身のどこでも(防御Lv.6)なのだけど、どうせなら腕とかで庇うよね。

 白騎士さんは、《聖なる斬撃ジャスティスブレイド》をガードされたことで、激昂。

「なんという小癪な魔物だ! だが必ずや討ち果たしてくれるぞ! 我ら、聖ルーン騎士団が!」

「仕事熱心なのは結構ですけども。私は、逃げますよー」

 夜中に突撃してきた変態な騎士団さんの相手なんかしていられないよね。
 というわけで、ここは走る。〈スーパーコンボ〉の飛行に最近馴れすぎたせいか、走るという行為が新鮮だ。

 街道に出たところで、追いつかれた。向こうは馬に乗っているのだからズルい。ちなみに馬さんたちも、白い鎧を纏っていた。徹底してるなぁ。
 さて。ここに来ている聖ルーン騎士団の人たちは、4人いた。全員が、強化武器持ちのようだ。で、取り囲まれる。

「うーん。私、厄年ですかねぇ?」

「覚悟しろ! 魔物め!」

 そのとき、新たな人物が飛び込んできた。その人物は刀を一閃、「くらえ、《臥斬り》!!」。刀スキルで、白騎士さんの一人を馬上から吹っ飛ばした。
 そして、私の隣に着地。ロクウさんです。

「先生! 助太刀いたします!」

「あ、ロクウさん。おはようです。まだ深夜4時ですけどね」
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